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じーさんの奥さん、つまりセリアーナの祖母でオリアナさんというご婦人がいる。
ブラムス卿からの依頼をどうするかセリアーナに相談したところ、俺を1人で初対面の貴族の下へやるのは不安だと言われた。
俺もそう思う。
かと言って、事情が事情だけに断るのは忍びないし、今後を考えると受けておきたい。
せめて期限に余裕があればセリアーナも都合をつけられたのだが…と迷っていたところ、それなら自分が行こうと現れたのがオリアナさんだ。
偉いからこそかもしれないがお貴族様も大変なようで、外はもちろん家内でも第1・第2夫人との関係や、跡取り問題、使用人の背後の派閥問題等々、中々気を抜けない。
王都のご婦人方の集まりでもそれらの愚痴がメインになるくらいよくある話らしい。
そんな中セリアーナの直属ではあっても他との繋がりを持たない俺は、気楽に接する事の出来る存在だった。
偶にお使いを頼み、そのお礼にお茶とお菓子を振舞い、ついでにダンジョンや冒険者の話を聞く。
そんな関係で、俺とオリアナさんの仲は良好だ。
「あそこの大きい木のある家の向かいがフェルド家のお屋敷よ」
隣に座るオリアナさんが馬車の窓から指をさしながら教えてくれる。
【浮き玉】も持ってきているが、今日は俺も馬車だ。
ブラムス卿が来たその夜話し合いを終え、引き受ける旨を書いた返事を持って行ったところ、是非翌日から!と言われた。
オリアナさんも同行するわけだし、せめて1日くらいは置くのがマナーらしいが…必死さに負けたのかミュラー家がお人よしなのか判断に迷う。
◇
「本日はご足労頂き誠にありがとうございます」
フェルド家の屋敷に入るとすぐにブラムス卿の妻であるエルメリアさんの部屋に通され、夫婦揃って頭を下げてくる。
まぁ、俺にではなくオリアナさんにだけども、そこは気にするところではない。
うん…まぁ…うん。
綺麗な人だとは思う。
雰囲気あるし。
ただ…膨張しているね。
もう少し早く危機感持つべきだったと思うんだ…。
「セラ、どのように進めるのですか?」
皆で席に着きオリアナさんが話を振って来る。
「そうだね…両腕、胴体、頭部、片足ずつの順で5日でやろうと思うよ」
「5日⁉もう少し早める事は出来ないのですか⁉」
まぁ、今日を入れても式まで後9日だし気持ちはわかるが…。
「痩せるってのはあまり試していないから、慎重に行きたいんだよね。失敗するよりはいいでしょ?」
「…そうですね。いえ、5日でも十分すぎます。よろしくお願いします」
「はいはい」
中々物分かりの良いおばさんだ。
今日は念の為オリアナさんについて来てもらっているが、これなら明日以降は大丈夫かもしれない。
「じゃぁ、早速だけど始めましょー。座って下さい」
懐からタイマーを出し、エルメリアさんに席に着くよう促す。
機械式でなく魔導式だがこの世界にも時計がある。
地球と同じ長さかはわからないが、1日24時間だ。
1周12時間で、2周で1日経過。
王都はもちろん大抵の領都には時計塔があり、皆それに合わせて生活をしている。
もちろん小型化も進み、超高級品ではあるが、壁掛け時計や懐中時計もある。
このタイマーはその簡易版。
といってもやっぱりお高く、金貨5枚はするらしい。
1時間かけて1周し、1周し終えるとポーンと、アラームが鳴る。
まだ爪が治っていないから行っていないが、ダンジョン探索時帰還する目安にするようにと、セリアーナがルバン達に俺への詫びに用意させたものだ。
まさか最初に使う機会がダンジョン探索ではなく、貴族の屋敷でエステもどきのタイマーとしてとは思いもしなかったが、折角だし有効活用させてもらおう。
「左腕からね。適当にお喋りでもしてて下さい」
無いと思うが、万が一にも逆に太ったりしないよう、慎重にやっていこう!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・16枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚




