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「アレク、あっち」
適当に屋台で食べ物をつまんでいたのだが、どれも味が濃く、酒と合わせると丁度いい様なものが多かった。
最初はアレクも我慢していたが、悪いし飲んでもらっている。
ワインに何かの果汁を絞ったものだが、美味しいんだろうか?
「向こうか?」
肩の上から俺が指したのは、商業地区の中ほどにある広場の端。
その一角は露店が連なっている。
雑多な雰囲気でフリーマーケットといった風情だ。
「お小遣い貰ったしね。ちょっと使いたい」
祭用に使ってこいと金貨1枚をお小遣いとして貰った。
食べ物はそんなに入らないし、酒は飲めない。
ギャンブルはあるかもしれないが流石に参加できないだろう。
そこで何かセリアーナとエレナに土産でも買おうかと思ったのだが…。
何が良いのかわからない。
一応装飾品等を覗いてみたのだが、彼女達が普段身につけている物の方がずっと質がいい。
それならいっそネタになる様な物にしようと考えた。
ここならいいのが見つかるかもしれない。
◇
「アレク。…オレってどんな風に見られてると思う?」
フリマエリアと勝手に名付けたけれど、そこに来て色々覗いていたのだが、少し気になる事が有る。
「あ?ああ…どこか他所の国の商会か何かの我儘令嬢って所だな」
「なるほど…」
なんか顔をそらされるとは思ったんだよな。
面倒な客と思われていたのか。
「メサリアはそれほどでも無いが、他所の国なんかだと平民の金持ちなんかでも揉めると面倒になる場合があるんだ。普段から店をやっているんならそこまで気負いはしないんだろうが、ここらで物を売っている連中は素人だろうからな。外国の人間とはあまり関わりたくないんだろうよ」
ふむ。
まぁ気持ちはわからんでもない。
「ん~…ん?あそこ。あそこ行って」
歓迎されていないみたいだし雰囲気悪くするのも申し訳ないし、退散しようかと考えていたが、絵に彫刻等が並べられている店が目に留まった。
店主らしき男がいるが、商品の整理をしていて背を向けている。
「こんにちはー」
「はい、いらっしゃ……いらっしゃいませ」
うーむ…。
「な…何かお探しでしょうか?」
「俺もこいつもこの国の者だ、そんなに構えなくていいぞ?」
見かねたのかアレクが口を開く。
ナイスだ。
その甲斐あってか、少し店主の表情が和らいだ。
「この絵ってミラですか?」
チャンスと気になった絵について質問する。
裸の女性が赤いドレスを体に当てて、装飾品や美術品に囲まれて小躍りしている絵だ。
凄くミーハーっぽい。
「ああ、そうですよ」
「買います」
「え?えーと…これは大銀貨5枚で出しているんだけど…」
「買います。あ、そうだ…」
他に並んでいる物を見る。
絵やちょっとした装飾品が多いが、木彫りの彫刻もある。
「コレとコレも下さい」
金貨を渡すついでに俺が指したのは、上手くも下手でも無いオオカミと竜の彫刻だ。
10センチ位の大きさで1個銀貨5枚。
安くはないがこれなら邪魔にもならないだろう。
「気に入ったのか?」
「いや、土産にする。アレクもいる?」
「あ~…俺はいらねぇな…」
残念。
「あの、包んだけれど持って帰りますか?何でしたら後で届けますけど…」
多少は距離が縮まったかと思ったけれど、また遠のいたね。
「このまま持って帰るから大丈夫です」
「持つのは俺だけどな」
そう言いつつも受け取るアレク。
頭を下げ礼をする店主に軽く手を振り、広場を離れる。
さて、とりあえず…。
「あ、あそこの店の陰に行って」
「ん?ああ。小便か?」
何てことを…。
「ちげーよ。【隠れ家】に入れてくる」
それほど重たくは無いだろうが、邪魔にはなるだろうしね。
「…便利だな」
だろう?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚