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出鼻をくじかれてしまったが、これが本命ってことにしよう。
更なる気合を込めるべく、拳法の構えのようなものをとる。
「お前…それはなんなの?」
「気合」
セリアーナの疑問の声に一言で答える。
「……そう」
呆れの色が混じっているのがわかるが、結果を見ればそれも変わるはず。
さぁ来いっ!遠距離攻撃!
「はっ」
短く息を吐き、同時に両手で聖貨を突き出す。
ドラムロールが鳴り響き、間髪容れずにストップと念じる。
さぁ、何が来るっ!
【ミラの祝福】
…?
何も出ないし恩恵品じゃない。
てことは加護だが…。
加護だよな?
「どうしたの?加護よね?」
首を傾げていると、何だったのかとセリアーナが聞いてきた。
俺いつも首傾げてる気がするな…。
「【ミラの祝福】だって。ミラって何…?」
祝福って事は神様とか精霊とかそういうのだよな?
狩りとか…戦とか…魔法の神様とかだといいな。
「ミラは美の女神よ。初めて聞くわね……その加護」
…美?
……美?
ついついペタペタ顔を触ってしまう。
「…美人になるのかな?」
「変わりは無いわね」
つい零した言葉に間髪容れず突っ込んでくる。
「だ…大丈夫。そのままでも十分可愛いよ」
フォローのつもりかエレナが慌てて言葉を繋げる。
「…ありがと」
あんま嬉しくない。
◇
『セラ、起きなさい』
【隠れ家】にセリアーナの声が響く。
俺は個室はもらっているが、魔人戦の後あちこち無理がたたったらしく数日の間熱を出していたので、念の為と、夜はセリアーナの部屋で寝ていた。
その際、寝るまでの間【隠れ家】の中にいる時間が増えた。
この世界の照明は、ランプ、魔道具であまり光量は無い。
数を揃える食堂などの広い場所ならともかく、私室等では一つ二つ程度で、夜の書き物や読書にはあまり向いていない。
一方【隠れ家】の中はダンジョンと同じように部屋全体が薄っすら光っている。
明るさは元の照明と同じくらいで、とても明るい。
結果、夜の読書に嵌ったようで、体調が戻った後もそのまま彼女の部屋に詰める事になった。
便宜上、護衛という形になっているが、エレナ共々【隠れ家】で読書に励んでいる。
それでも夜更かししないあたり自制が利いている。
むしろ俺の方が起きるのが遅いのはどうなんだろうか…?
目覚ましさえあれば俺も起きられるんだが。
「…起きた」
起きた事を報告するべく【隠れ家】から出る。
既に学院へ向かう用意を終えたセリアーナとエレナがいた。
もうそんな時間なのか。
「私達はもう行くわ。お前は好きにしていていいけれど、ダンジョンは駄目よ?」
「はいはい。行ってらっしゃい…」
こいつ本当に大丈夫か?って目で見ている。
体がついてこないだけで、頭は起きているんだ。
問題無いぞ。
「まあいいわ。寝癖も直すのよ」
「…はーい」
欠伸をしていたら返事が遅れ、もう部屋から出て行っていた。
さて。俺も顔を洗って寝癖を直すか。
【隠れ家】に戻り、洗面所でバシャバシャと顔を洗う。
ついでに濡れた手で髪を撫でつける。
前世での寝癖直しは、顔を洗うついでに頭から水を被っていた。
目覚ましにもなって丁度良かったし、ドライヤーがあったから乾かすのもそれほど手間ではなかった。
だが今は…長さもあるし髪質も違うし、結構面倒臭い。
前世はストレートだったが、天パって程ではないが、伸びてくると毛先がうねっている。
エレナが居れば魔法で乾かしてもらえるのだが、タオルでも巻くかな。
風と熱を一緒に出して居るようで、教えてもらったが全くできなかった。
俺に魔法の才能は無い。
「ふぬぬ……んんっ⁉」
スパーンと一気に真っすぐならんもんだろうか?と濡らした髪を引っ張りながら考えていたら、手と顔、そして髪が光っている。
これ…スキルか⁉
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・16枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚