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メイドさんを伴い、ふよふよと親父さんの執務室に向かった。
同じ領主ではあるが、広く大勢が一度に仕事を行うリーゼルの執務室と違い、こちらはこぢんまり……と言うとちょっと違うが、親父さんが1人で仕事に専念できるような造りになっている。
ここの屋敷でも多くの文官が仕事をしているが、彼等用の部屋があってそちらで仕事をしている。
領地の成熟度の違いかな?
領主抜きでもしっかり仕事が回るようになっているんだろう。
さて、執務室前に到着したところで、案内のメイドさんは下がっていった。
あまり大したことは話さないだろうが、それでも他領の内部の話にもなるしな。
だが、何も言う前に行動するか……リアーナの方のメイドさんはもうちょい緩いかな?
もっと仕事を積み重ねる事で、成長していくのかもな。
ともかく、ドアを開けてくれてるし中に入るか。
「やあ、セラ。よく来たね」
執務室の中には親父さんと執事のリックが待っていた。
俺が風呂に入ったり着替えたりしている間に連絡を受けてはいたんだろうが……まぁ、いつも通りだな。
「ご無沙汰してまーす」
軽い口調で2人に挨拶をすると、預かってきた手紙の束をリックに渡した。
簡単なチェックを終えると、今度はリックからおやじさんへ……俺はソファーに勝手に座り、そのやり取りを見ている。
毎度の事だもんな……。
◇
「待たせたね」
「いえいえ。随分早かったですけど、もう良いんですか?」
手紙を一通り読んだのか、親父さんは机から顔を上げてこちらを見た。
時間にして10分そこら。
そこそこ数があったのに、全部読んだのかな?
「なに、内容だけ分かればいいんだよ……。さて、セラ。いくつか確認させてもらおう」
「あ、はい」
表情や口調こそ穏やかだが、目がマジだ。
一体何を聞かれるんだ?
「リアーナは、ダンジョンの魔王種討伐の際に、我らの援軍は必要ない。そう言う事だね?」
「む? そうです」
よかった……ダンジョンの事か……それなら俺もわかる事だ。
と、安心して答えたのだが、それを聞いた親父さんはリックの方を見ると……。
「どう思う?」
「恐らくは……」
「うむ」
何が「うむ」なんだろう……?
ポカンとしていると、再び俺の方を見て口を開く親父さん。
「魔王種が出現する……その情報を手にしている事は知っている。私からも流したしね。だが……確かにリアーナには個人で突出した戦闘能力を持つものを多く擁しているが、セリアーナもリーゼル殿もそれだけで討伐を確信することは無いだろう」
「はい。仮に討伐に失敗しようものなら犠牲も出ますし、戦力が下がってしまいますから……。簡単に次に……とはいかないでしょう」
「うむ。にもかかわらず、援軍は不要と……。セラ、リアーナは既に討伐を終えているね?」
「えーと……」
手紙に何が書かれていたのかはわからないが、正にその通りだ。
だが、これなんて答えりゃいいの?
要は、リアーナにはもうダンジョンが存在するって事だし、そうなるとどうやって聖貨を持って来たんだって話になる。
聖貨の輸送部隊はゼルキスを通過予定だから、彼等がまだ到達していないのはわかっているだろう……困った。
「ふむ……大方水路か何か……通常とは異なる方法で運び込んだのだろう。そういえば春に君とテレサ殿が王都に向かっていたね? その時に交渉したか……」
【隠れ家】の事は知らないから、手段はともかく……概ねバレているね……これは。
「セラの加護なら余人を排して王族とも面会が可能ですからね。お嬢様もよく考えたものです」
リックの言葉に親父さんは笑い、ついでにリックも笑っている。
セリアーナの成長を喜んでいるのかもしれないな。
だがっ!
俺は笑えない。
この状況はどうなんだ?
アワアワと狼狽えていると、親父さんはフッと笑った。
セリアーナもよくやる仕草だ……親父さんの影響かな?
「隠す様に言われていたかな? 私も詳細を聞く気は無いから狼狽えなくても良いよ。兵を引き上げるだけの確証を得られればそれでいい。どうやら問題無いようだし、他領には私から伝えておこう」
「あ、お願いします」
親父さんの言葉を聞き「ふぅ」と小さく息を漏らした。
なんだろーなー……セリアーナの様にズバッと斬り込んで来る感じでも無いし、じーさんの様にド迫力ってわけでも無いんだ。
むしろ穏やかな話しぶりだ。
それでも、滾々と理詰めで周りを囲まれていく感じで……疲れた。
親父さんとは今まであまり重要な事を話したことは無かったんだが……こんな感じなのか。
まぁ、ここは頼もしいと考えよう。
お隣さんだもんな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




