471
俺がミュラー家本家への養女入りっていう、俺にとっては衝撃のお話があった懇親会がお開きになった後、セリアーナはやって来た女性客の中から数組と会談を行った。
その際には俺も同席し、【ミラの祝福】膝上verを同時に行っていた。
むしろ、こっちが本命みたいな気もしたが……まぁいいか。
普段の生地が厚いメイド服と違って、薄手の品の良い服だったから、皺になったりしないようにと緊張したが……恐らく効果に影響はなかっただろう。
しかし……養女か。
やっべぇな……養女とはいえお貴族様になってしまうのか……。
なんか面倒な事とか増えるのかな……?
話を聞こうにも、【ミラの祝福】を終えた時はもう夕方で、それから晩餐会になっていた。
俺は基本的に酒の出る場には出ないから、今回も部屋で留守番だ。
セリアーナはもちろん、エレナとテレサも出席している。
乳母は部屋にいるが、それでも彼女達に聞いても、何か答えづらい事とかあるかもしれないし……。
窓から外を見ると、すっかり暗くなっている。
夏とはいえ、普段だと酒場くらいしか店は開いておらず、屋敷からだと建物の窓の明かりくらいしかわからない。
だが、今日は街にはあちらこちらで明かりが灯り、賑わっている。
お祭りだもんな。
夜になって窓を閉めているから、喧騒は届かないが、きっと住民はあちらこちらで騒いでいるんだろう。
……妬ましや。
別に俺も混ざりたいとは思わないが、記念祭イコールエンドレス皿洗いの記憶が染みついている。
もうその店は無くなっているらしいが……。
外を見て少し苛ついていると、屋敷の玄関辺りに向けて馬車が集まっているのがわかった。
この屋敷に泊まる客もいるが、大半は外に宿を取っている。
そろそろお開きなのかもしれないな。
客の馬車の出入りが落ち着いた頃、セリアーナとテレサが部屋に入って来た。
「あら、まだ起きていたの?」
「あ、おかえりー」
エレナの姿が見えないな……自宅に戻ったのかな?
「貴方達はもう下がっていいわ。ご苦労様」
「はい。失礼します」
と、双子を連れて乳母達は下がらせ、テレサも俺達に挨拶をすると、自分の部屋に戻って行った。
2人になった部屋で、セリアーナが何やらこちらを見ているが……。
「お前の事だから、何か聞きたいことがあるんじゃないの?」
「ん……まぁ、聞きたいことはあるかな?」
養女に入る理由はわかったけれど、周りの反応とか色々わからないことだらけだ。
「そう。話してあげるから、向こうに行きましょうか」
そう言うと、セリアーナは寝室に向かっていった。
◇
夜会用の服から寝間着に着替えたセリアーナは、寝室のソファーに腰かけ、お茶を飲んでいる。
【隠れ家】で、彼女がわざわざ淹れたものだ。
俺の分まで……。
王都ではコルセットも使っていたが、こっちに来てからは使っていない。
手抜きってわけじゃ無くて、いつ魔物が現れるかわからない土地だから、すぐに戦いに出られる格好でって伝統らしい。
今は貴族の女性がそんな事をやる機会はほぼ無いそうだが、それが今も続いているって事は……きっと楽だからだろうな。
しかし……お茶もだが、着替えなんかも、エレナがいる時は彼女が引き受けているが、いま彼女は自分の屋敷で生活をしているため、全部セリアーナがやっている。
昔王都に馬車で行く時にも思った事だが、生活力があるねーちゃんだ。
「それで? 何を聞きたいの?」
「何がって言われたらまだ聞きたいことが纏まって無いんだけど……」
まぁ、色々だ。
セリアーナはそれを察したのか、はぁ……とため息を一つ付くと、話を始めた。
どうやら彼女の方で内容を纏めてくれるようだ。
ありがたや……。
「結局ね、お前に他所に行かれたら困る者が多いのよ。私は、お前が今の環境を気に入っている事はわかっているし、不満が無い事もわかっているわ。むしろ爵位や肩書きなんて重荷に思うって事もね」
「うん」
たまに扱われ方に一言二言言いたくなる事もあるが、それでここを出て行くかって話にはならない。
このままリセリア家の世話になるつもりだ。
そして、今日まさに悩んでいたように、出来れば身分とか面倒そうな事には関わりたくはない。
流石、よくわかっている。
「でも、そう思わない者もいるの。だから、お前や私達……もしくは王家に恩を売りたかったりする者が、そう言った話を持って来るの。あくまで恩を売る為だから、こちらにも悪い相手では無いのだけれど……」
と、そこで区切ってこちらをチラリと。
「ほうほう……まぁ、オレはここが気楽でいいかな」
「でしょうね。だから前々から実家に話を通していたの。ミュラー家なら東部全体に繋がりがあるし、結局お前は東部閥のままだし……今と環境が変わることは無いわね」
「なるほどー……」
爵位こそリセリア家の方が上だが、歴史はミュラー家の方がずっと長いし、影響力だってそうだ。
ざっくり東部の一員として、ミュラー家の繋がりの中にいる。
困った時はミュラー家、何かあった時はミュラー家。
そんな感じだ。
それが変わってしまう事を嫌がる者達がいたって事なんだろう。
「身分はミュラー家の娘になるけれど、相続なんて面倒な事には関わらないし、国内で自由に動けるようになる……その程度の認識でいいわ。今度ゼルキスに行った際にはお父様達に礼を言っておきなさい」
「はーい」
貴族になるからって、あんま難しく考える必要は無いのか。
それなら気楽なもんだな。
返事をし、そろそろいい具合に冷めたお茶に手を伸ばした。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚




