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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
16章・ようやくダンジョン一般開放!
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「手、貸して」


 前に座るセリアーナにそう言うと、訝しみながらも左手を伸ばしてきた。

 そして、その手のひらに棒の先端をグイっと軽く……。


「痛っ!?」


 セリアーナは思わぬ痛みに驚いたのか、自分の胸元に手を引き寄せて目を丸くしている。


「……何よ、それ?」


「マッサージ用の道具!」


 興味があるようだったので、はい、とセリアーナに手渡すと、エレナと一緒に変な物を見るような顔で弄り始めた。

 職人に直接注文出しただけあって、俺の手のサイズにぴったりだし、ヘビのマークもしっかりと入った特注品ではあるが……ただの棒だぞ?


「アレはどうしたの?」


 フィオーラは2人に加わりこそしないが、アレが何か気にはなるようだ。


 後ろを向きながらフィオーラに、なんで作ったのかも含めての説明を始めた。

 まぁ……大した理由じゃ無いんだけどね!

 2人も手を止めてこちらを見ている。


「工房で作って貰ったんだ。ちょっと前にね、セリア様がお疲れみたいだったから、寝る前にマッサージをしたことがあったんだよ。そしたらさ……」


 グッと一呼吸溜めて……。


「オレが渾身の力で背中とか腰とか押してたのに、もっと力を入れていいとか言ったんだよ!」


 力強く言い放った。

 いやー……あれは悲しかったね。

 改めて自分の力の無さと体の小ささを思い知ったよ。


 だが、どうも俺の熱い言葉は、彼女達には響かなかったらしい。


「……」


 何も言わず、セリアーナを見るフィオーラ。

 フィオーラからの視線を受けて、セリアーナは棒をエレナに渡してしばし考えこんでいたが……どうやら思い出したらしく「ああ……」と呟いた。


「…………あったわねそんな事。確か記念祭が終わった頃だったかしら?」


 寝落ちしていたのに、よく覚えているな。

 大した記憶力だわ。

 ともあれ……。


「そうそう。よく覚えてるね……。まぁ、ソレがあればもうそんな事にはならないからね! 近いうちに披露するよ!」


 俺は、ふんすっ! と鼻息荒く言い切った。


 ◇


 数日経って、秋の1月半ば。

 アレクとエレナの屋敷を訪れた。

 セリアーナの部屋からも屋根の先っぽが見えるくらいの、目と鼻の先にあるにもかかわらず、実は来るのは初めてだったりする。

 地下通路に、ここやオーギュストの屋敷に繋がる通路もあるが、別にわざわざ行かなくても領主屋敷で顔を合わせているからな……。

 よくよく考えると、知っている人の家とは言え、初めて訪れる場所に俺1人で向かうのって、この世界で初めてじゃないか?

 ちょっと緊張してきた。


 門の前には警備の兵が立っていて、俺が近づくとすぐに開けられた。

 雑談抜き……1番隊だな。

 実力というよりも規律面での精鋭を門番にだなんて……そういやリアーナ領の重鎮だもんな。

 これくらいが普通なのかな?


 ともあれ、そのまま敷地の中へ。


 高台の中腹を整地して建てただけあってあまり広さはとれず、この街の貴族の屋敷の中では平均くらいの大きさかな?

 上は3階まで、そして地下にもしっかり広がっているから、実際の広さは違うんだろうけれど、ミュラー家の王都屋敷くらいかな?

 3階部分は、街の外を監視するための施設があったりと、ちょっと面白い造りになっているそうだ。


 ちなみに、道を一本挟んだ向かいに建っているオーギュストの屋敷も似たような造りで、向こうは街を監視するようになっている。

 流石は騎士団幹部の屋敷って感じだな。


 さて、そのままドアの前まで進むと、中から開かれて使用人に出迎えられた。

 この屋敷で何人働いているのかはわからないが、迎えに男女合わせて6人……ちょっと大袈裟じゃないか?

 緊張するじゃないか……。


「……おじゃましまーす」


「いらっしゃいませ、セラ様。お待ちしておりました」


 初めて見るおっさんだが、確かエレナの親戚だったかな?

 チラっとそんな話は聞いた気がする。


「それでは、奥様のお部屋にご案内いたします」


 挨拶もそこそこに、もう1人のおばさん……もとい女性にバトンタッチした。

 そして、彼女の先導で2階にあるエレナの部屋に向かっていたのだが……。


「セラ」


「アレク!?」


 丁度2階に上がったところで、アレクが上から降りてきた。

 ラフな格好で仕事中って感じじゃ無い。

 エレナは今日は休みだが、彼もなのかな?

 アレクのスケジュールまでは把握できなかったな……。


 しかし、なんで上から来たんだろう……?

 街の外で何か起きてたのかな?


「なにかあったの?」


 アレクが対処するような事態ってのは魔物絡みだ。

 それなら、俺が飛んでった方が早いかもしれない。


 だが、そう聞く俺を見てアレクは笑っている。

 この分じゃ違うのかな?


「お前の事だから、上からくると思ったんだよ。後は俺がやるから、下がってくれ」


 どうやら、俺を待っていたらしい。

 そう言うと使用人を下がらせて、前を歩き始めた。


「いやー……いくらオレでも初めてのお家に窓からは入らないよ?」


 そんなに出入りする家は多く無いが、どれも家主からしっかり許可を取ってからにしている。

 ……なんかヴァンパイアみたいだな。


「そうだな。上の監視部屋にはいつも兵がいるから、これからはいつでもそこを使っていいぞ。ああ……地下通路もあるな……そこもだ」


 アレクは俺の言葉に笑って答えた。

 なんつーか、いつもより砕けた感じだな。

 自宅だとこんな感じなのかな?

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・13枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚

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― 新着の感想 ―
[一言] ママンのマッサージに気合を入れる幼女の図である。 (鼻息ピスピス)
[一言] >興味があるようだったので、はい、とセリアーナに手渡すと、エレナと一緒に変な物を見るような顔で弄り始めた。 >職人に直接注文出しただけあって、俺の手のサイズにぴったりだし、ヘビのマークもしっ…
[一言] 武器とかそっち系で考えていたら、まさかのマッサージ棒 多分披露したら、逆襲される気がするw
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