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魔法の衝撃から立ち直る間もなくあっという間に上層に踏み込んでしまった。
王都はおろかゼルキスでも行った事が無かったのに、何の感慨も無い。
同行者が強すぎた。
とは言え上層だ。
浅瀬は多分1キロ四方くらいだが、この上層は王都とほぼ同じ広さらしい。
大体4キロ弱って所だ。
草原をサッカーコートの倍くらいの広さに土壁で区切っていると思えばいいんだろうか?
浅瀬は舗装されていたり土だったりしたが見通しは良かった。
だがここは、起伏も有るし所々岩が転がっていたり足元には草が生えている。
高さこそ30メートルくらいあるが、それこそ俺のように飛べなければあまり意味が無い。
気を引き締めて行こう。
「セラ!【祈り】を頼む」
フンスっ!と気合を入れているとアレクから【祈り】の注文が来た。
そっちも気合を入れて、おりゃっと発動する。
「これは?加護ですか?」
「セラの加護で、身体能力、魔力が増す。それと常時回復効果がある」
アレクが説明しているが、【祈り】は魔力も増すらしい。
如何せん俺は魔法が使えないからどれくらい影響があるのかわからないが、ルバンのアレが魔法ならエグイことになるかもしれない…。
「……魔王みたいな奴だな…痛っ⁉」
効果を聞き、思わず呟いたルバンが殴られている。
魔王。
正確には魔王種だが、別に世界支配や人類の滅亡を企む悪の大ボスってわけではない。
あくまで魔物の中に極稀に現れる特殊個体だ。
もちろん強いというのもあるがそれ以上に厄介なのがその特性で、なんでも縄張り内の魔物、獣を種族問わず強化する。
例えば1匹のオオカミ。
通常なら猟師1人で、一般的な村人でも3人もいれば倒せるが、魔王種の縄張りだとこれが違う。
その1匹で村が壊滅的ダメージを負う。
その為早急に対処する必要があるが、縄張りは山1つとかで俺の【祈り】とは規模が違い過ぎる。
魔王種を倒すまでそれは続く上に見た目ではわからないことから、討伐隊を組んでも取り逃がし、新たな場所でまた縄張りを築き、その繰り返し…魔王災と呼ばれる現象で、魔王と恐れられる所以だ。
規模こそ変わるが、魔物が多かろうが少なかろうが関係なく唐突に現れるため、同盟内はもちろん、西部諸国でも冒険者という職業が無くならない理由でもある。
そういやその魔王種をこいつら単独で倒しているんだよな…。
ダンジョンに魔王種は出ないようだが、よほどの強敵が出ても大丈夫そうだな。
「セラ?」
ぽけーっとしていたらすでに説明や準備を終えていたらしい。
「やることは今までと変わらない。セラ、同じ要領で索敵を頼む。空を飛ぶ魔物はいないはずだが一応気を付けてくれ」
「はいよ」
「よし。行こう!」
◇
「周り片付いたよ」
辺りを見回し何もいないことを確認し、下に降りルバンに報告する。
「わかった。少し休もう」
上層の探索を始めてそろそろ1時間程経つ。
やはり頻度は浅瀬より多い。
一度に遭遇する魔物の数も多いし、何より強い。
大きいオオカミっぽい群れと何度か戦ったが、連携まで使って来る。
その上途中で別の群れが合流する。
浅瀬で似たようなことはあったが、精々一斉に突っ込んでくるくらいだったが、こいつらは違う。
別の群れにもかかわらず、囮をしたり回り込もうとしたり…頭が良いのか種族の特性かはわからないが、この面子だと危なげなく倒せているが、慣れていないと危ないと思う。
「結構な数を倒したが…出ないものだな。こんなもんなのか?」
ここまで結構な数を倒してきたが、今回の目的であるオオジカとは遭遇していない。
2~3頭程度でいる事が多く、すぐ逃げようとするから大変だとは聞いていたが、そもそも出くわさないというのはどうなんだろうか?
「遭遇率に偏りが出る事はあるが…少し極端だな。魔物の数自体はいつもと変わらないが、どうする?場所を変えてみるか?」
場所を変えるかこのまま続けるかさらに奥を目指すか、話し合いが始まった。
何だかんだで走りっぱなしの戦いっぱなしだったし、一旦休憩だ。
俺はここまで浮いてるだけで、余裕があるし見張りを引き受けよう。
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・13枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚