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「…………は?」
アレク達がボスの下まで到達しかけた瞬間、急に視界がグルグルと回転した。
別にそんな動きをしようと考えたわけでも無いし、【浮き玉】が暴走したってわけでも無いだろう。
一体何が……?
と、そこで土の感触が手と足にある事に気付いた。
俺は普段から浮いているし、手はともかく足に何か物が当たる事なんて無いはずなのに……と、考えて辺りを見ると……。
「はぁっ!?」
思わず声を上げてしまった。
俺、地面に落ちてる。
ついでに【浮き玉】からも。
「なっ……なっ……!? あわわわわ………」
訳が分からずワタワタとしていると、幸いにも【浮き玉】を見つける事が出来た。
なんてことは無い、俺のすぐ後ろに転がっていただけだった。
だが……、ダンジョンに自分の足で降りるだなんて久しぶり過ぎる。
思わずパニックになってしまったぜ……。
「姫、大丈夫ですか?」
【浮き玉】にしがみつき、浮き上がり一息つくと、テレサがちょうど駆け寄って来ていた。
「あちこち擦りむいてるけど、大丈夫。……何が起きたの?」
今いるのは……俺が元居たところから10メートルそこら離れた場所だろうか?
【琥珀の盾】は残っているが、【風の衣】が破られている。
まるで気づかなかったが……攻撃でも受けたんだろうか?
「アレを」
とテレサの指さす方を見ると……。
「……浮いとるね」
正確には飛んでいる……だが、腹に大穴を空けたボスカマキリが羽ばたき、体液を撒き散らしながら宙に浮いている。
あの腹の大穴はジグハルトの魔法か……ふらついているし、ダメージは入っているんだろうが……アレで死なないのね。
魔法がバンバン撃ち込まれているが、両腕を前に構えて防いでいる。
「羽を広げた瞬間に一気に魔力を放射したのですが、それと同時に姫が後ろに吹き飛ばされました。私やフィオーラ殿は何も感じませんでしたが、恐らく【風の衣】で受け止めたのでしょう。前衛の3人は衝撃があったようで、少々ふらついていました。今はフィオーラ殿とジグハルト殿が牽制をしています」
「なるほど……」
それが攻撃なのか何かはわからんが俺は無防備な状態でそれを受けてしまい、【風の衣】が受け止めるも破られて、結果吹っ飛んでしまったのか……?
わけわからんな……。
「身体に問題が無いようなら、我々もあちらに合流しましょう。何をしてくるのかわからない以上、離れるのは危険ですからね」
男性陣が仕留めにかかってから俺達が距離を取っていたのは、捕食こそイレギュラーだったが、ある程度行動が予測出来ていたからだ。
3人が牽制で、ジグハルトが仕留める。
そして、俺達は万が一に備えての保険みたいなものだったのだが……、その万が一が来ちゃったからな……。
「うん。行こう!」
まぁ、ここからじゃよくわからないし、ひとまず合流だな!
◇
「どう?」
合流を果たし、手前でやや手持ち無沙汰にしているアレクに状況を訊ねた。
装備を手にしてはいるが、いつもは先頭に立つ彼が暇そうにしているのはちょっと珍しいな。
「セラか。吹っ飛んでいたが、大丈夫か?」
「うん。俺の事よりもこっちはどうなんよ? なんかエライことになってるけどさ……」
どうやら彼も俺が吹っ飛ぶさまを見ていたらしい。
どんな風に吹っ飛んでいたんだろう……まぁ、気にはなるがそれは後だ。
続きを促すと、どこか困った様な顔で話し始めた。
「見ての通りだ……。あの状態でも意外と動く。速度重視の魔法でジグさんがあの場に縫い付けているからなんとかなっているがな……。回復をさせずにこのまま力尽きるのを待つかどうするかってところだな」
「あの魔力の放射がきっかけですか?」
「だろうな。幸いそこまで強力な魔物は少ないから、向こうの3人で何とかなっているが……」
と、アレクはテレサに答えながら、さらに奥を見てそう言った。
「凄いことになってるね……」
俺も向こうを見るが……まぁ……本当に。
向こうは俺が麻痺らせていた魔物達が転がっていたのだが、あの魔力の放射が気付けのような効果があったのか、動き出してしまった。
【紫の羽】の毒は、あくまで麻痺の効果を与えるだけで、実際に毒物を生み出すわけじゃ無いから、そんな事が可能なんだろう……【紫の羽】の思わぬ攻略法を発見したな。
ともあれ、魔物達が動き出したという事は、先程のオオザルの様にボスの下に集い、捕食される可能性もある。
……あそこまで損傷して回復するってのは考えたくないが、それでもその事を危惧したのだろう。
ルバンとフィオーラが魔法で纏めて狩り、その2人の弾幕を掻い潜ってきた魔物をオーギュストが狩るという布陣で、雑魚掃討を行っている。
ジグハルトはボスが自分から捕食に向かわない様に、足止めだ。
そして、アレクはボスがジグハルトに狙いを絞った際に盾として割って入る役割……と。
「こちらは何とかなっているが、向こうが少々余裕が無くなってきている。行ってくれるか?」
確かに、2人の魔法は少々雑に乱発しているように見える。
ジグハルトはまだ余裕があるように見えるし、いざとなれば彼もボスの相手をしながら雑魚退治も行うんだろうけれど……。
「わかりました。姫、良いですか?」
「うん。りょーかい!」
空いてる俺達が行く方がいいか。
「あ、アレク。弓使う?」
雑魚掃討に向かう前にふと思い立ち、アレクに髪を留めているヘアーリングを見せながら訊ねた。
万が一の盾役とは言え、遠距離攻撃が出来るならジグハルトの援護も出来るだろう。
「……いや、止めておこう。両手が塞がるから急な事態に対処できないからな……。それよりもお前が持って、隙を見つけたら援護をしてくれ」
「ふぬ……わかった! よっし、んじゃ、行こうか」
「はい」
気合いを入れ、テレサと共にボスを迂回して奥を目指す事にした。
下層に来てから結構な長丁場になったし、そろそろ終わらせたいもんだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




