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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
18章・冬のリアーナのアレコレを

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 ガチャで当たりが出た時は、普段だと何が出たのかとセリアーナはせっついて来るのだが、今回はそのような事はせずに待っている。

 セリアーナがそうするのなら俺たちも彼女に倣って大人しく待つしかないが……なんなんだろう?

 気になる!


 さて、気にはなりつつも見つめていると、光が消えて代わりに何かが現れた。

 それを両手で大事そうに受け止めるモニカ。

 あれは……羽か?

 そのまま扇に使えそうなサイズの羽だ。


「モニカ、それは何なのですか?」


 その羽を受け止めたはいいが、なにやら困惑した表情で口を閉ざしたままのモニカに、テレサがそれが何か答える様に促した。

 セリアーナの前であんまり引っ張っちゃうのもね……。


「はっ……はい。その……【緑の靴】というそうですが……羽……ですよね?」


 自分で言ってさらに訳が分からなくなったのか、モニカはより困惑の色を深めている。

 靴だと思ったら羽だった。

 地下の訓練所で俺と一緒になる事も多いし、恩恵品には見慣れているはずなのに、わけのわからない物が出たんだ。

 そりゃ、何だこれ……って思うよな。

 気持ちはよくわかるなー……俺もそうだった。

 だが。


「大丈夫ですよ。靴を思い浮かべながら手の上の羽に集中しなさい。アンクレットに形が変わりますよ」


 モニカ1人ならそのまま途方に暮れていたかもしれないが、今回はテレサもいるからな。

 どうしたらいいかのアドバイスをちゃんとしている。

 それにしても、なんか具体的だな。

 テレサだけじゃなくてセリアーナも静かだし、もしかして知ってる物なのかな?


 ともあれ、そのアドバイスを受けてモニカは目を瞑って集中している様だ。


「……お」


 手の上の羽が薄っすら光ったかと思うと、小さくなっていき、そして輪っかへと形を変えた。

 シルバー地に緑のラインが入った、お洒落なアンクレットだ。

 それを見てモニカは小さな声で「わぁ……」と驚いている。


「おめでとう。それが貴女の恩恵品ですよ」


 ◇


 初めてのガチャ&自分専用の恩恵品という事で、モニカは心ここにあらずと言った様子で舞い上がっていたが、クールダウンも兼ねてテレサが地下訓練所へと連れて行った。

 ついつい使いたくなって外の魔物とでも戦おうものなら、ちょっと彼女の実力じゃ危険だもんな。

 それよりも……だ。


「ね、セリア様」


「なに?」


 再びセリアーナの部屋に戻って来て、聖像を棚に閉まったところで、先程のモニカのガチャの際の疑問を尋ねようと思う。

 俺が名を呼ぶと、セリアーナは肩眉を上げてこちらを見た。

 何となく気が抜けたような感じがするが……セリアーナも緊張してたのかな?

 まさかね。


「【緑の靴】ってどんな物なのか知ってるの?」


「知っているわ。もちろん実物を見るのは初めてだけれど、国内でも何人か所有者はいるし、それなりに有名ね」


「ほーう……。どんな効果とかもわかるの?」


「ええ。走る速度が上がって長距離の移動でも疲労しなくなるそうよ。緑と付いているし魔力由来ね。お前の【風の衣】を使った移動と似たような感じじゃないかしら?」


 ……長距離を速く走れるようになる。

 移動手段や通信手段の乏しいこの時代なら、それは立派な特技になるだろうが……。


「……それだけ?」


 ちょっと恩恵品としては寂しくないか?


「あら? 立派なものよ?」


「それにしては、セリア様もテレサもちょっと残念そうな顔してなかった?」


 俺は見逃さなかったぞ?


「……お前は変な所は見ているのね」


 そう言うとセリアーナは溜息を一つ吐いて、話を続けた。


「速く長距離を移動出来るとはいえ、それくらい魔物でも出来るわ。1人で移動するのにはそれ等に対処できる必要があるけれど、お前はあの娘にそれが出来ると思って?」


「……ちょっと厳しいんじゃないかな?」


 どの魔物を想定しているのかはわからないが、基本的に外の魔物は群れで動いている。

 訓練だって積んでいるし、街で暮らす他の女性よりは動けるだろうけれど、遭遇したらちょっと彼女じゃ逃げる事も厳しいかもしれない。


「そうなのよね……。まあ、テレサとオーギュストが上手い使い場所を考えるかもしれないけれど……」


 そう言って「ふぅ……」とため息を一つ吐いた。


「なんか……随分気にかけるんだね?」


 説明の段階からだったし、単純に当たりが出たからってわけじゃ無い。

 やっぱり女性兵ってのはこの街にとっては育てていく貴重な存在なのかな?

 その辺のことを聞いてみたのだが……。


「確かにまだまだ女性兵は少ないし、育てていく為にもある程度の便宜を図る必要はあると思っているけれど、今回は関係無いわね。お前はあまり苦労せずに聖貨を使っているけれど……ジグハルトがいい例ね。あの男が初めて聖貨を使った時の様子を覚えているでしょう? 結果次第によっては自棄になって犯罪に走ったりする者もいるの。聖貨を10枚貯められる者がよ?」


「……それは困っちゃうね」


 実力があり過ぎても大変だけれど、運が良いだけじゃなくて相応の実力が無ければ貯める事は出来ない。

 人材という面で見れば、むしろ聖貨よりも貴重だろう。


「そう。彼女の場合は父親だからそこまで心配する事では無いけれど……、万が一の事を想定すると出来れば使う事は控えて欲しかったわね。もちろん貯めた者の立派な権利ではあるけれど、平民は大人しく換金して欲しいわ」


 心配が杞憂に終わってホッとしているのか、珍しく背もたれに寄りかかっている。

 それなりにセリアーナも緊張していたのだろう。

 ちょいと労ってやりますかね。


 後ろに回り込んで、肩に手を当てて【祈り】と【ミラの祝福】を発動した。

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】・19枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・9枚

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― 新着の感想 ―
いっそのこと伝令として鍛え上げるか?隊のなかに一人そういうやつがいれば安心だろう
[一言] 冒険者や猟師なら垂涎の恩恵品ですけど、兵士ですからねえ 集団戦では1人だけ速くて疲れ知らずでも意味が薄く、かと言って単独行動させれるほど強くないとなると… 地獄の猛特訓フラグかな?
[良い点] >変な所は見ているのね から感じる関係性 [一言] 良いモノが引けても引けなくても面倒になるので換金だけにして欲しいという切実さ!
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