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3日間続いた記念祭は、今日をもって無事終わりを迎えた。
初日は主に西側を含む外国との交流。
その一環で外国人の処刑があるのは、俺の価値観ではちょっと理解できなかったが、概ね盛況だった。
2日目は本祭。
この国の国宝である神剣が披露されたそうだ。
ガチャ産の剣で、雷を落とすらしい。
雲一つない真昼間にドカドカ鳴って何事かと思ったが、それの効果なんだろう。
3日目は国内の叙勲や陞爵が行われた。
まぁ、特筆すべきことは無い。
で、俺は2日目以降屋敷に引きこもっていた。
まぁね、子供の身だとやれることは少ないし、誰かを一々付き従わせるのも悪いし、どうにも人だかりは疲れる。
もっとも屋敷には来客が多かったこともあり、掃除やら皿洗いやら手伝っていた。
やってることは去年までと変わらなかったが、環境は大違いだ。
1年足らずでよくぞここまでと思う。
でもまだだ。
まだ俺は上をめざす。
「まだかしら?」
心の中での決意表明の最中にセリアーナの声が背後から割り込んできた。
「むぅ…」
記念祭は終えたが王都圏にはまだまだ国内、国外問わず貴族が滞在している。
その相手をする必要もあり明日以降も中々忙しいようで、やれる時間のあるうちにさっさと済ませておこうという事で、ガチャに挑む事にした。
セリアーナはまだ貯めるようで俺の1回分だけだが、こちとら誘拐された身だ。
今回のガチャは気合が違うぜ!
「どうせ変わらないのだからさっさとやってしまいなさい」
…水差すね。
まぁいいや。
「ほっ!」
気合を込め、聖像に聖貨を捧げる。
「ふんっ!」
今回はドラムロールの音が鳴った瞬間に即ストップだ。
さぁ、何が来るか!
淡く光るピンポン玉位の白い球体が浮いている。
アイテムだ!
そして浮かんだ言葉は【妖精の瞳】
…瞳…球体…眼球⁉
「ぬあっ⁉」
色々連想して思わずのけぞってしまった。
受け止めるべきだったろうが、それは落下しコロコロとセリアーナの寝室の前まで転がって行った。
絨毯が敷いてあるとはいえ、壊れていないよな?
「恩恵品よね?何だったの?」
「…【妖精の瞳】」
「………っ⁉」
セリアーナとエレナ。
2人とも同じ連想をしたのか似た反応の仕方だ。
転がって行ったそれを見つつも近づこうとしない。
いや…一度連想しちゃうとね?
「…ほら」
見かねたのかアレクが拾い、こちらに持って来た。
「目玉じゃねぇよ」
そう言い、放り投げてくる。
それを受け取り観察する。
大きさはピンポン玉で、色は白だが少し光沢がある。
真珠に近いだろうか?
耳元で振ってみるが音はしない。
「何かわかった?」
「わかんない」
「そう。とりあえず開放するわ。寄こしなさい」
「ほい」
セリアーナは受け取るなり、開放する。
手慣れたものだ。
「…あら?」
握った手から光が消え、開放されたアイテムが見えた。
「…?」
1センチ程の長さの筒状の物だが、指輪にしては細すぎる。
金地に唐草模様の洒落たデザインだ。
「イヤーカフね。来なさい」
イヤーって事は耳に付けるのかな?
イヤリングみたいな物か。
近づき左耳を見せると、なんかパチンときた。
「いいわよ」
多分耳に付けたんだろうけど…どうなんだ?
「なんか変わった?」
「何も変わらないわね」
耳は見えないからな…。
自分じゃわからん。
「むむむむ…!」
瞳って付いているし、何か見るんだろう。
見る能力だし、アカメの目もオンにし目に気合を込める。
「むっ⁉」
何故か耳でも目でも無く、額がほのかに熱い。
「ひっ…」
セリアーナの珍しい声がしたので彼女の方を見ると、口元を押さえ目を見開いていた。
彼女のすぐ後ろに控えていたエレナも似たような表情をしている。
2人の視線の行方を追うと、行先は俺の頭上。
見るの怖くなるじゃないか…。
「ひぇっ⁉」
意を決し頭上を見ると、血走った眼玉が俺を睨み下ろしていた。
なんじゃこりゃ?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚