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「お邪魔しまーす」
【浮き玉】で2階の一番端にある窓から中へ入り込むことに成功した。
木製の開き戸で鍵はかかっていなかったし、警戒は浅いのかもしれない。
建付けが悪いのか、開けるとき少し音がしたが、2階には誰もいないから気づかれなかった。
「ふん!」
深呼吸をし、いつも以上に気合を入れ、魔力を探る。
2階には誰もいないが、1階には7人と、外の見張りが2人居る。
どれくらいの腕かはわからないが、俺を攫って来た連中と同じ位なら、逃げる事も難しいかもしれない。
それを考えると、今逃げるのが正解なんだろうが…。
折角入り込めたんだし、痛い思いもしたし、一発二発…三発四発、何か意趣返しをしておきたい。
というわけで、2階を漁るぞ!
ササっとドアから出て、薄暗い廊下を見る。
人がいないのはわかっているが念の為だ。
廊下とその左右に3部屋ずつ、階段を挟んで更に奥に数部屋か。
照明が無く【祈り】で視力を強化しても中々に厳しい。
床に所々穴が空いているが、この建物は何なんだろうか?
近くに森があるし、探索の拠点にでも使っているのかな?
浮いているから足音はしないが、ドアの開閉には気をつけないといけないな。
◇
「うーむ」
既に9部屋を見て回った。
何も収穫は無しだ。
下にいる連中の荷物らしきものはあったが、そんなもの盗っても仕方が無い。
残るは最後の部屋。
と、いっても一番奥にある部屋ではない。
奥から2番目の部屋だ。
フフフ。
だが、ここは期待が出来るぜ。
何といっても鍵がかかっている。
シンプルな鍵だが、何の道具も無いし技術も無いからピッキングは無理だ。
てことで、鍵のボルト部分を切ろうと思う。
目を凝らし1階を見るが、2階に上がってくる気配はない。
外に行った連中が戻ってくる前に脱出したいし、時間はかけられないが、丁寧にやろう。
ドアに額を付け、ノブに手をかける。
深呼吸をし、心を落ち着かせながら魔力を送り込む。
「ふぬぬぬぬ……」
どうにもセンスが今一なようで、多少時間はかかってしまうが金属なら俺でも魔力を通すことが出来る。
5分程そうし続けただろうか?
自分とドアの金属部分とに繋がりが出来た事を感じた。
「ふっ」
【影の剣】を隙間に通し、気合を込め切断し、音を立てない様気をつけながらドアを開け、中に入り込む。
「おっと…これは当たりじゃないか?」
部屋に入り窓を開け星明りを入れると、地図と手紙らしきものが広げられているテーブルと、引き出しのある棚が2つ目に入った。
決めた、この部屋のをゴッソリ頂こう。
テーブルの上の紙類をかき集め、一気に【隠れ家】に放り込む。
そして棚の前に移動し、引き出しを下段から開け中身を物色する。
昔マンガで見た知識だ。
引き出しは下段から開けると、効率がいいと。
まさか異世界で役に立つとは思わなかった…。
「ん?」
1つ目の棚、その中段の引き出しに革袋があったのだが…。
いつも胸元に感じている感触だ。
「ふふふ…」
後で見ればいいと思いつつも気になり袋を開け中身を見ると、聖貨が4枚入っていた。
これは大当たりだ。
俺もう誘拐されたこと許せそう。
こうなってくると全部じっくり検めたくなるが、ぐっと我慢し部屋の物色に戻る。
「こんなもんかな?」
物色完了。
10分程かかっただろうか?
そろそろ脱出をしないと鉢合わせるかもしれない。
「んしょっんしょっ…」
ドアの手前にテーブルを動かし、バリケードにする。
逆効果かと少し迷ったが、どうせ部屋の中を見たら侵入者の存在はバレる。
これで少しは足止めを出来るかもしれない。
窓を開け外に出る。
月は出ているが、雲も多いしこれなら高度を取ればそうそう気づかれない。
ここがどこかはわからないが、まずは来た道を辿って行こう。
後はちょこちょこ方角を確認していけば多分王都に辿り着く!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚