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上層手前に出現する魔物のリポップ時間の調査を始めて数日。
今日も今日とて、魔物を倒し、【隠れ家】内から観察を行っていた。
とりあえずこのエリアは粗方調べ切ったと思う。
ここから先のエリアも、俺だけで調査は可能だと思うが、オーガと魔獣の混成パーティーが相手だからという理由で、単独での狩りは許可が出なかったため、ここでストップだ。
まぁ、倒すだけなら十分可能だが、多分大分テンポが悪くなるし、聖貨を集めるって事だけを考えるなら、俺の場合は弱い魔物を倒す方がよっぽど効率が良い。
ここから先のエリアの調査もやっていくのかはわからないが、俺の仕事じゃなさそうだ。
「お?」
先程通路の魔物達が湧いたのを確認した。
この通路の魔物のリポップ間隔は、大体40分弱で、ホールの方は1時間強と、それぞれ時間が違う。
俺が【ダンレムの糸】を使える状態なら、通路の魔物を全滅させるのは10分もかからない。
テンポ良く倒せば、次のホールの魔物が湧く前に通過できる。
倒しても良いんだが、そのホールの先の通路も既に魔物が湧いているだろうしな……待っている間に何というか……テンションが落ち着いてしまった。
朝一ならともかく、もう昼を過ぎて大分経つ。
目につく魔物全て倒す! ってノリにはなかなかなれない。
そろそろ切り上げるか。
【隠れ家】の中を見渡し、諸々の消し忘れが無いかをチェックした。
水道……電気……モニター……全部OK!
「よし……行こう!」
各種恩恵品を発動し、アカメ達も外に出して、【隠れ家】を後にした。
◇
「おや……?」
無事浅瀬へ辿り着き、ダンジョンの出入り口を目指して上空をふよふよと進んでいると、浅瀬の中央付近に陣取って戦闘をしている4人グループが目に入った。
冒険者ギルドから選抜された冒険者達で、上からだと木が邪魔で少々見辛いが、中々手際が良い。
槍を装備した者が遠間から牽制し、斧を装備した者が止めを刺していく。
さらに弓を装備した者が、離れた所にいる魔物の群れに矢を打ち込んで釣り出している。
そして、その魔物を一手に引き受けているのが盾を持った男……アレクだ。
アレクは、上層の調査をいったん終えて、最近は2番隊の隊員達と浅瀬の奥で狩りをしている事が多かった。
浅瀬の手前は領主側の冒険者が、奥は騎士団が狩場として使われる予定になっている。
その位置で、狩りをしながら浅瀬の監視をし、何か起こった時は救援に向かう……そのための訓練だ。
「うーん……?」
奥の隅を見ると、いつも通り2番隊の隊員が狩りをしているのが微かに見えた。
アレクだけ今日はオフなのかな?
休みの日なのにダンジョンに潜るとか、仕事熱心なやっちゃ。
「お、終わった……。アレーク」
戦闘が終わり、彼等が死体の処理に移るのを確認して、下に降りて彼等の元に向かった。
俺に気付いたアレクは手を止め、こちらを見た。
「セラか。今日はもう帰りか?」
「うん。アレクはどうしたの? 騎士団の仕事みたいだけど……?」
上からだとわからなかったが、近付くと鎧の下に騎士団の制服を着ているのがわかる。
オフと思ったが、この服装をしているって事は仕事中か?
「ああ……あいつらは領都の冒険者だ」
死体の処理を行っている彼等に視線を向けてそう言った。
その視線を追って、俺も彼等を見ていると、「よう」と手を上げ挨拶をしてきたので、手を振り返した。
俺は彼等の事は知らないが、向こうは知っている様だ。
……そりゃそうか?
「上から見ていたなら気付いたかもしれないが、3人とも違う武器を使っているだろう?」
「うん。斧と槍と弓だったね」
全員が同じ武器を使う事も無いが、何だかんだその場で使いやすい武器、適した武器ってのはある。
この階層なら、取り回しの良い剣がそうだと思う。
それを考えると、全員が違う武器、それもおよそ適しているとは思えない武器を使っているのは少々疑問だ。
これがド素人とかならともかく、見た感じ腕は良かった。
そもそも冒険者ギルドから選ばれているんだし、きっと経験豊富な冒険者なんだと思う。
この武器のチョイスには何か思惑でもあるのかな?
あまり効率が良いとは思えないが……と、首を傾げる俺を見て、アレクは笑っている。
「階層の魔物や環境に適した武器を調べているんだ。面白いだろう?」
「面白いっていうか……なんでそんな事を?」
その情報が必要無いとは思わないけれど、そこら辺は冒険者の好みとかじゃないんだろうか……?
冒険者ギルドってそこまでやるの?
「俺達じゃなくて、騎士団用の情報なんだと……。領主様直々の依頼だ」
と、そこに魔物の処理を終えた槍を使っていた冒険者がやって来て、そう言った。
「騎士団用?」
「ああ、ダンジョン内で何かが起きた時は冒険者ギルドから、そのダンジョンに慣れた冒険者に依頼が出たりするもんだが、リアーナはまだ出来たばかりだろう? その場合は騎士団……特に俺達2番隊にその役目が回って来るんだ」
「ほうほう」
アレクの言葉に頷く。
冒険者にランクとかは無いが、その街の顔役の様な存在はいたりする。
リアーナにも居はするが、領地自体がまだまだ若いからな。
彼等はまだ、リアーナというよりも他所の街の有力冒険者って扱いだ。
だからこその騎士団か。
「騎士団なら装備を上からの指示で選べるだろう? だからこんな妙な依頼があるんだろうな」
「領主様直々だけあって、支払いはいいし、腕の良い盾役もついているからな」
さらに残りの2人の冒険者も苦笑いを浮かべながらやって来た。
槍はともかく、この2人の斧や弓はあまり向いていないだろうに、あまり不満は無いようだ。
依頼料だけじゃなくて、アレクも一緒だからか。
さっきもパーティーをしっかり守っていたもんな……アレク本人は肩を竦めているが、中々頼られているじゃないか。
ジグハルトも名前が通っているが、パーティーを組むならアレクの方が人気ありそうだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・60枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




