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魔物には、種類は少ないが共生型と呼ばれる種族がいる。
共生型は外のみでダンジョンには存在せず、潜り蛇の様に、別の生物に付く魔物だ。
寄生と違うのは、魔力を同調させることで、自身の能力を相手にも使える様にすることが出来る点。
大きな群れのボスや、魔王種等の強力な魔物は共生型を付けている事が多いそうだ。
そして、俺の様に従魔として、人間に付く場合もある。
その場合はどうしても人間という種族の差から、いくらか弱体化したものになるらしい。
それでも、人外の能力を得るわけだし、大きな力になることに違いは無い。
【祈り】と合わせて、本当に魔王じみて来てんなとアレクがこぼしたので、とりあえず蹴っておいたが、自分でもそんな気がする。
魔王・セラ様か…。
弱そうだな。
それはさておき、潜り蛇のアカメの能力だ。
これは凄いね。
能力と言うより、感覚を共有しているんだと思う。
俺の視界範囲内はもちろん、遮蔽物等の視界が通らない所でも生物が居たらわかる。
名前は忘れたが、蛇の持つ何とか器官に近いんじゃないだろうか?
あれは確か赤外線を感知するものだったが、これは魔力を見ているんだと思う。
アイテムや魔道具は何となくだが、普段よりもピントが合ったようにくっきり見えていたし、この考えは合っているはずだ。
この世界、何を感じているのかわからないが、腕の立つ人だと気配を感じる事が出来る。
浮いていて、足音のしない俺の接近に気づくし、音じゃないと思う。
多分魔力を感じていたんじゃなかろうか?
ふふふ。
達人に一歩近づけたかもしれないな。
◇
ダーンジョーン!
リーゼルの依頼を受けて以来だから、10日ぶりだろうか?
アカメの力を確認すべく、久しぶりのダンジョンだ。
「居た…」
20メートルほど先の天井の起伏の陰に隠れるように潜んでいる、オオコウモリの群れを見つけた。
いつもなら奇襲を受け驚いてから返り討ちにしていたが、速さは俺の方が上だし、これなら逆に俺が先制できそうだ。
数は7…かな?
一気に行くぞ!
【浮き玉】を加速・上昇させ、接近する。
「ふっ!」
コウモリ達も俺の接近に気づいたようだが、動き出しが間に合わずにバタついているところを、【影の剣】で一纏めに切り倒した。
「やたっ!」
今までも無傷で済んでいたが、それでも傷を負う危険はあった。
でも今回は、一切危なげなく終始自分のペースで進められた。
完璧だ。
戦闘に関してはだが…。
「あ~…そっか……」
戦闘を終え高度を下げると、地面に転がる7つのコウモリの死体が目に入った。
普段は先制こそされるものの、確実に核を一撃で断ってきた。
今回は速度を優先しすぎてそれが出来ずに死体がそのまま残っている。
まだまだ俺の実力では無理だが、いつかこの速度でも核を狙えるようになりたいものだ。
さしあたってコレをどうにかしないと…。
核は頭部にあるから【影の剣】で貫こうと近づいたところ、アカメが裾から姿を見せた。
外の魔物だし、ダンジョンに興味でもあるのかと思い様子を見ていると、死体の頭部に潜り込んだ。
何事かと思ったが、死体が消えたところを見ると、核を潰したんだと思う。
他の6つの死体も同じように、アカメが潰して回った。
「…アカメ君?君…大丈夫なん?」
あまり詳しい資料は無かったが、契約時に騎士団の持っている潜り蛇の情報を見せてもらった。
判明している生態の一つに、消化器官は存在せず食事を必要としない代わりに、魔力を摂取する生き物だ、というらしいが…。
核を齧っただけで、呑み込んだわけじゃなさそうだ。
様子に変わりは無いし、大丈夫なのかな?
「行ける?」
指を近づけると体を伸ばし顔を乗せてくる。
これはOKって事なんだろうか?
まぁ、無理なら自分から齧りに行かないか。
「じゃ、もう少し行ってみよう!」
声をかけると袖に潜っていった。
…大丈夫だよね?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚