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「おはよーございまーす」
とりあえず朝食でも食べようと、厨房へやって来た。
一応まだお客は来るから、この季節いつも着ている甚平ではなく、メイド服だ。
うむ。
最近ドレスを着せられる機会が多かったから、この楽な感じは悪く無いね。
「おう、セラか。メシでも食いに来たか?」
「そうそう。なんか軽めのものが良いな」
「すぐ作ってやるから、控え室でちょっと待ってろ」
奥から顔を出した料理長と軽い言葉のやり取りをすると、彼はすぐに用意に取りかかった。
厨房内では調理が行われているが、昨日までの忙しさは感じられない。
昼餐、晩餐と忙しかったが、今日からはもう平常通りなのかな?
厨房を後にして、すぐ側の控室に行くと、こちらには誰の姿も無かった。
「ふーむ……皆忙しいんかね?」
今が何時かわからないが、まだ昼前だろう。
普段だとこの屋敷はあまり客は来ないから、早朝から仕事を進めて、リーゼル達の公務が始まると一旦こちらに戻って来ることが多い。
そして、また午後から働き始めるのだが、ここ最近はお客も多くそのリズムが崩れていた。
厨房は平常運転だったが、こちらはまだそうじゃないみたいだな。
そんな事を考えていると、料理長が朝食を運んできた。
「あ、ありがとーございます」
「おう」
と、彼は一言だけ言うと再び厨房へと戻ろうとした。
が、それに待ったをかけて、他の皆はどうしているのかを聞くことにした。
「あ? あぁ……屋敷に宿泊されているお客様方は、ほとんどが今日お帰りになるからな。つーか、もう出発されたぞ。で、使用人達はそこの片付けだな」
「あぁ……。なるほど……。ありがとー」
「おう」
そう言うと、今度こそ部屋を出て行った。
そうか……そういえば外だけじゃなくて、この屋敷に宿泊している客もいたな。
セリアーナもいるだろうから、リーゼルんトコにでも行こうかと思っていたけど……午後にした方が良かったかな?
「……とりあえず食べるか」
朝食のメニューは、パンにベーコンエッグにスープ。そして果物。
シンプルで実によろしい。
それでは、いただきます。
◇
「おぉ、セラ殿か」
とりあえずリーゼルの執務室に顔を出そうとやって来たが、部屋の前の警備兵がすぐに俺に気付いた。
毎度のことながら足音のしない俺によく気付けるな……。
部屋の警備……とはいえ、領主様のだし、彼等も凄腕なのかな?
「おはよー。中にセリア様いる?」
「ああ、いらっしゃるぞ。……セラ殿がお越しだ」
中に声をかけると、すぐにドアが開いた。
セリアーナがいる事は確かだろうけれど……これって入って良いんだよな?
「おじゃましまーす……」
小さい声で挨拶しながら入室した。
中には、この屋敷で働くいつもの文官達に加えて、見た事の無い者達も何やら協議をしている。
他領の人達かな?
「む」
さらに、離れた席ではセリアーナがエレナやテレサに加えて、これまた見た事の無い女性達と一緒にいる。
そして、セリアーナは俺に向かって手招きをしているな……。
来いってことか。
「おはよー。セリア様」
「ええ、おはよう。珍しく早く起きたわね?」
「む? そういえば今は……10時ちょっとか……。早起きだ……」
部屋に置かれた時計を見ると、10時を少し回ったところだった。
食事も済ませて来たし、起きたのは9時半くらいかな?
「布団を剥いでも全く起きなかったから、てっきり昼まで起きてこないと思ったのだけれどね……」
膝の上を指しながら、フッとセリアーナは笑っている。
やはりセリアーナの仕業だったか……まぁ、わかってはいたさ……!
とりあえず彼女の膝の上に座り【ミラの祝福】を発動する。
そういや、昨晩マッサージを結構本気でやったけど、平気そうだし揉み返しとかは無さそうだな。
「あ、おはようございます……」
見知らぬ女性達に頭を下げる。
エレナやテレサにとってはおなじみの光景かもしれないが、誰かは知らないが彼女達にとっては、珍しいのかもしれない。
なにやら固まっている。
ってか、この人達誰なんだろう?
そもそも今何をしているんだろうか……?
なんもわからん。
「彼女達は領地の各街で文官として働いているのよ。男性の方が多いけれど、少数だけれど女性もいるわね。代官夫人との繋ぎ役は大抵彼女達が任されるわ。ウチで言えば、エレナとテレサがその枠ね」
「ほー……」
そういえば俺も他の街でそこの代官夫人と会う時には、女性が間に入る事が多かった。
まぁ、確かに女性なら女性に任せた方がいいか。
◇
午前の執務が終わり、皆で昼食となった。
場所は第1食堂。
一番デカい食堂だ。
円卓ではなく2つの長机があり、男女に分かれている。
上座は領主夫人で、俺はセリアーナのすぐ手前……向かいはエレナで、俺の隣がテレサだ。
他の女性達は、そこからさらに1列空けて座っている。
男性たちの席を見ると、あちらも同じ様にしている。
何というか……差を目に見える様に露骨に付けるんだな……。
ちなみに昼のメニューは、ラビオリのような物にスープ、サラダ、果物だ。
どこの国、どこの世界でも、練った小麦粉に何かを包んだ料理ってのはあるもんなんだな……。
ともあれ、俺は軽めにしてもらったが、中々美味であった。
そして、食事が終わりしばし談笑となったのだが、そこで話題となったのは、やはりダンジョンだ。
どうやら今この屋敷にいる客は全員領地の者で、ダンジョンの協議の為に残っていたらしい。
資源的な意味だけじゃ無くて、他領からもそれ目当てで訪れるだろうし、当然領都までの間にある各街にも滞在する。
色々決めておくべきことがあるんだろうね。
しかし、休憩時間にもそんな話をしているだなんて……仕事熱心な事だ。
昨晩のセリアーナの姿を思い出すが……これを毎日するのなら、そりゃ疲れるか。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚