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魔王種を倒して、その取り巻きやこの場を襲っていた魔物たちも殲滅した。
後はその事を他の戦場にも喧伝して、掃討戦へ……そうするべきなんだろうけれど……。
「副長。何か言いかけていなかったか?」
沸き上がる周りと違って浮かない顔をしている俺に気付いたのか、リーダーがどうかしたのかと声をかけてきた。
「うん……まぁ、いいや。オレはこっちで魔王種を倒したって他へ伝えて来るよ。皆はまだ何が起きてもいい様に備えておいてよ」
「あ? ああ……まだ何か起きるのか?」
「さっきの最後の1頭がちょっとね? 魔王種死んだ後なのに、影響が残ってたんだよね……」
ダンジョンでの事しか知らないが、魔王種が死ねば、その影響を受けている魔物たちは強化が解けていた。
だが、先程のオオカミの場合は違ったんだよな。
ダンジョンと外の魔物との違いなのか何なのか……。
魔王種による配下への強化は、目で見れるのは俺しかいないから他の者に聞いてもわからないだろう。
「まだあるかもしれないって事か……。わかった。警戒は続けておこう」
「うん。お願い」
俺の気にしすぎで、襲撃はこれでひと段落……それが一番なんだけど、違った場合は大変だしな。
それに、本命って想定している中央がどうなってるのかも気になる。
この場はリーダーに任せて、俺はそちらへ向かうことにした。
そんな訳で、南端の戦場から隣のテレサが受け持っている場へ飛んできたわけだが……。
「テレサがいないな……」
下では戦闘が続いているものの、テレサの姿が無かった。
冒険者の数が減ったりとかはしていないし……隣に行ったのかな?
見た感じここの魔物に魔王種の影響は及んでいないし、特別これといった変化は起きていない。
魔物の群れを分断させていたテレサがいなくなっても、この戦場は問題無さそうだし、降りる必要は無いか。
なら隣だ!
◇
「…………ぬ?」
本陣がある訓練所。
その正面には一の森との間に平原が広がっている。
領都の東門も面していて、魔王種が突破を図るならここだろうと、オーギュストが直接この戦場の指揮を執ると言っていた。
彼は結構几帳面な所があるし、きっとキッチリした戦いをしているんだろうと思っていた。
「……ぐちゃぐちゃだ」
だが、上空から見る戦場は、人も魔物も入り乱れて陣形も何も無いって感じだ。
魔王種は南端の戦場で倒したはずだが……それにテレサもオーギュストの姿も見当たらない。
彼等がやられるってことは無いと思うが、本陣に移動したのかな?
「ぬぬぬ……とりあえず俺も一旦下に入るか……?」
本陣まで行ってみるのも有りだが、下は明らかに苦戦しているもんな。
「よし……まずは……あそこだ!」
たった今オオイノシシに弾き飛ばされて陣形が崩れたパーティー。
そこへ突貫だ!
「ほっ!」
突破した後に反転して追撃を入れようとしたオオイノシシ。
ガラ空きの後頭部に蹴りをぶち込んだ。
その一撃では倒せなかったが、すかさず追撃でアカメたちが止めを刺す。
ダンジョンの魔物なら俺も核を潰せば一撃で行けるんだけどな……。
オオイノシシの死体はそのままに崩されたパーティーの下へ向かった。
派手に吹っ飛んでいたが、幸い軽症な様で話は出来そうだ。
「随分崩れているけど、何があったの? 団長たちは?」
「セラさんか……」
とはいえ、中々疲弊しているため、【祈り】を発動した。
戦闘中に急に発動すると驚くかもしれないからと、使用は控えていたが……気にせずやっておくべきだったかな?
「ああ……済まない。それで、何があったかだったな……。魔王種の2匹目が出たんだ」
「うん……うん?」
やはりこっちでも出たかと頷いたが……1体は南で倒したけれど……それはこっちじゃカウントしてないよな?
ってことは、こっちの戦場で2体も出たのか?
「1匹は団長殿が討ち取ったんだが、そのすぐ後にもう1匹……さらに巨大なオオカミが現れて、団長たちもすぐ対応に向かったが一気に突破されて、あちらに抜けて行ったんだ。団長はそれを追って、テレサ様もこちらの状況に気付いたのか、合流して一緒に追っていったんだ」
と、北を指してそう言った。
どうも聞いた感じ1体はオーギュストが単独で倒した様だな。
流石と言ったところか。
だが、その彼でも仕留めそこなったっと……。
「団長たちは抜けたが、残った魔物たちは俺たちだけで倒せはしたんだが……その後さらにもう一度魔物の群れの襲撃があって……この有様だ」
「ぬぅ……」
今この戦場にいる魔物は、大型小型が入り混じっている。
突破力のある大型に、力はそこまで無いが群れで動いて小細工もしてくる小型。
さらに魔王種の影響も受けたのが混ざれば……こうなるか。
しかしどうしよう……。
魔王種を放っておくわけにはいかないが、かと言ってこの混乱しまくっている戦場も放っていくには……。
見た感じまだ前線だけで補給は追いついているし、崩壊とまでは行っていないが、それでも押されている事に違いは無いし、この状況をいつまで保てるかわからない。
「ふぬぬ……」
話を聞きながら俺がどう動くべきか、悩んでいたのだが……。
一瞬北に強い光が生まれたかと思うと、こちらにまで届いて来る爆音が連続して生まれた。
「なんだ!?」
驚いたのは目の前の彼だけじゃなくて、他の冒険者たちもだ。
そして、もちろん俺も。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・33枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・9枚