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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
21章・今年の秋は慌ただしい
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「ぬ?」


 セリアーナと不意に目が合った事に、思わず首を傾げる俺。

 周りの3人もなんだろうって顔をしているが、セリアーナはそのまま10秒ほど、何かを考えるような仕草をしながら俺を見続けると、口を開いた。


「お前は、何かあの場所の利用法に案は無いの? あまり変な物でなければ、多少は融通を利かせられるわよ?」


 あの場所を欲しそうな組織といえば、商業ギルドに冒険者ギルド、それと猟師ギルドに……後は各ギルドの部門かな?

 どこも折れそうには無いから、協議が長引くだろうって事なんだけど……抜け駆けしちゃっていいのかな?


「勝手に決めちゃっていいの?」


「いいわよ。あの場所を確保できるのは1つか2つの組織だけれど、私たちも加わっておいたら、後々揉めたりはしないでしょう?」


「なるほど……」


 場所を取り合っている以上、どこが確保しても皆が納得するとは限らないが、その中に領主側の人間が交ざっていたら、表だって文句は言いにくいだろう。

 裏で揉める分には各ギルド間の問題であって、よほど悪化したりしなければそれでいいんだろうが、揉めるというか、対立が住民にも伝わるようになると、領地の運営に支障をきたしかねないもんな。


 かといって、あそこを領主側が何か利用出来るかっていうと……思いつかないな。

 領主側の施設となると、救護院や騎士団関連の施設だろうけれど、それはもうしっかりとした物があるし、今更あの場所に何かを建てるような事ではない。


 領主側の人間で、街の利権に関係の無い俺に案を出させるってのは悪くはない気はする。

 突拍子の無い案なら突っぱねたらいいし、俺が加わるかもってだけで、議論が進むかもしれないしな。

 しかし……いきなり言われても何も思い浮かばないぞ?


「まあ、お前の案が必ずしも採用されるとは言えないし、仮に採用されても、そこの管理を任せるような事はしないから、安心なさい」


「うん……」


 空き地の利用法的なものでパッと思い浮かんだのは、駐車場や公園だが、それは前世の日本だからだ。

 それに、今セリアーナが言うように管理の問題もある。

 俺がしなくていいとはいえ、あんまり手間がかかるような物を建ててもな……。

 管理の手間がかからずに、あの場所に浮かないような施設……なんかあるかな?


「まあ、すぐに決めるような事でも無いし、冬の間ゆっくり考えたらいいわ」


 思いの外俺が真剣に考えこんだのが意外だったのか、苦笑しながらセリアーナはそう言った。


「ふぬぬ……うん……」


 もうちょい気楽に考えたらいいんだろうけれど……難しいな。

 駐車場や公園は論外としても、孤児院とかは潰しても教会はあそこに残るから、調和がとれるものを……と思考が固まってしまっている。

 教会っぽい物教会っぽい物……。

 前世では宗教には縁が無かったしな……精々初詣やお墓参り……。


「あっ!?」


 教会に似合いそうなものを連想していくと、一つあの場所に相応しそうなものが思い浮かんだ。


「あら? なにか思い浮かんだの?」


「お墓はどうかな?」


 教会や孤児院が何時から建っていたのかはわからないが、それでも10年20年って程度じゃないだろう。

 恐らく、あの場で戦ったアンデッドの数よりも多くの子供が命を落としていたはずだ。

 必ずしも、死体が全部アンデッドになるとは限らないしな。


 そして、遺体は孤児院の裏手に埋められていたが、埋葬なんてお世辞にも言えないような雑なものだった。

 教会や孤児院に資料が残っているかはわからないし、一人一人の名前はわからないかもしれないが、それでもお墓くらいはあってもいいんじゃないかな?


「お墓……墓地ですか。共同墓地は既にありますが、どうしますか?」


「そうね……。事の経緯を考えると悪くは無いけれど……」


 セリアーナはテレサの言葉に少し困った様な顔をしている。


「あぁ……そうか。お墓はもうあったね……」


 平民用に既に共同墓地があるんだし、わざわざ新たに用意しなくてもいいのか。

 それでも、セリアーナの顔を見るに、言い張れば作って貰えそうな気もするが……それはちょっと違う気がする。


「セリア様、慰霊碑はどうでしょうか? 今後教会はこちら側の人間が運営していく事になるでしょうし、今とは立ち位置も変わってくるでしょうが、神国の非道を領民に忘れさせない為にも、いいと思いますよ?」


 ふぬぬ……と、再度考え込んでいると、横からエレナが補足する案を出してきた。


 セリアーナは、俯いてしばし考えこんでいたが、結論が出たのか顔を上げた。


「慰霊碑ね……いいわ。明日の会議に通して頂戴。建てる意味もしっかりあるし、場所もそこまで取らないでしょう。まず決定でしょうね。セラ、お前もいいわね?」


「うんうん」


 俺の顔を見たセリアーナに頷き返した。


 慰霊碑か。

 少々大袈裟になってしまう気もするが、悪くないと思う。

 亡くなった子供たちをちゃんと埋葬したいという気持ちはもちろんあるが、俺のモヤモヤというか葛藤をスッキリさせたいってのもあるんだ。

 お墓は無理でも、何かしら形を残す事が出来るんなら、それでいいと思う。

 どんな物になるかはわからないが、花ぐらいは供えられるだろうしな。

セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】

恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・8枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚

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― 新着の感想 ―
[一言] (感想欄を見てから)  慰霊碑と公園かぁ……。  各季節で良い花を咲かせる木を植えて、季節ごとに花見とか(治安的に腰を下ろして宴会は難しいけど)やって、食べ物屋台を公園に並べて観光地。 …
[一言] 慰霊碑かぁ お葬式でよく使われる聖句でも刻んだ小さな鐘も併設して好きに鳴らして良いようにすれば、目だけじゃなく耳でも印象付けられるかも?
[一言] 政治的な主張もできて一石二鳥! ついでにセラさんの元の名前も書いておけば死んだことにもできて一石三鳥!
感想一覧
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