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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
16章・ようやくダンジョン一般開放!

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530・噂が気になる人 side

 中央大陸東部のメサリア王国。

 そのさらに東の端、魔境に接する新興の公爵領リアーナ。

 そこの領都で、最近にわかに噂されるようになったことがある。


「セリアーナ様が、女神の様に煌めいていた……」と。


 出所は商業ギルドで、月の中頃に、高台の上にある領主邸で開かれたパーティーの翌日からだ。

 その噂は、パーティーに出席した者から広がり、今では街の主要なものは一度は耳にしている。


 セリアーナが街に降りてくることは滅多に無いが、それでも領都に住む者なら、新年の祝いや記念祭で姿を目にする機会はあるし、昔から東部で評判の美姫と評されていたため、彼女の美醜に関しては議論の余地は無い。

 そして、昨年二児を出産しても尚その評判に違わぬ美貌を誇っている。


 だが、今までこの様な噂が立つことは無かった。


 ◇


 領都の貴族街近くに広がる住宅地。

 整備も進み治安も良く住める者が限られた、人気の一等地だ。

 昼間は人の出入りも多いが、夜も更けた今では暗くひっそり静まり返っている。


 その一画に建つ一軒の屋敷。


 この屋敷の主は、まだここがゼルキス領でルトルと呼ばれていた頃から営まれている、老舗の商会の会頭だ。

 妻は救護院に手伝いに出たり、娘も領主の屋敷で使用人として働いていたりしていて、商会の規模に比べると街の住民への影響力は大きい。

 所謂、街の顔役の1人だ。

 とはいえ、あくまで住民への影響力のみで、商業ギルドにも顔は利くが実際に何かを動かしたりといった権限は持っておらず、領主主催のパーティーに出席できるような地位でも無い。

 件のパーティーにも勿論出席していなかった。

 商業ギルドの関係者で出席した者に直接会って確かめようにも、自分以外にもそう考えているものが多く、中々面会の約束を取り付ける事が出来ず、また、同業者に借りを作るような真似も出来れば避けたかった。


 だが、今はまだ無いが、いずれは他領の者から噂について聞かれることもあるだろう。

 その際に、他人から伝え聞いた事をそのまま伝えるだけという訳にはいかない。


「……お父様、用は何なのですか? あるから呼んだのでしょう?」


 だからこそ、男は娘を自室に呼び出すと、しばし躊躇ってはいたが娘にその噂の真偽を直接問う事にした。

 無論まともに答えが返って来るとは思っていないが……。


「街でのセリアーナ様に関する噂を知っているか?」


 その言葉に娘はうんざりしたような顔を見せる。


「お母様からも聞かれましたよ……。領主様や奥様を始め屋敷での事は漏らす事は出来ません。散々言いましたよね?」


 昨年のセリアーナが妊娠していた時期にも、同じやり取りを散々繰り返してきたが、何一つ漏らすことは無かった。


 リアーナの領主リーゼルは、王家の直系で公爵位を持つ。

 たかが使用人と言えど、その彼の下で働くのは平民の女性の勤め先としては最高位のものだ。

 相応の規律が求められるし、何より最初に叩き込まれる。

 領主一家の情報は、どれほど些細な事……たとえ街で既に知られている事だとしても、決して漏らしたりはしない。


「だろうな……。ならセラ様についてはどうだ?」


 セラ……彼女が働く本館には、基本的に執務室か地下の訓練所くらいしか寄り付かず、普段は南館にいる事が多いが、それでも多少は面識がある。


 現時点での身分はセリアーナ直属の配下であり専属の冒険者であり、そして屋敷の使用人でもあるが、セリアーナの部屋で寝泊まりし、領主の部屋にも自由に出入りしている。

 近いうちに、セリアーナの実家であるミュラー家の養子になると屋敷内でも噂され、王妃を始め多くの高位貴族との繋がりを持つ、不思議な少女だ。

 そして、その噂の根源に深くかかわっている。


 確かにセラは領主一家では無く使用人ではあるが……。


「同じです。屋敷でのことは漏らせません」


 娘ははっきりと断った。

 そして、言葉を続ける。


「何かご領主様方に伺いたいことがあるのなら、正規の手順を踏めばよろしいのですよ。たとえそれで断られたとしても、その時はその時です。お2人ともその程度で立腹される方ではありません。むしろ私を通してコソコソ探る様な事をする方が、よっぽどです」


「む……確かにな」


 男はそう呟くと、娘を下がらせた。


 娘は具体的な事こそ何も言わなかったが、それでも噂については否定をしなかったし、使用人という近い距離から領主やセリアーナについての印象も聞くことが出来た。

 自分が抜きんでる事は出来そうに無いが、それは他者もそうで、むしろ不興を買うような真似をせずに済む。

 娘を領主の屋敷に勤めに出したことは無駄では無かったと、胸をなでおろすと、ペンを取り手紙を書き始めた。


 ◇


「失礼します」


 そう言うと、盆一杯に手紙を乗せたメイドがセリアーナの部屋に入ってきた。

 彼女は一礼し、セリアーナの執務机にそれを置くと、部屋を下がろうとしたのだが……。


「待ちなさい。すぐに終わるからそこで待っていて頂戴」


 セリアーナはその場で待機するように申し付けると、エレナとテレサに手紙を開かせて、彼女達から受け取るとすぐに返事を書き始めた。

 メイドは失礼が無い程度に部屋の中に視線を廻らせると、部屋の来客用に置かれたソファーに寝転がるセラが目に入る。

 何か本を読んでいる様だが……いつもの光景だと視線を正面に戻すと、机に視線を落としていたセリアーナが顔を上げて、セラを呼んだ。

 そして、いくつか言葉を交わすと、また作業に戻った。


「待たせたわね。持って行って頂戴」


 10数通あった手紙だが、どれも大した用件では無かったようで返事を書き終えるのは10分もかからなかった。

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚

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― 新着の感想 ―
[良い点] 使用人まで徹底した統制効いてるのが良いですね! [一言] セラの情報は流してもそれは屋敷で飼ってる猫の話では?としか受けとらえてくれなさそう 領主夫人の私室に窓から自由に出入りする令嬢とか…
[良い点] メイドさんの意識の高さよ!! でも、セラさんに関しては、仮に話したところで理解してもらえそうにないというのが本音だったのかも? っと思わせられるこの貫禄よ。
[一言] おぉ……女神のよう、ときましたか。 そして徹底された情報管理。 まあ「セラ様は主人の前でもあるがままにゴロゴロしています」って言っても理解できないでしょうが
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