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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
21章・今年の秋は慌ただしい
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706 セリアーナ side

 リーゼルたちが街を発ってもうじき10日が経つ。


 彼だけじゃなくて、騎士団長のオーギュストや2番隊隊長のアレク、他にも領地の幹部や現場の主力を多数連れて行っているが、幸い今のところ街には何の問題も起きていない。

 このリーゼルの執務室も、普段とは少々顔触れが変わっているが、仕事の進行具合は通常と何ら変わりない。

 私もある程度はリーゼルの代わりを出来ているし、こういった事態で確認するのは本来望ましいことでは無いのだろうが、リアーナの組織作りは成功したと言えるだろう。


 部屋の中の皆の仕事振りを確認しながら、自分もまた1枚書類にサインを入れる。

 その書類を決裁済みのケースに入れて、次に取り掛かろうとしたのだが、廊下をこちらに早足で向かって来る者に気付き、一旦手を止めた。

 下の騎士団本部からだったから、何かの報告だろうか?


 ほどなくして、外から入室の報せが入る。

 許可を出すと、伝令の兵が入って来るなり大きな声で告げた。


「失礼します。先程報告が届きましたが、領主様以下全兵士が無事ゼルキス領に入ったとのことです」


 その報告に部屋の中が「おおっ」と沸いた。


 魔物の討伐などで今回よりも大規模な行軍はあったが、やはり領主帯同の長期遠征だ。

 ここで待つ彼等は不安があったのかもしれない。

 自領から隣の領地に入っただけとはいえ、安心できたのだろう。

 部屋の空気が若干和らいだ気がする。


 伝令は私の前までやって来ると、詳細が記されたであろう書簡を差し出した。


「ご苦労様。報告は確かに受け取ったわ」


「はっ。それでは失礼します」


 そう言って部屋を出ると、こちらに来た時と同様足早に去って行った。


 封を解き中を読むが、内容は予想通りのものだ。

 日付は5日前。

 ゼルキスと接するリアーナの西端の街ソールの兵を帯同させて、領地を越えたところでこの報告を書いたらしい。

 兵士と馬、共に問題無く、予定通りゼルキス領都に到着できる見通しだ。

 そこまで辿り着けさえすれば、後はお父様の指揮下に入ればいい。


 今回の出兵で不安だったのは、リアーナの騎士団には年嵩の経験豊富な幹部がいない事だった。

 最高齢はジグハルトで、アレクもオーギュストも優秀ではあるが、戦争はもちろん、人間相手の戦闘に向かう兵の指揮を執った経験はない。

 魔物相手ではあるが、戦闘経験が豊富な2番隊で固めたのも、士気の低下を極力避けるためだったが……どうやらその心配は無用に終わりそうだ。


 ◇


「おつかれー」


 午後の仕事に取り掛かって1時間程が経ち、いくつか案件も片付いた頃、騎士団本部に向かっていたセラが戻ってきた。

 セラはここ最近、午前中領都周辺の警備を担当していた兵たちに【祈り】をかけて、彼等の慰労を行っている。

 10日程度でどうこうなる様な編成ではないが、お陰で常に十全な状態を保てているし、領都の治安維持に大いに貢献していると言えるだろう。

 組織運営で、あまり個人の力……それも加護に頼る様な真似はしたくないが、今は状況が状況だしまだまだリアーナが未成熟という事か。

 組織作り自体は上手くいっていても、駒が足りていない。


 まあ、いいわ。


「セラ、戻って来て早々で悪いけれど、お使いに行って頂戴」


「うん? いいけど、どこ? 冒険者ギルド?」


 私の言葉に首を傾げながら近付いてきた。

 外出は制限させているから、冒険者ギルドと予測したのだろう。

 あてずっぽうでは無くてちゃんと考えているあたり、最近のこの娘はやる気があるらしい。


「少し違うわね。商業ギルドよ」


 決裁を終えた書類を2枚ケースから取り出すと、まず1枚を丸めて封をしてから彼女に渡した。

 文官の回収を待ってでも良かったが、もう1枚の分も考えると早い方がいいだろう。


「後はこれね。こちらは下にいるフィオーラ宛よ。先に商業ギルドに行ってから帰りに渡して頂戴」


「……うん。まぁ、行ってくるよ」


「ええ。お願いね」


 2枚の書類を受け取ったセラは、すぐに踵を返して廊下へと姿を消した。


「細かい仕事をセラ殿が引き受けて下さって、大分助かりますね……」


 その彼女の背を見送っていた文官の1人がそう口にすると、他の者たちも追従する。

 あの娘は仕事をする時はするのだが、普段がアレだ。

 たとえこの部屋にリーゼルがいようと平気で昼寝をするし、彼女がその気になれば仕事が出来ることはわかっていても、あれだけ精力的に仕事を熟す姿に驚いているのだろう。


 だが、あの働きを平時でも期待されては困る。

 なまじ優秀なだけに、あれに仕事を頼む癖がついては、この部屋が立ちいかなくなる。


「ふふ……。まあ、あの娘は気分屋だからあまりあてにしては駄目よ」


「そうですね。今のセラは外に出かけられないから退屈しのぎに仕事をしているのかもしれませんし」


 エレナもそれがわかっているのだろう。

 私の言葉に合わせてきた。


「ははは。それもそうですね。あまりセラ殿に張り切られては、我々の仕事が無くなってしまいます」


 彼等も私たちの会話で察したようだ。

 上手く話の方向を転換して、また仕事に取り掛かった。


 流石にリーゼルが選んだ者たちだけあって、少々面白みに欠けるが、真面目で仕事に忠実だ。

 カロスとロゼも残っているし、彼等の気が緩むことは無いか。


セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】

恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・8枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚

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― 新着の感想 ―
[一言] ただそこに在れば良い リアーナに万年の繁栄を 前から気になってたんですが誰の膝でも乗れちゃうセラの外見年齢って幾つくらいなんですか? 内緒?
[一言] あ゛〜 少年に恋されてメスになっていくセラがみてぇー...
[一言] 怠惰「ただいまお休みを頂いております」
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