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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
16章・ようやくダンジョン一般開放!
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 ザーザーと雨が屋根を打ち付ける音が屋敷に響いている。

 雨季に入って3日目。

 今年も変わらぬ連日連夜の大雨……来年の春の雨季まで水不足の心配はなさそうだな。

 街も拡張工事を進めながら、同時に水路の整備もしっかり行っているため、冠水なんかもしていない。

 平和で何よりだ。

 もしも、どエライ事が起きていたら、最悪俺が出動させられていたかもしれないもんな。


 リーゼルを筆頭とした領都の文官衆に感謝の念を抱きながら、窓の外を眺めていたのだが……。


「暇ね」


 執務室のソファーに座るセリアーナが、ポツリと一言呟いた。


 セリアーナは、本来は雨季の間もアレコレ仕事の予定があったのだが、どうやら商業ギルド幹部陣の奥様連を上手い事誘導して、大幅な仕事の削減に成功していた。

 俺が聞いた分だと、冒険者ギルド前の大通りに、露店……というよりも、ちょっとした飲食が可能な屋台だな。

 その出店許可を与えたらしい。


 この街は、色々職種によって縄張りがあって、冒険者地区、商業地区、職人地区等々に分かれていて、互いが互いの領域を侵さないように気を付けている。

 だが、この度セリアーナの仲立ちで、少し緩和されたんだ。


 ダンジョンから帰還して、そこで一杯二杯ひっかけて、ついでに軽く腹にも何か入れてから本格的に街に繰り出す。

 冒険者たちからの要望にもあった酒場や食堂が遠いって問題を、少しは緩和できるだろう。


 冒険者たちは気軽に飲み食いが出来て、商業ギルドの連中は上手く客を誘導出来て、さらに酔っ払いの対策名目で冒険者地区に1番隊を出入りさせることもできる。

 そしてそして、そのためにセリアーナ自らが骨を折ったってことを押し出して、他所の商人たちの相手を商業ギルドに押し付ける……なんだかんだでウチの連中は皆得をしている。

 という訳で、予定がすっかり空いている。


 昨日一昨日は、俺と同じくらいの時間に起きていた。

 セリアーナと一緒に朝食を食べたが、中々レアな経験だ。

 その後も、普段のキチっとした恰好では無く、ラフな服を着て化粧も薄っすらとした、完全なオフ用の恰好で過ごしていた。


 だが……今日は違った。

 普段から忙しい生活に慣れて、尚且つ真面目な性格が災いしてか、だらける事が落ち着かない様で、なんか早朝からゴソゴソしていた。

 セリアーナがオフになるからって事で、南館で働く使用人にも休みを与えているし、自分で色々やっていたんだろう。


 そして、着替えや食事の用意も自分で済ませて、ノソノソ起き出した俺の用意もして、今に至る。


「セリア様、飽きるの早くない?」


 部屋には俺と2人だけだ。

 ひとり言か、あるいは俺に何かやれって事なんだろうか?


「仕方ないじゃない……」


「……なんか前も似たようなやり取りした覚えがあるね。また屋敷の中でもうろつく? 【小玉】貸そうか?」


 住んでいるとはいえ、普段は移動する箇所は限られている。

 やる事無いなら色々見回るのもいいだろう。

 この屋敷は大分広いから歩きで見て回るのは大変だが、【浮き玉】と【小玉】でなら、些細な事だ。


 だが、俺のアイディアはお気に召さない様で、不満顔のままだ。


「屋敷の中を見てもね……。そうね……」


 何かを思いついたのか、顔を上げて俺の方を見た。

 楽し気な笑みを浮かべているが……何させるんだ?


「お前、外に出て見なさい」


「……は?」


 外めっちゃ雨よ?


「なによ……嫌なの?」


「嫌に決まってんじゃん……」


 足が汚れるからって理由で、【浮き玉】から降りることすら滅多に無い俺だ。

 まぁ、靴履けよって話だが、それはまた別の問題だ。

 傘はあるが、真上から降っているだけじゃ無いし、この雨の中出かけたらびしょ濡れになるに決まっている。

 俺は濡れるのは嫌だぞ?


「あら? お前、加護があるでしょう?」


「ほ?」


 しかし、事も無げに言い放ったセリアーナの言葉に、思わず首を傾げた。


 ◇


 土砂降りの中、【浮き玉】を駆使してふよふよと漂う、手ぶらの俺。

 だが、水滴1つ体にはかかっていない。


「……いやーイケるとは思わんかったね。ってか、考えもしなかったよ」


【風の衣】……俺が持つ加護だ。

 発動したら、外部からの攻撃を弾くし、ある一定以上の速度に達したら風圧も凌いでくれる。

 だが、まさかただドバドバ降っている雨も弾いてくれるとは思いもしなかった。


 ……これって、ひょっとして俺が不快に思うかどうかとかで判断しているのかな?

 セリアーナに言われなければ多分、一生気付かなかったと思う。

 俺、雨が降ってる時は引きこもってるもんな……。


「戻ったよー。いやー……全然濡れなかったわ! びっくり」


「それは大変結構。なら、行けるわね」


 一通り南館の周りを飛び回って、セリアーナの部屋に戻ると、セリアーナはスカート姿から乗馬スタイルに着替えていた。

 まぁ、雨の中上を見るような人がいるとは思えないが、一応領主夫人が足を見せちゃいかんよね。


「あー……でも」


 ただし、問題が何も無いわけじゃ無かった。

 どうやら雨粒も攻撃判定になるようだが、風を越えてくることは無い。

 だが、なんか気になるんだよ。

【風の衣】は俺の意志にも反応するし、【浮き玉】だってそうだ。


 だからだろうか?

 ちょっと、意図せぬ変な動きをしていた。

 それに【小玉】で合わせるのって難しくないのかな?

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚

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― 新着の感想 ―
[一言] 調子にのって台風に吹き飛ばされるセラの未来が見える…
[一言] これで台風の日でも出掛けられるな
[一言] セリアさんなら普通に追従できそう
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