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「随分喜んでいたわね」
「本当に。元を知っているだけに王都に来てからの姿を見るのは正直忍びなかったから…。よかったわ」
「…それほどだったの?」
施療開始前のエルメリアの姿を知らないセリアーナが俺に聞いてくる。
「うん。お嬢様の1.5倍位あったんじゃないかな?」
「そ…そう…それは痩せられてよかったわね」
うむ。
全くだ。
今俺達は最終日の施療を終え、フェルド邸からの帰りの馬車の中だ。
両腕から始まり、胴体・頭部・そして片足ずつと進めていき、今日無事完了した。
初日こそ自身の消耗を見誤ったが、後の4日は問題無しだ。
【ミラの祝福】の扱いも1段上に上った気がする。
おまけに1日当たり金貨5枚の計25枚ゲットだ。
俺はダンジョンで聖貨こそ稼げているが、現金はあまり持っていなかった。
使う予定こそ無いが、お金があるのはいい事だ。
「私も今日はいろいろお話が出来たし、よかったわ」
今日はオリアナさんだけでなく、セリアーナも一緒だった。
エレナに休みを与え、学院をさぼってまでついて来たのだが、その甲斐はあったらしい。
集中していて、何か話してんなー位にしかわからなかったが、何を話していたんだろう?
「そうね。貴方も式には出るのでしょう?」
オリアナさんはともかくセリアーナも出席するのか。
同じ派閥とか言ってたし、急とは思うけどそんなこともあるんだろう。
「ええ。折角繋いだ縁ですし、不義理は出来ませんわ。後5日あるし、私もセラにお願いしようかしら」
こちらを見ながら言ってくる。
ただ、どこに使うんだろうか?
「あんま使う必要なさそうだけど、髪と肌位ならいいよ」
「そう。楽しみだわ」
◇
「そういえば、お前が懸念していたこの加護の問題は何だったの?」
「ん~?えーとね…」
さて、フェルド家の結婚式を明日に控えた夜。
ここ数日セリアーナにもスキルを使っているのだが、エルメリアがオリアナさんとお喋りをしていたように、1時間とは言え黙ってじっとしているのは退屈なのか、俺やエレナが会話相手になっていた。
何をしていたか?とか面白い事はあったか?とか他愛のないものばかりだが、今日は【ミラの祝福】について聞いてきた。
自分にスキルを使って何日も経つのに、その質問が今日出てくる辺り大物だ。
「確かに。仮に出会った当初の君が自分に使っても、痩せたりはしないだろうね」
一緒に聞いていたエレナが答える。
うむ。
確かにあの頃の俺はガリガリだった。
「そうね。少しは身が付いてきたとは言え、今もまだ痩せているけれど…自分にも使っているのよね?」
「寝癖直しにだけどね。まぁでも、使い方は何となくわかって来たよ。集中していれば大丈夫」
「そう。失敗は無いの?」
「うん。もともと失敗って言っても、日焼けの直し方とか傷跡の消し方がちょっとムラがあったりとかだったから、後から修正は出来てたんだよね」
痩身ダイエットに関しては、対象が居なかったから試せていなかったけれど、今回でコツは掴めた。
あえてバランスを崩そうとでも思わない限り、同じ時間なら大体仕上がりは一緒になる。
左右が全く同じサイズの人間なんてそうそう居ないだろうし、問題無いはずだ。
「なるほど…」
それを聞いて何か考え込んでいる。
「なんかあんの?」
「エルメリア様の事が学院でも少し話題になっていたの。明日の式でもしかしたらお前に依頼が来るかもしれないわね」
まじかー。
「それに関しては少し考えがある。おばあ様もいるし、お前は気にしなくていいわ」
「ぬ?」
もう少し詳しく聞きたいけど、話は終わりなのか目を閉じてしまった。
エレナの方を見ても、セリアーナが話さないのなら彼女も話す気が無いようで、手に持った本に目を落としている。
…変な事にはならないよな?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・16枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚