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「ふあぁぁ~っぁふ」
セリアーナの部屋でゴロゴロしながら本を読んでいたら、デカい欠伸が出た。
農場に通うようになって早起きするようになったからか、といってもセリアーナに起こされる前に起きるって程度だが…、昼を過ぎると眠くなる。
前世では割と眠りは浅かったし、孤児院にいた頃も一番に起きていたのだが…【隠れ家】の安全さに危機感が薄れてしまったとかだろうか?
もしくは、じーさんに強請った布団が良かったか…。
さて、検証を進めていた【ミラの祝福】だが、この加護は、手から光が出て、その光が効果の及ぶ範囲になる。
片手より両手の方が効果があり、そして、範囲が狭くなるが直接手で触れた方がより高くなる。
効果は、髪の毛も弄れたし、エステというより美容全般だった。
髪の毛はつやつやサラサラの真っ直ぐになるし、爪もピカピカになっていた。
更に!
なんと‼
ダイエットもできるのだ!
農場で働く人間は流石に体を動かすだけあって肥満はいなかったが、年相応に少々ふくよかになっている人はいた。
その人達に加護を使っていたところ、少しだが細くなっていることに気づいた。
その時は腕に使っていて、最初は浮腫みでもとれたんだろうか?と思っていたが、試しに腹にやってみると、見事に痩せていることが分かった。
もしかしたら何かデメリットや副作用があるかもしれないから、あまり強くはかけていないが、それでもベルトの穴一つ分くらいは細くなっていた。
その検証の結果をセリアーナ達に話すと、随分真剣に聞いていた。
俺の髪の件も一目で気づいていたし、女性だけあって美容云々には興味があるのだろう。
検証をより深く行うよう言われたが、如何せん自分一人だとどうにもならないのが難点だ。
「セラ、いますか?」
「いるよー?」
どうしたもんかね?と考えていると、部屋の外から呼ぶ声がした。
俺はセリアーナ直属であって、この屋敷の使用人ではないから、手が空いている時は俺から手伝いに行くが、仕事を申し付けられることはほとんど無い。
精々冒険者ギルドへ行くことくらいだ。
わざわざこの部屋にいる俺を呼びに来たって事は何かあったんだろうか?
いそいそとドアまで行き開けた。
「どうしたの?」
「旦那様が部屋まで来て欲しいそうですよ?お客様も一緒です」
客がいるのにその場に俺を?
「わかった。すぐ行くー」
本当に何だろう?
疑問はあるが、行ってみればわかるか。
【浮き玉】に乗り部屋を出た。
◇
一気に部屋の前まで来たけれど、どうしたものか。
じーさんの客なんて貴族だろうし、言葉遣いも礼儀作法も習っていないし…とりあえず【浮き玉】から降りるか。
さて…どうしよう。
「セラか。早く入ってこい」
ドアの前で悩んでいると、部屋の中からじーさんの声がした。
「ぬぁっ⁉」
無警戒だったから、思わず変な声を出してしまった。
まぁ、入れっていうんだ。
気にせず入ろう。
部屋に入ると応接スペースに居り、じーさんの正面に客が座っている。
男性で、後ろ姿だけだがじーさんよりは若い雰囲気だ。
誰だろうか?
「よく来たな。ここへ座れ」
こちらを見て手招きをしている。
呼んだって事は紹介してくれるんだろうし、とりあえず【浮き球】を転がしながら部屋に入る。
「なんだ、降りたのか?乗ったままで構わんぞ」
そうなのか!
【浮き玉】に乗りじーさんの隣まで行き、そのまま浮いておく。
俺の席無いし、これでいいんだよな?
客の顔を見るが、40代前半くらいかな?セリアーナの親父さんのエリアスさんよりかは年上そうだ。
「これがセラだ。セラ、彼はブラムス・フェルド・ライゼルク男爵。ライゼルク領の領主でもある」
「セラです」
誰だよ…?と思わなくもないが、頭を下げ挨拶をする。
「ブラムス・フェルド・ライゼルクだ」
彼もまたこちらを見ながら挨拶を返してくる。
ふむ…まぁ、変な人じゃなさそうかな?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・16枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚