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「おい!そこのメイド!」
ギルドから出て屋敷のある貴族街へとふよふよ進んでいると、唐突に呼び止められた。
色々あってそれなりに俺の事はもう知られている。
ミュラー家の人間であることもだ。
だから、この街で俺に対しこんな風な口の利き方をする人間はいないはずなんだが…。
とは言えこの辺をうろつくメイドなんて俺くらいだろうし人違いってことはないだろう。
不思議に思いながら振り向くと、ギルドにいた子供達だった。
子供達って言っても結構デカいが…。
それでも大人に比べると背はあってもまだまだ細い。
にもかかわらず、ギルドで聞いたように体に合った装備。
改めてしっかり見てみるとよくわかる。
冒険者ギルドに出入りするようになって多くの冒険者を見てきたが、手入れこそしているだろうが、傷やへこみ、汚れはあった。
それに対して綺麗過ぎる。
素材はわからないが、皆革製の鎧を着けている。
それも傷一つない新品同然の。
なるほど特注品だ。
その割には紋章が入っていない。
貴族やその関係者なら紋章を入れてあるはずだ。
俺もメイド服の胸にミュラー家の紋章を入れてある。
てことは金のある平民。
こりゃめんどそうだ。
「話がある。ついて来い」
俺は無い。
ついてきて当然といった様子でこちらの返事を待つことなく背を向け歩いていく。
同じく俺も背を向け去って行く。
「あっ⁉おいっ待てっ‼」
俺がついて来ていないことに気づいたのか、追って来るがもう遅い。
普段は【浮き玉】で移動する際は人の頭程度の高さにしているが、そこから1メートル程さらに高度を取っている。
声から追って来ているのはわかるが、仮に追いつかれても手は届かないだろう。
無視してさっさと帰ろう。
◇
「ただいまー」
「遅かったわね」
屋敷に帰り報告にじーさんの部屋へと訪れたが、勢ぞろいだ…。
アレクもいるし何か報告しているようだが、何かあったんだろうか?
「何かあったの?」
「ふむ…いや、先にお前の報告からにしよう。依頼はできたか?」
「うん。大体2ヶ月くらいあれば揃うと思うって。はいこれ」
依頼の受領書を渡す。
内容は見ていないが、金額やら詳細が記されているんだろう。
問題無かったのだろうか、見ながら満足そうな顔で頷いている。
「あ、そうだ!」
ギルドでも言われたし、あの連中のことを報告しておかねば。
「どうした?」
「どこの国のかは知らないけど、冒険者ギルドで揉めてた子供たちがいたんだけどもね?帰りに絡まれたんだよね。相手せずにお嬢様とかに報告しておいて欲しいって言われたから無視して来たけど」
「揉めるって事は14歳未満なのかしら?どこの家かはわからないの?」
「らしいね。紋章とかつけてなかったし多分平民だと思うよ?今年はどこかの王族が来てるとかでこういうことが増えたって延々愚痴られた」
「ふむ…。確かに今年は3ヵ国から王族が来ておるな。わかった、上へ伝えておこう。各国大使から警告があるはずだ」
「私も学院で伝えておきますわ」
3ヵ国もか…。
同盟って5~6国あるんだよね?で、そこに西方諸国の王族、貴族がそれぞれの国に留学するようになっているはず。
それなのにメサリアに3ヵ国もの王族が来るのか…。
そりゃ取り入りたいって連中は気合が入るってもんだろうね。
「報告は以上か?」
「うん。戻っていいかな?」
思ったより時間かかったけどお使い終わりだ。
部屋に戻ろう。
「待ちなさい。アレクから話があるわ」
珍しいなと思いつつもアレクの方を見る。
何だろう?
「明後日だが、上層に行かないか?お前も同行して欲しいと言われているんだ」
上層⁉
「私は構わないと思うわ。お前が決めなさい」
セリアーナを見るとそう言ってきた。
マジか…王都ダンジョンの上層…。
「行きたいっ!」
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・13枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚