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夏の1月。
日本でいえば6月くらいだろうか?
雨は降るが梅雨は無く湿度もそれほど高くない。
日差しは強いが窓から入る風は涼しく、中々過ごしやすい季節だ。
外に生息する魔物にとってもそれは同じようで、この頃から活動が活発になり縄張りを拡大し始める。
それを目当てに冒険者達は開拓地にどんどん集まっていく。
孤児院にいた頃は怪我人の治療に駆り出され、忙しい日々だったが…。
結婚式の後、セリアーナが言っていたように俺への依頼がいくつかやって来た。
それに対しての彼女が言っていた考え。
それは、俺が出向くのでは無く、相手側を屋敷に来させることだった。
まぁ、用事のある方が出向くのは当たり前と言えば当たり前だ。
よほど家格が上ならともかく、じーさん個人は男爵だがミュラー家自体は伯爵家。
大抵の相手を呼びつける事に問題は無い。
エルメリアの後4人の施療をしたが、彼女程重症、もとい、本腰を入れる必要があった者はおらず、両腕・上半身・下半身・の3日で終えた。
もちろん1日金貨は5枚。
中々の稼ぎっぷりだ。
農場での検証も全員に試したことで終え、代わりに爪が治ったことで、ダンジョンへの許可も出たので、2日に1回1時間で聖貨を1~2枚稼いで後は読書、という優雅な日々を過ごしている。
セリアーナも学院の同世代だけでなく、国内外問わず上の世代にも知られ中々ご機嫌だ。
褒美に貴族しか買えない歴史書等を買ってもらった。
これが面白い。
魔王討伐の英雄譚や劇のモデルとなった出来事が実際に起こっている。
なぜ貴族限定なのかと言うと、地図や具体的な人名・家名が出ているから。
ちゃんとカウンターを決め解決しているが、それまでボコボコにやられまくっている。
中には断絶してしまった家もあるし、迂闊に広められないのだろう。
個人的にスゲーなと思ったのが、「巨竜ラギュオラ」だ。
「ラギュオラの牙」が名前を取ったように今も知られているが、こいつとの戦闘記録もあった。
流石に物語に出てくるように、炎を吹いたり空を飛んだりはしなかったようだが、山を砕き、森を薙ぎ払ったりはしたらしい。
当時のルゼル王国の国力の大半を注ぎ込んで、何とか討伐に成功したそうだ。
そして、ルゼルを含む後の同盟初期の4国でその遺骸を分け、王宮や王都の建材に利用したらしい。
強力な魔物を利用した素材は格下の魔物を退ける効果がある。
それがあったからこそ、大陸東部という、今なお魔物だらけ謎だらけの土地を開拓できたのだろう。
いやはや、国に歴史ありだ。
◇
「お前…またはしたない格好を」
歴史書を読みながら過去に思いをはせていたら、セリアーナの声が耳を突いた。
「お帰り。早かったね?」
まだ昼を少し回った位だ。
いつも帰りは夕方なんだが…。
「今日は午前で上りよ。…せめて足は閉じなさい」
「む」
本を枕にソファーに寝転がっている。
右足は背もたれに乗せ、左足は下に垂らしている。
…まぁ上品な格好では無いな。
「はい。服は着ようね」
ちなみに服装は、ノースリーブのシャツにかぼちゃパンツ。
要は下着姿だ。
「皴になるんだよね…」
苦笑しながら椅子に掛けていたメイド服をエレナが渡してきた。
仕方が無いと、受け取り服を着る。
「もう農場へは行ってないのよね?明日は何か予定はあるのかしら?」
服を着たのを見計らいセリアーナが話しかけてきた。
「明日は何も無いよ?ダンジョンは今日行ったし」
何かお使いかな?
「そう丁度良かったわ。なら明日はお前も学院に来なさい」
「ほ?」
「いつもより早く起きるのよ?」
「んん?」
説明する気は無いらしく、机に着き手紙を読み始めている。
機嫌は悪くないみたいだし変な話じゃ無いんだろうけど…。
屋敷に招くんじゃなく、こっちが行くって事は偉い人とでも会うんだろうか?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚




