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「ん?」
休憩している皆を中心に少し大きな円を描くように哨戒をしていたのだが、この広間の入口から丁度反対側の壁際に、なんか変なのがいた。
怪談に出てくるあれ。
……クネクネだっけ?そんな感じだ。
…なんだあれ?
「アレクアレク」
異常っちゃ異常だ。
曖昧な報告しかできないが、やっておこう。
「どうした?」
「なんか変なのがいた」
「あ?」
怪訝な顔をしている。
無理もないか。
「黒いのが…こう…クネクネしてた」
【浮き玉】の上で腕だけタコ踊りの様な動きをした。
我ながらふざけているようであるが、これ以外の説明が出来ないのだから仕方ない。
「……⁉どっちにいた⁉」
「あっちの壁の方」
見かけた方向を指さし教える。
皆険しい顔をし立ち上がっているが、まずい相手なんだろうか?
「【祈り】を!キーラの後ろに入れっ‼」
「おっ…ぉぅ」
【祈り】を発動し言われた通りキーラの後ろに入る。
いつの間にかアレクは先頭に立ち【赤の盾】を展開している。
「霧よっ!」
さらにキーラが浅瀬でやって見せた加護を発動する。
さっきも冷たかったがそれ以上で凍えそうなほどだ。
「霧」と言っていたが、氷の粒の様な物が浮いている。
この流れだとルバンの魔法が来るはずだが、両腕が光っているし浅瀬よりもっと強力なのが来るんだろうか?
「赤波‼」
「わお……」
すげぇのが来た。
天井近くまでの高さの炎の波が、扇状に広がりながら敵の居た方向へ押し寄せていく。
波というよりも、もはや炎の壁だ。
熱さは覚悟していたので耐えられたが、キーラのスキル無しだと一体どうなってしまうんだろう?
「赤光‼」
さらに追撃の極太ビームだ。
キーラの肩越しに前を見ると、地面が魔法の余波でめくれあがっている。
何という人間兵器……。
「やったか?」
フラグっぽいぞ…アレク。
でもさすがにこんなん受けて生きてるわけが無いよな?
「……⁉まだだっ‼行くぞ!」
マジかっ⁉
どういう仕組みかわからないが、まだ生きているのがわかったようで、ルバンの合図とともに、アレクとミーアとの3人で駆け出して行った。
マリーダは何か魔法の準備をしている。
やる気なのか…。
「セラ」
「む?」
俺も何かした方がいいんだろうかとオロオロしているとキーラに呼び止められた。
「あなたは後ろに回って周辺の警戒をお願い。もし私たちに万が一の事が有れば撤退しギルドに知らせて頂戴」
「う…うん」
言うだけ言ってこちらの返事を待たずにキーラも先行する3人を追っていった。
万が一って…そこまでなの?
マリーダも前に走って行ってるし、俺もとりあえず言われたように周囲の警戒に当たろう。
【浮き玉】の高度を上げあたりを見渡す。
先程までは草原っぽい風景だったのに、ルバンの魔法の影響ですっかり焼け野原。
そしてその焼け野原を疾走する3人に、少し遅れて2人が続く。
もうすぐあの黒いのと接触しそうだ。
それよりも、こんな状況になる様な魔法を受けて本当に生きているんだろうか?
そう思い、黒いのがいる壁際に目をやると、少し様子が変わっていることに気づいた。
最初は何となく人型っぽいという程度だったが、すっかり人の形になっている。
そして、全身鎧姿で盾と何か棍棒の様な物を手にしている。
ゴブリンは精々そこらに転がっている岩程度だが、それよりもっと上位の妖魔なんかは棒切れだったり、あるいは冒険者の落とした武器だったりを使ったりするらしいが、ここまではっきりとした武装はしないはずだ。
死ぬどころかパワーアップしてないか?
そもそも上層に妖魔種は出ないはずだが…。
……ちょっと待てよ?
やたら強い。
本来いない所に出る。
ピンときちゃったわ。
こいつが魔人だ。
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・13枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚