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「い…痛いわ…」
そうでしょう、そうでしょう。
「お…お腹じゃないわ…頭よ…」
うんうん。
「お嬢様…二日酔いを治すには肝臓です…」
「そうなの…不思議ね…」
息も絶え絶えにぼそぼそ呟くセリアーナとエレナ。
2人仲良くベッドにダウンしている。
この国では、お酒は二十歳から!とかは無く各々の裁量に任されている。
2人は食事の時に一杯二杯飲むことはあっても、二日酔いになるほど飲むことは無い。
何があったのか少し気になるが、まずは復活してもらわねば。
「どう?少しは効いてるかな?」
ベッドに2人を寝かせ、間に座って【祈り】を発動しつつ【ミラの祝福】の祝福を腹部に当てている。
回復力の底上げだし、【祈り】は効果があるはずだ。
ただ、【ミラの祝福】はわからん。
何となく効きそうな気はするから使っているが…まぁ、悪いようにはならんだろう。
「ええ…、吐き気は収まってきた気がするわ…」
先程までの半死人のようだったが、少しはましな声になっている。
「そりゃ結構。なら続けるよ」
◇
「お前は昨日楽しめたのかしら?」
どっちが効いたのかはわからないが、1時間施療を行ったところ無事復活した二人。
固形物は無理でもスープ程度は胃に入れられるようになり、軽く食事を済ませ、今はお茶を飲んでいる。
「うん。結構面白かったね。あぁ、これお土産」
ベッド脇のボードに置いていた彫刻を渡す。
「あら、ありがとう。竜と狼かしら?」
セリアーナが竜の方を取りながら礼を言う。
「この香りはエスタ製ですね。こういった物も作っていたのは知りませんでした」
エスタ製てなんぞ?
「その顔は知らなかったみたいね…。高級家具に使われる木材よ。実家の私の部屋の家具がそれだわ」
そう言いながら鼻先に付きつけてきた。
微かにミントの様なスッとする香りがする。
わざわざ嗅いだりしなかったから気づかなかったが、香木みたいなものなんだろうか?
「防虫効果もあるそうよ。きっと家具を作った端材を使ったのね。悪くないわ」
褒めてあげる、と偉そうに言われた。
うん。
まぁ、思ってたのとは違うけど、気に入って貰えたならそれでいいか。
それよりも、だ。
「オレの事はいいとして、昨日何かあったの?あそこまで酔うとか初めてだよね?」
「エリーシャ様の婚約相手の事は覚えているかしら?」
「エドガーさんだっけ?」
南の方の水軍の強い侯爵家だったかな?
「そう。そのエドガー様との間に割って入ろうとしていた女がいるのだけれど…フフフ」
悪い顔しながらの思い出し笑い。
悪役っぽいな…。
「彼女の支援者が今回処刑された者の中に2人いたの。随分居丈高な振る舞いをすると聞いていたけれど…ウフフ」
縮こまっていたんだね?
何となくその光景が想像できるよ。
それにしても…。
エレナの方を見ると彼女もニコニコと嬉しそうだ。
平民はそれほどでも無いけれど、この国の貴族って大抵西側の事を嫌っているよな…。
「帝国や後押ししていた他の支援者達も刺激をしたくなかったのでしょうね。前夜祭でも皆静かなものだったわ」
「…処刑で【緋蜂の針】使ったそうだけど、何ともなかった?」
「ええ。有罪が確定している者ばかりだったから、ただ踏むだけでよかったわ。それにしても、どういった仕組みなのかしらね?」
「…本当だよね」
なるほど…、処刑と泥酔していたことは関係ないのか。
この感じからすると、嬉々として踏んだんだな。
「まあ、そんな事はどうでもいいの。早めに退出してエリーシャ様のお部屋でお茶を頂いたのよ。リーゼルやエドガー様も来られて、楽しかったわ。ねぇ?エレナ」
「はい。普段聞けない他大陸の事も聞けた上に珍しいお酒も頂けましたし」
2人でコロコロ笑っている。
そっかぁ…酒盛りしてたんだね…。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚