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「うーむ…」
王都のダンジョン浅瀬にある、お気に入りの狩場。
そこに出てくるウシの魔物を、【影の剣】で一撃で核を潰すのではなく【緋蜂の針】で突撃からの首を刎ねるという、いつもとは違う倒し方をした。
その方が死体が残るからだ。
そして、その残った死体の頭部に潜り込むアカメ君。
近づいた俺の影から体を伸ばし、死体に潜っては核を潰し、また別の死体に潜っては潰し…と繰り返すこと10数回。
いくつか遺物は落としているが、それらには興味を全く示さない。
核だけを狙っているようだ。
具合が悪くなったりはしてなさそうだし、問題は無いんだろうけど…。
明後日も来るつもりだったけど、念の為もう少し間を置いた方がいいかな?
様子見だ。
それよりも、本人達は隠れているつもりなんだろうし、実際俺だけじゃ気づけなかっただろうけど、何人かがずっと様子を窺っているんだよね。
戦っている最中に壁越しに見つけてしまった。
彼等がどれくらいの実力なのかわからないから、気づいていない振りをしているけど…よくある事なんだろうか?
出る杭は打つ的な…?
「おっと」
懐から、「ポーン」と音が鳴った。
タイマーのアラーム音だ。
「もう1時間か…」
彼等が何者かは気になるが、アカメの能力も試せたし、聖貨も1枚だがゲットした。
やることはやったし、とっとと帰るか。
天井近くまで上昇してから移動を開始する。
それに合わせ彼等も俺の視界に入らないように距離を取っていった。
我ながら変な動きをしている自覚はあるが、よく合わせられるな…。
妙に手馴れているし、もしかして今までも見られていたのかもしれない。
戻ったら相談するかな。
◇
ダンジョンで俺を見ていた連中は、距離を取りつつも結局入口までついてきた。
同じグループなのかはわからないが5~6人いたし、ただ俺を見物していただけって訳じゃないと思うんだけど…。
ギルドを出てからも真っ直ぐ帰らず、無駄に街中をうろうろしていたが何もなかった。
まぁ、何はともあれ寄り道をした為少々時間を食ったが、無事帰還。
俺は普段の出入りは裏口からしているので、表の様子はわからないが、客が来ている様子は無さそうだ。
じーさんは屋敷にいるだろうか?
裏口から入ると近くの厨房で話声がする。
朝の仕事を終えて休憩でもしているんだろう。
丁度いいタイミングだ。
「ただいまー」
「あら、お帰りなさい」
「お帰り。怪我は無いかい?」
「無いよー」
屋敷の人間は、俺がダンジョンへ行っている事を知っている。
このやり取りは毎度のことだ。
「はい。これ、皆で食べて」
寄り道ついでに買って来た物を渡した。
「あら、ケーキ!高かったでしょう?」
袋の中身は評判のお店のホールケーキを2つだ。
お値段それぞれ大銀貨1枚で日本円にして約1万。
これは…どうなんだろうね?
前世ではあまりケーキとか買わなかったからよく知らないけど、ワンホール5千円とかだった気がする。
そう考えると高い気もするが、果物も生クリームも使っているし、流通事情を考えるとお買い得な気もする。
ケーキ屋なんての存在するのも結構なことだと思う。
お金も貯まってきたし、そろそろお店巡りなんかも悪くないかな。
「いつもお世話になってるからねー。ところで、御館様って屋敷にいるかな?」
「旦那様はお部屋にいらっしゃるわ。今日は来客の予定も無いはずよ」
「そか、ありがとー」
「あら、食べて行かないの?」
「うん、待ってる間にもう食べてきたからね」
じゃーねーと手を振り、厨房を後にする。
「ふむ…」
自分の格好を見るが、特別汚れてはいない。
それでも1時間程度とはいえダンジョンに潜っていたし、このまま会いに行くのはちょっとよろしくない。
時間に余裕はありそうだし、着替えてからにするかね。
そう決め、【隠れ家】を使うべくセリアーナの部屋に向かうことにした。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




