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下に降りようとする俺に、さらに言葉が続いた。
「セラ! 俺がぶち抜くから、お前は目を閉じてろ!」
「りょーかい!」
ジグハルトが魔物のいる方向に向けて手を突き出した。
接近せずにこのまま遠距離から仕留めるのか。
直視するとヤバそうなやつだな……!
目を閉じる前に念のため周囲を探るが……なんも無し!
安心して目を閉じて、下に向けて手を振ると、すぐさまジグハルトの魔法がさく裂した。
「光よ!」
目を閉じていても感じる強い光と轟音に、わかっていても身を竦ませてしまう。
相変わらず凄い威力だ。
その魔法がどこまで貫いたのかはわからないが、しばらくの間、魔法を撃った先で木が倒れる音や何かが崩れるような音がしていた。
「……ぉぉぅ」
その音が収まったのをみて、閉じていた目を開くが……大惨事だ。
【ダンレムの糸】の実験の時に、森の浅瀬を削ってしまった事があるが、それと似たようなことになっている。
……もっとひどいかな?
まぁ、火が出ていないのはいいかもしれないが……。
周囲を探ると、ちらほら見えていた魔物の群れは、今の魔法に驚いたのかどこかに行ってしまっている。
消滅するようなことは無いだろうから、ただ逃げただけなんだろうし何かのタイミングで合流して、一気に襲ってくるかもしれないから気を付けておかないとな……。
俺が上で魔法の破壊痕に少々ビビっている間も、下の面々は動いていて、なにやら木や地面を調べている。
下に降りて、何をしているのか聞いてみると。
「このダンジョンがどれだけ上と違うかを調べているのよ。貴方もダンジョンの壁を壊したことがあるそうだけれど、普通の土壁とは違ったでしょう?」
折れた木の断面を調べていたフィオーラが、顔を上げてそう言った。
「あー……」
ダンジョンの壁なんかは、見た目はただの土壁でもやたら頑丈だったりする。
壁だけじゃなくて、生えている植物や地面もそうなのかな?
確かに微かにだが魔力を感じたし……。
「王都やゼルキスでも、下層よりも下に行くと、ダンジョンの内部でも素材が採れる様になるそうですよ。もっとも、そこまで行かなくても、街で手に入るものがほとんどですから、わざわざ採って来るようなことは無いそうですが……」
「ほー……」
フィオーラの側を守っているテレサが、ちょっとした豆知識を披露してくれた。
ダンジョンの上層や中層の魔物の情報は少しは俺も知っているが、下層やそれより先のは俺にはまだまだ情報が降りてこない。
これは新情報だ……!
その後も、周囲を警戒しつつお喋りをしていると、調べ終えたのか3人がこちらにやって来た。
「お疲れ。もういいの?」
労いがてら何かわかったか聞くと、ジグハルトが手についた汚れを叩き落としながら答えてくれた。
「ああ。浅瀬は外と大差ないな……まあ、何かを植えたりしたら変わるかもしれんが……それはまた冒険者ギルドが考える事だ。俺達は先に進もう」
「セラ、上から見ていたんだろう? ここから先に繋がる様なものは見つかったか?」
アレクの問いに首を横に振る。
「まだなにも。ここ結構広いからね……木に邪魔されて、端の方が良く見えなかったんだ。魔物との戦闘は増えると思うけど、もう少し真ん中らへんまで行ったらまた何かわかるかも?」
「そうか……。よし、なら中心部を目指そう。方角はわかるか?」
「うん。入口が南側で、とりあえず北に広がってる感じだね」
軽く上から見たこの上層の様子を伝えると、アレク達は頷いた。
方針に変更はなく、そのまま中心部を目指すようだ。
「そうだな……ここから「森」の中に入るし、セラ、上からじゃなくて下で俺達と進もう。いいな?」
「りょーかい!」
そう答えると【祈り】を発動した。
さっきはジグハルトがいきなりぶっ放したから、【祈り】をかける間が無かったからな。
◇
「森」の中に入ってしばらく経つが、魔物と遭遇することは無かった。
辺りの様子を探ると、離れた所にいはしてもこちらが近づいていくと、慌てて離れていく。
先程のジグハルトの一撃がよほど衝撃的だったんだろうか?
「進むのが楽なのはいいが……これじゃあ、魔物の調査は出来ないな……」
アレク達も気にしている。
倒すだけならジグハルトが連射するだけの事だし、問題無いが……、如何せん俺達の今日の仕事は調査だ。
どんな魔物がいて、どんな習性なのか、それを調べる必要がある。
「どうする? 新規のダンジョンだからこんなものといっそ割り切って、今日は魔物の調査は諦めて、討伐と、地形の調査に専念するか?」
「そうですね……」
ジグハルトの案にしばし思案するアレク。
なんといっても新規ダンジョンだ。
俺はもちろん彼等や冒険者ギルドのお偉いさんだって、実は何が起こるかよくわかっていない。
そもそもつい最近出現したのに、しっかり成長した魔物や植物が生えている時点で、わけわかんないしな。
俺としては、今の魔物は真っ白な状態で、ただ本能に従って脅威から逃げているって説を推したい。
そして今後どんどん行動パターンがアップデートされていく……と。
考えが纏まったのか、アレクは顔を上げて口を開いた。
「わかりました、それで行きましょう。ただ、調査をするのに魔物は邪魔になりますから、倒せるところは倒していきましょう」
「おう……っと、言ってる側からだな。セラ、どうする? 次はお前がやるか?」
アレクに返事をしたジグハルトは、その途中で先にいる魔物に気付いたようだ。
そして、今度は俺にやるかと聞いて来た。
「やる!」
もちろん答えは決まっている。
少し離れた所で魔物の気配を捉えたが、今度は俺に譲ってくれるようだ。
【ダンレムの糸】がこのダンジョンで役に立つか確かめられるし、ありがたい!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚




