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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
21章・今年の秋は慌ただしい

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 スヤスヤと気持ちよく眠っていたが、なにやらゴソゴソ近くで動く気配に目が覚めた。

 部屋の様子から察するに……もう朝だな!


「うぐぐ……。お? おはよー」


 目を擦りながら布団から頭を出すと、セリアーナは既に着替えを済ませていた。

 ……なんか動いていると思ったけれど、アレはベッドから身を起こす音じゃなくて、身支度する音だったのか。


「あら、おはよう。早いわね」


 セリアーナは、ベッドから起き上がった俺を見て一瞬目を丸くするが、すぐにフッと笑った。

 俺も目を覚ましさえすれば、早いんだぞ?

 ……ともあれだ。


「たまにはね! よいしょっと……。お誕生日おめでとー」


 秋の1月14日。

 今日はセリアーナの20歳の誕生日だ。

 ベッドから降りて彼女の前へ行くと、祝いの言葉を告げた。

 思えば出会ってからもうすぐ6年か……長い付き合いだ。

 初対面の時に、大人っぽかったし15~16歳くらいって印象を受けたが、実は14歳になったばかりと聞いて、びっくりしたのを覚えている。


「ええ、ありがとう。……毎年の事だけれど、お前も律儀ね」


 セリアーナは俺の頬に手を当てながら、笑っている。


 セリアーナが言うように、この世界だとあんまり部下が雇い主の誕生日を祝うってことは無かったりする。

 だが……そこは、付き合いも長いしな。

 

 それに、俺は自分の誕生日は秋の2月の終わり頃としか認識できていない。

 孤児院にはカレンダーが無かったし、はっきり自分の誕生日がこの日だってわかったのも、聖貨を得たからだ。

 そして、聖貨を得てからも街を脱出するための準備だったり【隠れ家】の検証だったりで、いちいち日付を確認するどころじゃなかったんだよな。


 今の俺の生活では日付にこだわる事ってほとんど無いし、それなら親しい人の誕生日くらいはしっかり覚えておきたい。


 ちなみに、アレクは夏の3月25日だ。

 今年もそうだが、なんだかんだその時期は彼は忙しくて、中々祝う機会は無い。

 さらに、ジグハルトとフィオーラ、そしてテレサの誕生日は何となく聞けていない。

 親しき仲にも礼儀ありだな。


 ◇


「お疲れ様ー」


 そう声をかけながら、俺は小箱を両手に持って厨房の中へと入って行った。

 既に昼食を終えて、今は夜の仕込み前の休憩時間だ。


「セラか。どうした?」


 応対したのは、あいかわらず迫力満点の料理長だ。


「うん。今日は全員いるのかな……?」


 厨房の中の人数を数えながら、手にした箱を皆がいる机の上に置いた。

 例年の事だし彼等もこれが何かは気付いているだろうが、俺からも改めて告げておこう。


「奥様から皆にだね。何時もご苦労様って。料理長から皆に渡してもらえるかな?」


 俺が持って来た箱には、中に大きな袋が入っていて、さらにその中には金貨が料理人全員分入っている。

 セリアーナが使用人に日頃の仕事振りの感謝も兼ねて、自分の誕生日に配っているんだ。

 貴族の屋敷だと大抵やっているそうだが、ウチはセリアーナもリーゼルもそれぞれ金貨1枚ずつだからな。

 日頃の給料の他に、毎年金貨2枚のお小遣いって考えたら豪勢な話だと思う。

 今年はこんな事態だから何かを催したりって事はないが、こういう事はしっかりとやっている。

 

 まぁ、流石に本人が1人ずつ手渡しにって事は出来ないから、それぞれの職長に俺がお届けに出向いているわけだな。

 有難味は薄れるかもしれないが、そこは我慢してもらおう。


 料理長は慣れたもので、箱を一旦持ち上げると、俺に向かって恭しく頭を下げた。


「確かに受け取った。奥様に感謝を伝えておいてくれ」


「はいはい」


 それじゃあ、配達完了ってことで厨房を出ようとしたのだが、その前に料理長に話しかけられた。


「なあ、セラ。今年は雨季前は職人は呼ばないんだよな? 念のため確認をしておきたいんだが……」


「ああ……」


 春はもちろん秋の雨季前も、職人を呼んで屋敷中の点検を行っていて、その際は彼等の分の食事も用意するのだが、今年の秋は点検を見送ることになっている。

 

 あの作業は毎回結構な人数の職人が出入りするからな。

 工房自体はともかく、流石に作業中に出入りする人間全員の調査は手が追い付かないし、やむを得ない。


 といっても、そのまま正直に伝えたりはしていない。

 今年は、戦争の影響で街の兵士の数が減っていて、もし雨の被害が出ても救助が遅れるかもしれないから、屋敷の点検よりも街中の点検を行うようにと伝えている。

 微妙に住民へのポイントアップを狙う辺り、抜け目がないね。


 ともあれ、今年の秋は点検は無く、その際の食事の用意も不要だ。

 もし、必要ないのに用意してしまったら料理が無駄になるし、かといって、実は必要だったとなっても、量が量だけに急遽用意するのも難しいし……料理長にとっては中々悩ましい問題だ。

 気になっていたのかもしれないな。


「うん。大丈夫。今年は点検はしないから、職人たちを呼ばないよ」


「そうか……。わかった、呼び止めて悪かったな」


「うん。……それよりも、早く配ってあげたら? 皆見てるよ?」


「あ?」


 そう言って振り向くと、料理人たちの視線が自分に集まっている事に気付いたようだ。

 俺がいると彼等もはしゃぎにくいだろうし、さっさと退散だな!

セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】

恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・8枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚

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― 新着の感想 ―
[良い点] セリア様とはじめ出会ったときは捕まるやら搾取されるやら尋問されるやらと早くも自由が奪われるのかと色々と不穏な感でしたが、まさかこんなに悠々自適な生活を送れるようになるとは誰も思わなかったこ…
[一言] 野良猫から家猫になってから6年……早い!
[一言] 誕生日恒例のアレ 使用人の心を掴んでおいて悪いことはない どうか雨漏りしませんように
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