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「…ふう」
セラの服を脱がし終え、一息ついた。
服を脱がそうにも、意識が無くただでさえ脱がしにくい。
その上魔物の血が固まり張り付いている。
結局ナイフで大きく切りながら脱がせていった。
もう使い物にならないが、どのみち処分するしかないし構わないだろう。
指と足から恩恵品を外し、首に下げている革の財布も取る。
また今回随分貯めたようだ。
しばらく街で大人しくさせておくのもいいかもしれない。
「お嬢様、準備が出来ました」
浴室の準備を任せていたエレナがやって来た。
服はもう脱いでいる。
「わかったわ。運んで頂戴」
セラを任せ自分も服を脱ぎ、浴室に向かう。
少々狭いが、使い勝手はいい。
「お嬢様は髪をお願いします。体は私が」
「わかったわ」
役割を分担し進めていく。
出会った当初は男の子の様な髪だったが、大分伸びてきた。
それでもまだ短いし、腰とまでは言わないが、せめて背中の半ばあたりまでは欲しい。
「それは大丈夫なのかしら?」
髪を濯いでいると、丁度エレナが洗っている右足の指が目に入った。
爪が赤黒く変色していて、洗えば落ちると思ったが落ちていない。
「爪の下に血が溜まっているようです。傷自体は治っているようですが、こればかりは時間が経つのを待つしかありませんね」
【緋蜂の針】を使うと脱げるからと、いつも裸足だったけれど、しばらくは靴を履かせた方がいいのかしら?
「終わったわ」
「こちらもです」
体が小さいからか話しながらだと洗い終わるのもすぐだ。
2人で浴室から運び出し体を拭い、更にエレナの魔法で乾かす。
先に私だけ済まさせ、着替えを取りに行く。
寝巻に使っている大きめのシャツしかないがこれでいいだろう。
着替えを持って戻るとエレナが何か考え込んでいる。
「どうしたの?」
「セラをどこで寝かせようかと思いまして…。大丈夫とは思いますが、【隠れ家】内で寝かせて何かあったら気づけませんから」
「ああ…屋敷の部屋でもいいけれど…そうね。このまま私の部屋にしましょう」
屋敷の人間を信用していないわけではないが、恩恵品を複数持っている以上、目の届く場所に置いておきたい。
「わかりました。それでは運びます」
着替えさせ、エレナがセラを抱え先に出て行く。
私は王都までの道のりでセラに何度も言われたように、部屋の明かりや水の手を確認し、後に続く。
◇
「うぐぐ……」
よく寝た。
体を起こし、ついでに伸びをする。
あちこち痛いけど…なんでだっけ?
顔を横に向けると薄布越しに日が差している。
いい天気だ。
「……っ⁉」
いやちょっと待て。
おかしいぞ?
俺は個室をもらっていても、寝る時はいつも【隠れ家】だ。
日なんか差さねぇ。
思い出してきた。
俺ダンジョンにいたんだぞ?
……どこだここ。
ベッドの上だし、寝室か?
何だっけ?あのお姫様とかが使っているやつ。
天蓋だっけ?
少なくとも平民の部屋ではなさそうだが。
「んんっ⁉」
ふと手を見ると【影の剣】が無い!
いつも指にはめているのに。
落とすなんてありえない。
「!」
バサリと布団をはねのけ足を出すと、右足にしている【緋蜂の針】も無い。
そういえば【浮き玉】も無い。
襟を引っ張り服の中を覗いてみると、財布も無い…。
「どっ…どっ…」
どうしよう!
オロオロしていると、ドアの開く音がした。
とっ…とりあえず隠れねば。
モソモソベッドから這い出て下に潜り込もうとしたが、間に合わなかった。
ベッドの下の隙間が意外と狭い。
し…尻が…!
「お前…何をしているの?」
あれ?
この声はセリアーナ?
「もう具合はいいのかな?」
エレナまでいる。
てことは、ここはセリアーナの部屋か?
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・13枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚