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パラパラとページをめくる音と、パタパタと寝転がりながら足を動かす音が部屋に響く。
ここは学院の中にある、多分談話室とかそんな感じの部屋だと思う。
俺を1人で放置している事から、来賓室ではないと思うんだが…、調度品が凝っている物ばかりだから今一自信は無い。
そもそも俺は何のために連れてこられたんだろうか?
結局教えてもらっていないんだよな。
どんなカリキュラムなのかは知らないが、セリアーナは授業に向かった。
昼食時には戻って来るからここで待っておくようにと言われたのだが、そろそろ俺の腹時計だとお昼時なんだけど…?
暇つぶし用に持ち込んだ本も2冊目に突入した。
でかいし重たかったが、念の為複数冊持ってきて正解だった。
「ん?」
ノックの音がしたが、返事を待たずにドアを開けてきた。
セリアーナ達かな?
「お帰りー……誰?」
ソファーから体を起こしドアの方を向くと、知らない人間が3人。
1人は執事っぽい雰囲気のおっさん。
もう1人はメイド服の女性。
最後は、金髪の美形のにーちゃん。
「おや?セリアはまだか」
「そのようですね。講堂を利用していましたし、まだかかるかもしれませんね」
「どうしましょう。先に食堂へ向かいますか?」
俺そっちのけで会話を始めた3人組だが…誰なんだろうか?
「やあ。僕達もここで待たせてもらうよ」
「あ、うん。どぞ…」
いいんだよな?
セリアーナの事を待っているみたいだし。
念の為、右足と右の人差し指を確認する。
オッケー、ちゃんと装備している。
俺の動きに気づいたのかおっさんがにーちゃんの側に控えた。
何かメリケンサックみたいなの付けているし…アイテムだよな?あれ。
彼は護衛も兼ねているんだろうか?警戒されているみたいだ。
「…むぅ」
「カロス、下がれ」
どうしようか迷っていたところ、にーちゃんの言葉でおっさんが下がった。
カロスっていうのか。
「僕はリーゼルだ。君の事は聞いているよセラ君。セリアが来るまで気楽に行こうじゃないか」
「はぁ…」
人好きのする顔で言ってきた。
それはいいとして、このにーちゃんは結局誰なんだ?
◇
「あら、随分楽しそうね?」
笑い声が響く部屋にセリアーナとエレナがようやくやって来た。
俺が読んでいた本は貴族向けの歴史書だ。
それを見たリーゼルが更にいろいろ詳しく解説してくれて、それにカロスも参加してきてついつい盛り上がってしまった。
「やあ、先に失礼しているよ」
「セラ、彼が誰かわかっているの?」
リーゼルが何者か。
うん、話している途中で気づいたよ。
「王子様でしょ?第4王子」
「おや?よくわかったね。セリアが教えたのかな?」
「いいえ、名前も教えていなかったわ。呼び方かしら?」
「うん。それそれ」
貴族女性を愛称で呼ぶってのは、身内か極親しい相手のみだ。
ミュラー家はあえて家族でも本名を使っているが、学院にいる男性で愛称で呼びそうな相手と言ったら、彼位だと考えていたが、当たりだったか。
話している途中に思い当って、どうすっかなー?とは思ったんだけど、どうしていいかもわからなかったんだ…。
「リーゼル・メサリア。この国の第4王子よ」
俺の隣に座ってきた。
移動した方がいいんだろうか?
「彼女の婚約者でもある。君もそのままそこで」
立ち上がろうとしたところ、止められた。
いいんだろうか?他の3人は立ったままだけど…。
「構わないわ。リーゼルがお前に用があるから呼んだのよ」
「ほう」
「そう。君の加護を聞いて依頼をしたくてね」
…このにーちゃんには使うところは無さそうだけど、他の人相手かな?
セリアーナの婚約者だし、女性相手とは考えにくいけど…。
身内とかかな?
…身内って王族だよな?
「僕では無く、僕の姉なんだがね」
やっぱりか⁉
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚