06
【影の剣】
影ってのがちょっとわからないが、ようやくどんなものが出るかイメージできる物が来た!
ただ、何てったって剣だ。
刃がむき出しって事は無いかもしれないが、もしそうだったらスパンッと行ってしまいかねない。
こいつぁデンジャーだぜ…。
「おっ…!って、と、と…」
どんな物が現れるのかと、先程より更に一歩下がって現れるのをワクワクしながら、「ふひひ」と見守っていた所、現れたのは妙に小さい物だった。
床に落下する前に、慌てて走り寄って受け止めた。
「…指輪?」
落とす事なくキャッチ出来たそれは、銀色で中央に黒のラインが入ったものの、彫刻や宝石がついているわけでもない、極シンプルな指輪だった。
素材は何だろうか?
銀かプラチナだろうか?
ちょっとわからない。
まぁ、金属製。
さて、問題は。
「…剣は?」
これは何ですか?指輪です。
よくある例文が頭をよぎった。
指輪。
そう指輪だ。
指に着ける輪っかで、ネックレスに通したりなんかもするが、少なくとも剣じゃ無い。
「……剣は?」
剣は?
◇
何とも評価しづらい結果に、しばらく落ち込んでいたものの【隠れ家】の例もあるし、この3個も何かあるかもしれない。
前向きに行こう!
「はめるんだよな…?」
とりあえず使い方がわかる指輪から調べることにした。
今のサイズ的には親指が丁度良い位だがそれはちと不格好だし、ブカブカだが人差し指にしよう。
「噛みつかないよな…?」
ちょっとイタリアの「真実の口」を思い出し少し不安になるが、はめないことには始まらない。
軽く息を吐いて気合を入れ直し、右手の人差し指に通した。
「おっ…おお⁉」
付け根まで通したところでキュッと縮み、指に丁度あったサイズになった。
同時に、何故か指輪をはめた指の爪が、マニュキュアを塗ったように真っ黒に染まった。
これ呪われてないよな…?
「あ、外れた」
ゲームみたく外せなくなったらどうしようと思ったが、そんなことは無かった。
指輪は外すとまた元のサイズに戻り、黒く染まった爪もまた元通りになった。
もう一度はめると黒くなり、外すと戻る。
これだけなんだろうか?
この黒い爪が何かある気がするんだけど…。
しばらく爪を観察したりつついたり指輪をはめたり外したりしていると、爪が黒く染まる瞬間に、指輪との間に薄っすら光るラインがあることに気づいた。
指輪をはめることで体に何かが起こり爪が黒く染まるのではなく、爪に直接何かを行っているって事かもしれない。
つまり…
「伸びろ!」
声に出しそう念じると、黒い爪が20センチほどの長さに伸びた。
「ぉぉぉ…」
その状態でよく見ると、この黒い爪は自分の爪の上に被さっていることが分かった。
爪の根元から生えているものの、指に沿って湾曲せずストレートになっている。
左手で恐る恐る触れてみたが、全く曲がりもしなりもしない。
強く押さえても、人差し指は何の感覚も無く、自分の爪とは全くの別物なんだろう。
「戻れ」
声に出しそう念じると、黒い爪こそ残ったものの長さは一瞬で元に戻った。
「ついにファンタジーが…!」
【隠れ家】も凄いのは確かだが、何というか実感しにくい。
それに対し【影の剣】は指輪はサイズが変わるし、爪はシャキンシャキン伸びるし…これは楽しいぞ…!
大当たりじゃないか!
グゥゥ~。
「む…」
そういえば聖貨ガチャに浮かれてすっかり忘れていたが、食事をしていなかった。
モニターで外を覗いたらもうあたりは真っ暗だ。
時計が無いのでわからないが、街に着いたのは夕方頃。
どんだけ集中していたんだろうか。
残りの2個の確認や教会から出た後等考えるべきことはまだまだあるが、風呂入って食事とって一休みしよう。