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「回収する!」
へし折った鎌が地面に落ちるが、アレは放置していると危ない。
返事を待たずに、急ぎ取り付いていた腕から離れて、鎌ごと【隠れ家】に入り込んだ。
ギラギラと黒く光る鋭い鎌。
1,5メートル程の長さで、人くらい簡単に斬れてしまいそうだ。
【隠れ家】に入ってすぐのところに置いておくと、俺は大丈夫だが、後で入って来た人が危ないから、もう1つの部屋に置いておこう。
サイズに見合う重さだが、尻尾でなら引きずれる。
「……ふぅ」
【隠れ家】の中に入ると、思わず大きく息を吐いた。
ボスカマキリの行動はパターン化していたし、さほど危険は無かったが……やっぱり緊張していたんだろうな。
ちょっと顔でも洗ってお茶を飲みたい気分だ。
……あ、これか。
緊張感が途切れるってやつは。
これは確かに緩んでしまう……。
「……ふぬっ!」
ぺちん! と両頬を叩き気合を入れなおした。
まだ鎌一本。
反対側も残っているし、何より本格的なダメージはまだ与えられていないんだ。
とにかく脚を潰して、胴体なり頭部なりに打撃を叩きこまないと、話にならない。
【影の剣】や【緋蜂の針】での攻撃が有効なのはわかったし、俺も十分役に立てる。
ドアの覗き穴を覗き込むと、少し離れた位置で、カマキリの右側からアレクが【赤の盾】を背中に戻し、攻撃を仕掛けている。
今なら出ても危険は無いな。
第2ラウンドだな……行くぞ!
◇
第2ラウンド。
左腕の鎌の攻略中だ。
右腕の脅威が無くなった事で、アレクは足への攻撃に専念している。
併せて俺も右腕の時と同じく左腕に取り付いて、関節に攻撃を仕掛けているが……少しボスの行動パターンに変化が表れてきた。
今までは身体の位置の変更したりはあったが、攻撃は鎌を振るう事だけだった。
だが、その鎌が一本になったからか、体当たりや飛び上がってから押し潰そうとしてきたりと、今までとは異なる攻撃もするようになって来た。
……舐めプを止めたのかもしれない。
もっとも、ボスは硬いし重いし身体は大きいしで、確かに脅威なのかもしれないが、それもあくまで当たりさえすればの話だ。
結局すぐに対処できるようになった。
このまま一気に左の鎌も……と勢い込んで仕掛けようとしたが……。
「増援! オオザル3体!」
腕に取り付き【影の剣】を振りかぶった際に、視界の端にオオザルの姿が見えた。
相変わらず他の魔物達は麻痺して倒れているが、おサル達には効かなかったようで、こちらに向かって駆けて来ている。
強いもんな……おサル。
とはいえ、この増援はちょっと厄介だ。
ボスの対処は出来ているし、慣れて来たからか随分優位に立てている。
それでも、ただでさえ少数での戦いなんだ。
おサル相手に人数を割くわけにはいかない。
直接討伐に影響のない俺ならいけるが……俺じゃ3体はおろか1体だって相手にするのは厳しいだろう。
他のメンバーだって複数を相手取ってとなると……。
「構わん! そのまま合流させろ。纏めてやるぞ!」
どうするべきかと迷っていると、ジグハルトが声を上げた。
多少厄介になろうとも、このメンバーを分けるよりは、互いに援護が出来るように纏まって戦った方がいいんだろう。
「わかった! 迎え撃つぞ! セラ、お前はオオザルに専念してくれ! 鎌は後回しでいい」
「!? りょーかい!」
アレクの指示に答えたはいいが……どうすりゃいいんだろう。
適当に飛び回って牽制でもしておけばいいのかな?
◇
「セラ、今よっ!」
連発された魔法の爆音に交じって飛ぶ、フィオーラから俺への指示。
「ほい!」
それに従い、3体のオオザルへ突撃する。
幸い土煙で俺の姿は見えておらず、反応は鈍い。
一方俺はヘビ達の目で問題無く見えている。
「はぁっ!」
【緋蜂の針】を発動し、3体の頭部に正面から蹴りを入れていく。
オオザルの核は胸部の奥にあって、【影の剣】の長さでも何とか届きはする。
だが、その為には俺が懐に入り込む必要がある。
最終的にはそれをやる事になるかもしれないが、今はまだ攻撃を続けて弱らせる段階だ。
「おっと……!」
土煙が晴れる前に離脱をする。
オオザルたちは腕を振り回しているが、既に俺はもう間合いの外だ。
オオザルたちとの戦闘は、主に俺とフィオーラが担当している。
方法はシンプルに、フィオーラの魔法で動きを止めて、その間に俺が蹴りを入れてちょこちょこダメージを稼ぐ……だ。
そして、戦う場所はボスの左側。
少々離れてはいるが、上手くタイミングが合えばオーギュストが止めを刺しに行ける配置だ。
【風の衣】で撃ち出せば、これくらいの距離なら問題無い!
ジグハルトも一撃で決められるかもしれないが、その為には少々魔法の溜めが必要だからな……ボスとの戦闘をこなしながらだと難しいし、今彼が抜けるのも少々きつく、ここは団長様に譲ってもらおう。
「悪く無いわね。このままいきましょう」
「はいよ! ……お?」
一旦フィオーラの下に戻ったが、その俺を追ってかオオザルたちがこちらに向けて駆け出した。
今までとは違う行動だ。
「オーギュス……っ!?」
想定外ではあるがチャンスに違いは無いと、フィオーラはオーギュストの名を呼ぼうとしたが、さらに想定外の出来事が。
ボスが大きくジャンプをした。
今までもジャンプする事はあったが、それは攻撃の為だった。
だが、このジャンプは左側に向けてで、自身に攻撃をしているアレク達から距離を取り、オオザルたちと合流する為だ。
宙にいる俺達のすぐ下を通り過ぎていく。
今の隙に攻撃出来たかもしれないが、巨体が飛んでいく迫力についつい手を出し損ねてしまった。
そして、ズゥンと重量感溢れる音をボスの間に響かせながら、オオザル達の後ろに着地した。
何十メートル飛んだんだろう?
本気を出してきたと思っていたが、まだまだ力を隠していたのかもしれない。
ともあれ、これでオオザル達と合流を果たされてしまった。
俺達もアレクを先頭に陣形を組み直そうと動き始めたのだが……。
「ほ?」
何を思ったのか、ボスは残った一本の鎌を真横に振り抜き、自身の前に立つオオザルを切り裂いた。
オオザルは綺麗に腹から上下に真っ二つにされている。
なんつー切れ味……。
そして……。
「……ぇぇぇ」
上半身を鎌で引っ掛けると口元に持って行き、食い始めた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚