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お茶とお菓子を食べて、少しお喋りをしたところで休憩は終了となった。
20分位だったろうか?
思ったよりも短時間でお開きになった。
このメンバーは、この世界の通常の女性貴族とはちょっと違う。
例えばミネアさんやオリアナさんだと、この合間のお茶会がお目当てって場合も多かった。
それはお茶会の相手が他所の街や領地の人間だったりするから、同じ街で暮らす上に、普段から顔を合わせる機会が多いこのメンバーの場合とはまたちょっと事情が違ったりするかもしれないが、それでもお喋りを楽しんでいた。
別にセリアーナ達もお喋りが嫌いってことは無いんだろうが、なんというか……まずは用事を済ませようって考えなのかな?
お喋りの内容も家庭や観劇といった事では無くて、仕事の事だったし……事務的だ。
まぁ、俺もガチャを早く回したかったし、ありがたい。
「よし……! やるぞー!」
いい気分転換になったし、後半戦は勝つぜ!
◇
思えば前半戦は覚悟が足りていなかった。
10回もあるからと、気を抜いていた。
聖貨1枚で金貨20枚。
そして、金貨1枚が日本円で約10万円。
……5回分で1億円だぞ?
そりゃ外れにしたって現物は残るわけだし、【琥珀の盾】っていう当たりだって出た。
それでも1億円だぞ?
ちょっと勢いに任せて一気に稼いだから麻痺していたが、あっさり使ってしまっていい額じゃー無い。
気合いだ。
気合いを込めて祈ればもしかしたら何かに届くかもしれない……!
「……アレは何をしているのかしら?」
「いつもの事よ」
「……【祈り】まで発動していますね」
「あの光り方は【ミラの祝福】も発動しているかもしれませんね。ゲン担ぎでしょうか?」
……外野が俺の気合を解説しているが、随分声が近い気がする。
すぐ後ろにいるのかな?
まぁいい。
気合いはもう十分込めた。
やるぞ!
「ふんっ!」
跪き両手で聖貨を捧げた。
基本に則って、正式な作法だ。
ドゥロロロロ…………。
しっかりこのドラムロールも聞こう。
この音って変わったりするのかな……?
今までそんな事意識していなかったけど……今回は特に変化は無いな。
「ほっ!」
スパっと止めると何か懐かしい光景が頭の中に浮かんできた。
……これはっ!?
「ぬわっ!?」
慌てて後ろに飛び退ると誰かにぶつかってしまい、小さい悲鳴が聞こえた。
「きゃっ!?」
本当にすぐ後ろにいたのか……ってか今のはセリアーナか。
……随分可愛らしい悲鳴だったな。
「……危ないじゃない。どうしたの? 加護かしら?」
何事も無かったように俺を抱えて聞いてくる。
まぁ、大袈裟な反応の割に何も出てきていないからな。
どうしたんだろうって思うんだろう。
「あぁ……ごめんね。加護じゃなくて強化だったよ。【浮き玉】のね」
今、俺が当てたのは【浮き玉】の【強化】だ。
【強化】はここがまだルトルだった頃に【隠れ家】の分で当てた時以来……これはレアだ。
それも【浮き玉】の……!
これは大当たりじゃないか!
頭を上に向けると、セリアーナの大きく見開いた目と合った。
彼女も驚いている様だ。
「凄いじゃない!? ……でもアレがどうなるのかしらね?」
「……どうなるんだろうね?」
言われてみるとそうだ。
【隠れ家】の様に一部屋増えるとか分かりやすい変化ならいいが……【浮き玉】だからな……。
そもそもアレの限界は未だに見えてこない。
どこが変わったのかとかが果たしてわかるのだろうか……?
そもそも【強化】そのものがよくわからない代物だしな……何が強化されたんだろう?
ガチャの時は【浮き玉】から降りて、自分の足で立っている。
チラっとソファーに目をやると、いつも俺が座っている場所に鎮座する【浮き玉】が……。
「ちょっと乗ってみていいかな?」
ペチペチっと俺を抱えたままのセリアーナの腕をタップしながら彼女へそう言った。
ガチャは後4回残っているが、こっちが気になってしまって集中出来そうに無いぞ。
強化具合をすべて把握だなんて言わないが、せめてちょっと使ってどこが変化したのかくらいは知りたい。
「……そうね。危険な物でも無いし……好きになさい」
「やった! ……あのさ下ろしてよ?」
何故まだ下ろしてくれないのだろう……。
そう思いながら、彼女の腕を再度タップする。
「ああ……忘れていたわ。お前、本当に軽いわね。ちゃんと食事はとっているの? 今度から夕食は私達と一緒にしましょうか?」
「食べてるよ……?」
朝食や昼食はこっちの部屋で食べる事が多く、一緒に食べる機会は少なくても、何だかんだで彼女も俺が食事をする姿は見ている。
ただ夜は別だ。
領主様とその奥様。
お客さんや領地のお偉いさんと食事をする事も多いし、その場合はエレナやテレサが一緒になる事も多い。
お貴族様の晩餐会だ。
俺は他の使用人達とだったり、この部屋や【隠れ家】で一人で食べている。
……食べてはいるが、ちょっと量が少ないかもしれない。
美味しい事は美味しいんだが、ちょっと味付けがあまりたくさん食べたいとは思えないんだよな。
このリアーナは狩猟と農業が盛んだ。
つまり、肉と野菜、そして果物が豊富で、メニューにはそれが反映されている。
果物のソースってのがどうにもな……。
「…………まあ、いいわ」
ジーっとこちらを見てくるセリアーナから目を逸らさないでいると、彼女は何かに納得したようで、【浮き玉】の方へと歩いて行った。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】・41枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




