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俺たちがグラードの街に到着したのは、夕方を少し回り、辺りが暗くなった頃だった。
この街はいわば、王都の玄関口の様な立ち位置だ。
だからだろうか?
街のいたる所に立っている街灯に、まだ夜になる前から既に明かりが灯されていたりするし、非常に明るい雰囲気で、うらぶれた気配はどこにも感じられない。
街全体が、ちょっとした貴族街の様なものだろうか?
これなら高貴な方々をもてなす事も十分可能だろう。
さて、その綺麗な街で滞在する今日の宿は、代官屋敷の正面にある、石造りの建物だ。
2階建てで、中庭こそ無いがまるでお城の様な造りになっている。ここへ到着するまでの間、街中の他の建物も見てきたが、ここはちょっと格が違う。
もしかしたら代官屋敷よりも立派かもしれないな。
宿に到着した際にここの支配人がセリアーナに挨拶していたが、その彼等から漏れ聞こえる話を纏めたところ、ここは街屈指の宿で、他所から王都にやって来る高位貴族をもてなす際に使われるんだとか。
で、セリアーナはまさにその高位貴族で、今日はこの宿は俺たちの貸し切りになっている。
この宿は基本的に一組のみの利用が前提になっているそうだ。
実にゴージャス。
護衛の兵は、彼ら用の宿泊施設が併設されているし、中で働く使用人たちはいるが、この宿にいる客は俺とセリアーナの2人だけだ。
俺からしたら贅沢な話ではあるが、セリアーナも他の皆も当たり前の様に受け入れているし、これが貴族ってやつか……。
俺ももうすぐなるわけだが……無理に真似する必要は無いんだろうが、こういった振舞いを身に着けるのは、中々難しそうだよな。
そんな事を考えつつ、宿の支配人に案内されて今日俺たちが使う部屋にやって来た。
そして、護衛の兵たちがすぐに部屋のチェックを開始している。
その彼等をよそに、俺とセリアーナは、部屋の真ん中に置かれた応接用のソファーへ移動した。
俺もアレコレ部屋の中を見てみたいが……一応セリアーナの隣を離れるわけにはいかないし、残念だがここから見るだけだ。
キョロキョロとしていると、広い部屋の中に、さらに部屋が併設されているのか、いくつかのドアが見えた。
寝室とか浴室かな?
リアーナでのセリアーナの部屋と似た雰囲気だ。
これなら、のんびり出来そうだな……。
一泊だけなのがちょっと勿体無い気がする。
既に俺たちの荷物が運ばれていて、部屋の奥に積まれているのが分かった。
さっき挨拶をしていた時に運んでくれてたんだろう。
あそこの奥が寝室かな?
「それでは、私はこれで失礼します」
支配人のセリアーナへの挨拶は続いていたが、それも終わると、すぐに部屋を出て行った。
「奥様、我々もこれで失礼します。セラ副長、後はよろしくお願いします」
「はいよ。お疲れ様」
支配人が部屋を出てすぐに、中のチェックをしていた兵たちもこちらにやって来ると、そう言って部屋を後にした。
さて、それじゃあ……俺も部屋の探索を……と思ったのだが……。
「もうすぐ夕食ね。それまでに着替えを済ませておきましょう」
「ほいほい」
先に着替えか。
探索は後回しだな。
◇
着替えて少し経った頃に、夕食の準備が出来たと連絡が来て、俺たちは食堂に向かった。
ここの宿は、部屋の設備はしっかりしているが、食事は食堂でとることになっているらしい。
わざわざこの街のこの宿に宿泊するようなお偉いさんは、その大半が王都を目指すはずだ。
護衛や専属の使用人だけじゃなくて、執事や侍女、一緒に王都へ行く貴族……。
大人数での移動が前提になる様な身分の人たちだ。
だからこそ、貸し切りが前提になっているのだろう。
俺たちは護衛の兵こそいるが、他は連れてきていないもんな。
多分……ここに2人で泊まる者って俺たちくらいかもしれないし、想定していなかったんだろう。
広い食堂で俺たち2人の他は給仕のみっていう、不思議な時間を過ごしてしまった。
ともあれ、食事を終えた俺たちは部屋に戻り風呂も済ませて、後は寝るまでの時間をどう過ごすかってなったんだが……。
「そこの天井にしましょう」
「ほい!」
寝室に移動したセリアーナは、奥の天井を指してそう言った。
俺はそれに従って、【浮き玉】の高度を上げて天井に手を付けると【隠れ家】を発動した。
「よし、いいよ」
「結構」
セリアーナも【小玉】に乗って浮いてくると、俺の手を掴み、一緒に中へと入った。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




