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記念祭当日の朝、リーゼルは、記念祭の開幕の挨拶に出るために準備をしていた。
俺やセリアーナ達は出席しないから、来客に備えて屋敷で待機することになるが、正装のリーゼルを見ようと彼の執務室に集まっていた。
袖やら胸に金糸で刺繍が施された青のジャケットに、黒のパンツ。
そして赤いマントと、派手な色合いながらも、美形だからかしっかり決まっている。
「旦那様……」
からかい半分に褒めそやしていると、そこへ、画家が絵を持って来たと使用人が伝えに来た。
少し前、俺が王都に行っていた頃の話だが、セリアーナやリーゼル、そして子供達も一緒の家族揃っての肖像画を描いて貰っていたそうだ。
写真の無い世界だし、折に触れての肖像画の作成は割とよくある事だ。
子供も無事生まれたし、初代リセリア家の栄えある1枚目だな。
それが仕上がったんだろう。
随分いいタイミングだが……もしかしたら今日納品の予定だったのかな?
「そうか……まだ少し時間はあるし、通してくれ。セリア達も一緒に見るかい?」
「そうね……まあ、この恰好でも問題無いでしょうし、そうするわ。エレナ、貴方もいいわね?」
セリアーナは、リーゼルの言葉に少し思案したが、絵への興味が勝ったようだ。
「はい」
この恰好でも……なんて言っているが、確かに正装には後ほど着替えるが、今でも人前に出るのに問題の無い恰好だ。
エレナは自分の屋敷からの出勤だし、バシッと決めている。
そして、テレサは言わずもがな。
俺に聞かないのもいつもの事。
ってことで、そのまま待つ事になった。
「確か姫も絵を描いて貰ったと言っていましたね」
待っている間にテレサが、そう言えばといった様子で聞いて来た。
確かあの時テレサは仕事があって、屋敷にいなかった気がする。
俺は今まで肖像画なんて描いた事が無かった。
まぁ、そりゃそうだ。
ずっと孤児院だったし、そこから抜け出してからはセリアーナの下にいるしで、そんな機会は無い。
で……だ、ダンジョンが出来て探索に勤しんでいたのだが、セリアーナからダンジョン探索にストップがかかった日があった。
休憩も挟め……と。
まぁ、それも道理だと思いその日は屋敷にいたのだが、セリアーナに言われて、何故か肖像画を描くことに……。
簡単なスケッチとかじゃなくて、領都に工房を構える画家さんが、お弟子さんを数人連れて屋敷にやって来て……と、本格的なやつだった。
青いワンピースを着て、髪もしっかり整えて……と、すっぴんでこそあったが、いつものラフなスタイルじゃなくておめかしをしてだ。
少々面倒臭くはあったが、まぁ、これも記念になるかと思い、そのまま描いて貰った。
「うんうん。なんかセリア様が1枚くらい持っておけって言うし、セリア様と一緒に描いて貰ったんだ。アレってそう言えば何時頃出来るんだろうね?」
もう3ヶ月くらい経っているのかな?
俺が普段描いている落書きと違って、本格的なやつだったし、時間がかかるのかもしれないな。
そういや、セリアーナも一緒だったのは何でだったんだろう……?
2ショットかな?
と、お喋りをしていると、執務室にゾロゾロと布に覆われた板のような物を手にした、小ざっぱりした格好の男たちが入って来た……が、先頭の男に俺は見覚えがあった。
俺の絵を描いた画家だ。
そりゃー、複数のお弟子さんを抱えるくらいだし、それなりの格はあると思ったけれど、リーゼルの執務室に呼ばれるくらいなのか……。
ひょっとして、俺が思っているより偉い人なのかな?
「本日はお時間いただき誠にありがとうございます」
その偉いおっさんが、リーゼルにペコペコと……。
まぁ、この領地では彼が間違いなくトップなんだけれど、未だにこういったやり取りは慣れないな……。
一応身分に相応しい振る舞いをしてはいるが、リーゼルはあまり偉ぶるタイプじゃ無いから、あっさりはしているが……やっぱり苦手だな。
ともあれ、彼等は完成した絵を持って来たようだ。
何枚も持って来ていたが、同じ絵をサイズを変えて複数描くようで、どれも同じ絵らしい。
そう言えばゼルキスの屋敷でも、セリアーナの部屋や親父さん、ミネアさん……玄関ホール等に同じ絵があった気がする。
まずはリーゼルが確認をしているが……果たして出来栄えは?
「ああ……良く描けているじゃないか。ご苦労だったね。セリア、君もご覧よ」
画家を労うと、セリアーナにも見るよう勧めてきた。
それに従い、絵をまじまじと鑑賞しているが……中々満足のいく出来だった様で、大きく頷いている。
「ええ……悪く無いわね」
そう言うと、セリアーナはこちらを見た。
「貴方達も御覧なさい」
◇
そんな事が今朝あった。
そして、肝心の絵は……。
1人掛けの椅子に座って、レオ君を抱くリーゼル。
2人掛けの椅子に座って、リオちゃんを抱くセリアーナ。
そして、その2人掛けのソファーで、セリアーナと同じデザインの服に同じ髪形をして彼女の隣に座る俺。
おかしいよね?
写真と違って、絵はある程度仕上がりに自由が利くが……だからと言って、何で家族の肖像画に俺が入り込んでんだって話だ。
その1枚だけじゃなくて、全部がそうで、特に一際大きな1枚は玄関ホールに飾られる。
お陰で、今日屋敷に訪れている客たちは、皆その絵を目にしている。
お披露目の子供達を見るだけじゃなくて、一々俺に話しかけるのはそれが理由だろう。
「呼んだのだからさっさと来なさい……何むくれているの?」
言葉の割には怒っていないようだが……、セリアーナは腕を組んで、ノロノロやって来た俺を睨んでいる。
セリアーナの周りにはご婦人方が控えている。
中々この集団に飛び込むには勇気がいるんだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚




