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今教会エリアがどんな状況にあるのかはわからないが、少なくともピクニックに行けるような安全な場所じゃないのは間違いない。
そして、セリアーナたちは自身が戦闘を行う事も想定している。
俺は別に好んで危ない場所に行きたいわけじゃ無いが、だからといって、そんな場に何故連れて行かないのかと。
我ながら俺は相当な便利キャラなのに。
抗議の意も兼ねてセリアーナを睨むと、またしても彼女は大きく溜息を吐いた。
「お前がここを離れたら子供たちはどうするの?」
「うぬ? ……むぅ」
隣室にいる3人の子供たち……いざって時には、セリアーナとエレナがそれぞれを抱いて脱出する事になっていたが、その2人が屋敷を離れることになる。
そうなると、避難方法は乳母が抱いて逃げるしかないが……無理そうなら【隠れ家】だ。
わかる。
わかるけれど……。
「いや……でも、でもさ……」
子供たちを蔑ろにするつもりは無いが、事を起こす人間はもう捕らえたはずだ。
それよりも、セリアーナが危険かもしれない場所に行くんなら、俺も一緒だろう……。
「セリア様」
ここに残らせたいセリアーナと、ついて行きたい俺。
しばし無言での睨み合いが続いたが、エレナがそれに割って入ってきた。
そして、手にしていた道具を置いてこちらに歩いて来る。
隣の部屋には彼女の子供であるルカ君も一緒にいる。
彼女もセリアーナと一緒に向かうだろうし、俺にここを守れって言ってくるのかな……?
どうにか言い負かされないように頑張らないと。
そう気合いを入れていたのだが、俺の肩に手を置くとセリアーナを向いた。
「私がここに残ります。私とモニカがいれば、万が一の事態になっても子を抱いて脱出は可能ですからね。それよりも、今はアレクがいませんし、セリア様の盾は必要です」
そして、今度は振り向き俺の目を見て話を続けた。
「セラ、セリア様を任せられるね?」
その言葉に、俺はコクコクと頷く。
「……仕方が無いわね。ここで議論を交わす時間も無いし。いいわ。セラ、お前が来なさい」
一刻を争う事態……ってわけじゃ無いが、のんびりしていいわけでも無い。
なんだかんだで、今のこのやり取りで5分くらいは時間を使ってしまっている。
セリアーナは俺の説得を諦めて、エレナの案を呑む事にしたようだ。
「エレナ、子供たちは貴女に任せるけれど、ルカも守るのよ?」
「はい。もちろんです」
伝えたいことは伝えたのか、それだけ確認すると踵を返してテレサたちの下へ向かった。
俺もその後をついて行こうかと思ったが、その前に一つエレナに確認をしておく。
「【小玉】使う?」
流石に機動力ではモニカの方がエレナより上だし、【小玉】があった方が合わせられるんじゃないかな?
そう思ったのだが、エレナは首を横に振った。
「いや、大丈夫だよ。無防備には出来ないけれど、そもそもここを狙って来るような者はもういないからね。それは、セリア様たちに使って頂戴」
「そか……。了解!」
うん……まぁ、屋敷自体は他にも警備の兵がいるし、セリアーナが俺を残そうとしたのも念の為って感じだったもんな。
まぁ……それは外だってそうかもしれないが、それでもあっちの方が気をつけた方がいい。
役割を代わってくれたエレナの分もしっかり努めないとな!
「セラ、行くわよ!」
向こうの準備は完了したようで、セリアーナが出発を伝えてきた。
「んじゃ、行ってくる!」
「うん。もちろん君も気をつけて」
「ほい!」
俺はエレナに挨拶をすると、もう部屋を出ようとしているセリアーナたちに慌てて合流をした。
◇
出発の際に、セリアーナ自ら出る事に使用人たちには驚かれたが、カロスは事前にその可能性を協議していたのか、慌てること無く彼の下に集まっていた情報から、必要になりそうなものを手短にセリアーナに伝えた。
現状、何らかの行動を起こした者たちは既に捕らえきったようだが、それでもまだ注意がいる人物たちは残っていて、その連中の監視なんかにも人手を割いているらしい。
そのためこちらから街中での護衛に人数を割くのは厳しく、安全のために移動は地下通路を利用して欲しいそうだ。
まだ夜だし何より外は雨が降っているしで、俺たちは元からそのつもりなのだが、カロスからしたら領主代行がコソコソ地下から移動するってのは、あまり好ましくないのだろう。
セリアーナの前だけに態度には出さなかったが、どこか悔しげな様子だ。
「些細な事よ。それよりも、エレナを残しているけれど彼女は子供たちから離れられないわ。屋敷の事は貴方に任せるわね」
「お任せください。一つ……ロゼを子供部屋に送ってもよろしいでしょうか?」
セリアーナが簡単な指示を出すと、カロスがこの場にはいないがロゼを子供部屋に送ることを提案してきた。
ロゼかぁ……戦っている姿は見たことは無いけれど、あの人も戦える人だもんな。
彼女も一緒ならエレナも心強いかもしれない。
「そうね……許可するわ」
セリアーナもそう考えたのか、それを許可した。
そう言えば、今日は伝令として足を運んでいたけれど、あの人普段は南館に全く踏み入らないよな。
なんでだろ?
「ありがとうございます。それではどうぞお気をつけて……。セラ、奥様を頼むぞ」
「お? うん。大丈夫」
考え事を中断して、カロスに返事をした。
屋敷の事は彼等に任せて問題無さそうだし、彼が言うように俺はセリアーナの守りに専念しよう。
「行くわよ」
「うん」
改めて気合が入ったところで、俺たちは地下通路から教会地区を目指す事にした。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




