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セリアーナの話は続いたが、要約するとマリエラだけじゃなくて、全員に対するある種のテストのような物だった。
王都へ出向する候補の代理人達が領都に集う中で、親父さんから俺を養女にする事をそれとなく伝えられた。
親父さん達がやったのはあくまでそれだけだが、代理人達がそれを受けてどう動くかってのを見たかったそうだ。
領地から離れた王都では、どうしても独自裁量で動く必要がある。
その際は本人だけじゃなくて、代理人にも相応の器量を求められる。
まぁ、全部が全部指示待ちってわけにもいかないもんな……。
ともかく、俺のことを聞いたはいいが、それで、じゃあどうするかってなる。
記念祭のために多少余裕をもって集まったが、ゼルキスの領都からここまで普通に行くと1週間以上かかってしまう。
それも、一からウチに来る準備を始めてとなると、もっとかかるだろう。
その頃には記念祭も終わっているし、それなら大人しくゼルキス領都で予定通り過ごす方がいいだろう。
だが、マリエラには従魔がいる。
それも、夜に強いネコのだ。
俺のことを聞くなり、自分の代理を立てて、一目散にウチを目指したんだと……。
行動力の高い事高い事……。
「あれ? でもそれじゃあ、結局彼女が最初から決まってたって事?」
従魔ありきのスケジュールのような気もするが……、それなら最初から彼女しかいないんじゃ?
「水路があるでしょう? ルバンが治める村から直通の道もひいているし、人を用意するにしても急げば数日よ」
「あぁ……あそこがあったね」
ゼルキス領都から2日ほどの距離にあるオズの街。
あそこから船を使えば確かにずっと時間を短縮できる。
「もっとも、その為には、事前にその事を調べておく必要があるし、リアーナの地で戦えるだけの者を揃える必要もある……。残念ながらそれが出来るほどの者はいなかった様ね」
「あらぁ……」
確かに、一応道は出来てはいるが、魔物も普通に出て来る。
ある程度は騎士団が巡回して間引いているが、突発的な貴族の来訪には対処できない。
自前でそれをやってもらう必要があるが、その戦力を集める時間は無かった……と。
そういう意味では彼女はちょっとズルをしていると言えるのかな?
従魔っていう札を持っているし。
それとも、それを個性として評価するのかどうか……後者かな?
ただ、彼女自身も多少は自覚があるのか、少々気まずそうな顔をしているが……まぁ、その行動力は間違いないんだ。
この世界の貴族界隈はそこを評価する傾向がある気がする。
実際、急な来訪にも拘らず、セリアーナもどことなく楽し気な表情を浮かべている。
「推薦……なんて事は出来ないけれど、私からお父様への手紙を彼女に持たせるし、恐らく決まりでしょうね。お前も顔を覚えておくといいわ」
「うん!」
正確には彼女の夫がだが、恐らくじーさんの後任になるんだろうな……。
しかしまぁ……本人じゃなくて、その代理人の器量も見られるのか……おっかないな。
◇
「あれ?」
2日目の夜。
例によってセリアーナの寝室で、ゴロゴロだべっていた時、ふと昼間の事を思い出した。
別れ際にマリエラから、夫が代官を務める街の特産品らしいアロマを頂いた。
そのアロマを焚いていたからだろうか?
「なに? 間の抜けた顔をして」
「……せめて顔じゃなくて声の方にしてよ」
確かにアホっぽい顔をしている気もするが……この際そこは置いておこう。
「それで、どうしたの?」
「うん。いやさ……結局、なんでオレに会わせようとしたの? そりゃ養女になるからだろうけれど……それだけのためにわざわざここまで来る程とは思えないんだけれど……」
まぁ、悪い印象は受けなかったけれど、俺の印象なんてどうでも良いはずだ。
それなのに、なんでこんな手間のかかる事をしたんだろう?
正直仕事が出来さえすれば、俺は誰でも良いんだけど……。
「そうね……船が使えるようになったとはいえ、それでも王都は遠いわ。ウチからも、ゼルキスからも、お前を除けば気軽に行ける者などいないの」
「まぁ……そうだね。オレだって王都に行くのはちょっと気合がいるし」
そう言うと、セリアーナは小さく頷き、さらに続けた。
「お前は東部の2つの領主一族と、親衛隊としての身分を持つ事になるわ。東部と王都、そして王家……それぞれとの繋ぎ役になるのよ。……そんな面倒臭そうな顔をしないの。昨日も言ったように、いくつかの仕事を除けば、後はこちらで引き受けてあげるのだから」
うげぇ……という顔をした俺に気付いたセリアーナが、フォローを入れてくる。
「続けるわ……。候補に入った者達は私も知っているけれど、能力も人間性も大差は無いわ。例えばマリエラは従魔を持ち、他の者は他領の領主一族に親族がいたり、あるいは王都の騎士団に伝手があったり……ね。別に誰がなってもさほど問題は無いの」
「……ほう?」
優秀な人材が沢山なのかな? と考えていると、ピっと指先をこちらに向けた。
「お前……ひょっとしてお父様に人見知りと思われているんじゃない?」
「へ?」
「基本的に王都ではウチの屋敷を使ってもらうけれど、それでもミュラー家の屋敷にも顔を出して貰うことになるわ」
「うん。……そりゃそうだよね」
テレサも実家の屋敷が王都にあるが、俺と一緒の時はミュラー家の屋敷に泊まっていた。
よほどお家同士の仲が悪いとかでもない限りは、そこらへんは割とアバウトなのかもしれないな。
「お前は、ゼルキスの頃から使用人同士は別にしても、仕事以外ではほとんど家人とも接してこなかったでしょう?」
……言われてみたら、そんな気もするけど……。
「オレその時8歳とか9歳だよ……?」
山出し……どころか頭の中は異世界出身のガキンチョが、上流階級の人間とまともに接したりできないよ……?
セリアーナも肩を竦めている。
「まあ……お前に気を使った人事なのかもしれないわね……。王都に行った際には、向こうの屋敷にも顔を出しておきなさい」
「……うん」
忖度ってやつか……?
とはいえ、セリアーナに念を押されなくても、それくらいはするつもりだしな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚




