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「……お?」
リーゼルの執務室に繋がる廊下にやって来たのだが……いつもだとそこからはドアの前に立つ兵士が1人見える。
だが今日は、なんかいっぱいいる。
身に着けている恰好もウチのとは違うし、中央の兵か。
中にユーゼフがいるっぽいし、その護衛かな?
「セラ副長! 少々お待ちください」
近付いた俺に気付いたウチの兵士が、いつも以上にテキパキと動き中に伺いを立てた。
……いつもはもうちょいラフな態度だけど、他所の兵がいるからかな?
「あ……ども」
見ていると軽く頭を下げて来たので、俺もペコっと小さく返した。
【浮き玉】に乗って宙に浮いている俺を見ても、驚いたりしていないし怪訝な顔もしていない。
俺の事を知っている様だし、やっぱ中央騎士団の兵か。
「お待たせしました。セラ副長、中へどうぞ」
「ん。セラ、入りまーす」
まぁ、だから何だって話だ。
さっさと中に入ろう。
「……いねぇ」
部屋の中に入ったはいいが、文官達が忙しそうにしているだけで、肝心のリーゼルたちの姿は無かった
「セラ副長。領主様方はあちらだ」
部屋の中の1人が奥のドアを指した。
なるほど……向こうの応接室ね。
「ありがと…………セラでーす。入りますよー……っと」
応接室のドアの前で、中に声をかけながらコンコンとドアを叩くと、俺が開けずともすぐに開かれた。
◇
執務室の方も人はいっぱいだったが、こっちも中々どうして。
部屋の広さが違うから人数差は比べるまでも無いが、密度ならむしろこっちが上か?
ジグハルトはいない様だが、他のゴツイのが何人もいるからな……。
「やあ、セラ君。セリアの返事かな? わざわざ悪いね」
カロス経由でセリアーナの返事を受け取ると、リーゼルは封を開けて読み始めた。
小さく頷いたりしているが……何が書かれているんだろうね?
問題無いようなら後で教えてくれるか。
それよりも……部屋の中の様子だ。
リーゼルに、オーギュスト、アレク、リックといったリアーナの騎士団の幹部陣に、ルバンが揃って席についている。
そして、テーブルを挟んだその向かい側では、ユーゼフを始めとした偉そうな恰好のおっさん達がどっかりと……。
まぁ……実際偉い人たちなんだろうな。
別に険悪な雰囲気という訳では無いが、今は会話が途切れているのかみな黙り込み、なんとなく空気が重たく感じる。
迫力あり過ぎるんだよな……どいつもこいつも。
ウチの連中も黙り込んでいるし、俺はどうしたらいいんだろう……浮いてりゃいいのか?
所在なさげにふよふよしていたのだが……。
「セラ様、ご無沙汰しております。お変わりない様で安心しました」
……ユーゼフ?
なんだその気持ち悪い話し方は……。
と、ついつい嫌そうな顔をしてしまった。
「そう嫌そうな顔をするな。お前はいずれミュラー家の義娘になるのだろう? 私より家格は上だ。むしろ年頃の令嬢に対しては当然の対応だ」
と、したり顔のおっさん。
「……今のオレは平民よ?」
「細かい事を気にするな。慣れておけ」
そして、周りに同意を得る様に「なあ?」と言って大口を開けて笑っている。
それに釣られる様に他の面々も「わっはっはっ」と……。
ぬぅ……。
だが、俺の機嫌を損ねた代償に、部屋の空気を変える効果はあったらしい。
ウチ側も向こう側も表情が緩んでいる。
リックは……変わっていないな。
まぁ、いいや。
「んで? 皆は何の話してたの?」
無理に聞き出そうとは思わないが、人のことをダシに使ったんだから、それくらいは教えてもらいたい。
「ダンジョンの事だ。旦那様が探索に向かわれるだろう? その際の護衛で、リアーナの騎士団からは団長と俺とジグさん、それとお前が。外部からはルバンだな」
「うん」
「そして、見届けるために向こう側からも何人か出てもらうんだが……ユーゼフ総長を始めとした1部隊を推してきた」
「多いねっ!?」
1部隊が何人か知らないけれど、ウチは6人だ。
見届け役の方が多くなるんじゃないか?
「そんなことは無いぞ? 新規のダンジョンに若い公爵閣下が乗り込むのだ。むしろ足らんだろう?」
なるほど。
若さが関係あるかはわからないが、少人数で新規のダンジョンに潜るって言われたら、王都からやって来た身としては、「ちょっと待ってよ」と言いたくなるのもわかる。
実際はもう十分な調査をして、そんな警戒は不要だって事はわかっているが、彼等はわからないもんな。
互いの主張に折り合いがつかず、あんな雰囲気になってたのか。
「旦那様無茶苦茶強いじゃん。ジグさんもいるし何が起きても大丈夫でしょ?」
ただ、リーゼルは十分強いし、ジグハルトはもちろん護衛も強い。
加えて周囲の索敵に専念する俺もいるんだ。
たとえ未知のダンジョンだったとしても、浅瀬の軽い探索ならそんな警戒は不要だ。
それに、あまり大勢での行動は色々やり辛いから好きじゃない。
そこに、リーゼルの笑い声が入ってきた。
こっちの話がひと段落するのを待ってたのかな?
「ユーゼフ、セラ君にそこまで言われたら仕方ないだろう? 君と後は……1人か2人までだ」
「……仕方ありませんな」
そう言うと、ユーゼフは深く溜息をついて首を振った。
……このために呼ばれたのかな?
俺の答え合ってた?
◇
後で聞いたが、なんてことは無い。
俺がどう答えようと、少数にするように話を持って行くつもりだったそうだ。
普通に俺の答えを予測するなら、少数でとなるし、仮に大人数が良いと言っても、「セラを不安にさせるような実力なのか?」とかそんな感じで煽るつもりだったんだとか。
まぁ……ユーゼフ達にしても、すぐに帰還しないといけないんだし、兵を疲労させなくて済むから実は有難かったらしい。
ただ、やはり立場上自分達から切り出す事も出来ず……。
結局、俺に委ねるのが一番どこにも角が立たない方法だったそうだ。
建前は大事だもんな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




