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「アレは強力な武器には違いないんだがな……」
ポカンとしていると、アレクが魔人の棍棒のいくつかの欠点を教えてくれた。
まずは重量面で、どうしてもその重さから攻撃手段が限られてしまう。
俺も触らせてもらった事があるが、持ち上げる事すら出来なかった。
それを片手で振り回せているだけでも十分凄いが、使いこなせているかと言うと、彼にとっては不十分だったんだろう。
次は、武器としての特徴だ。
とにかく硬い。
アレクが全力で振るっても、決して曲がることは無いのだが、その剛性の高さが問題でもある。
弾性がほとんど無いから、衝撃がもろにアレクに伝わってしまい、相応のダメージを負ってしまう。
一撃で叩き潰せるような弱いのが相手なら問題無いが、耐えられてしまう様な強敵が相手だと、そうはいかない。
そんな強敵を相手にしている最中に、自分の攻撃でダメージを受けている様では戦闘にならないと、最近では使用を控えていたそうだ。
以前倒したクマさんとの戦いでそう判断したらしい。
折角強い武器なのに、あまり持っている姿を見ないなと思っていたが……そんな理由だったのか。
「だが【強撃】があれば、その欠点をカバーできる。もっとも使いこなすには、訓練をしていく必要はあるが……。ま、それは春になってからだな……」
「冬の間も訓練所を使うなら付き合うぞ」
「それは助かります! その時は是非……」
女性陣から微笑ましいものを見る目を向けられながら、なにやらジグハルトと楽しげに冬の計画を練っているが……訓練所壊れないよな?
「んじゃ、次オレね」
どうなるのか気になるし、アレク達の計画が練り終わってからでも良かったが、中断させてもらう。
アレクのガチャは彼にとって都合の良い当たりが出たからな……あるのかどうかはわからないが、俺もその流れに乗っかるぞ。
「ほっ!」
両手に10枚聖貨を乗せて、さほど気合いを入れずに捧げた。
幸い今は恩恵品も加護も充実しているし、つい先日、まだ試してはいないが優秀な防具もゲットした。
出た当初は、今一使い道の思いつかなかった【蛇の尾】も何だかんだで、役に立っている。
むしろ日常使いできる分、大当たりと言っていいくらいだ。
【琥珀の剣】は未だ使う機会が無いが、護身用の武器だし、その機会が無い事はむしろ喜ばしい事と言えよう。
まぁ、外れでさえなければ何が出ても良いって事だ。
いや、別に外れならそれはそれで、何かを作ってもらえばいいし、もう何でも良いか!
「よっと」
さて、何が出るかな……?
頭の中で鳴り響くドラムロールを、気を楽にしてストップさせる。
ドラムロールが鳴り止み、頭に浮かんだ言葉は【足環】。
……あしわ?
なんじゃそりゃと思っていると、眼前に薄っすらと光る何かが現れた。
【足環】は恩恵品か。
「……ふむ」
眼前に浮くソレを落下する前に掴み、改めてソレが何なのか観察するが……。
「何が出たんだ?」
「大きな物では無かったわね……」
俺の手の上にある物は、細く短い……サンダルのストラップ部分の様な物だ。
留め具もあるし、名称からして多分足に巻き付けるんだろう。
「……【足環】だって」
本当に足に付ける輪っかだな……。
これだけストライクゾーンを広げておいたのに、それでも尚ボール球を投げ込んで来るか……やるじゃないか!
◇
「コレ、結局何かわからんねー……」
夕食後、セリアーナ達の警備に就いていたテレサもこちらに合流した。
その彼女の膝を枕代わりにソファーに横になりながら、【足環】を顔の上で弄っているが、一体これは何なんだろう。
皆も聞いた事が無い様だったし……。
「そうですね……開放したら形状が変化するかもしれませんし、奥様が戻るのを待つしかないでしょうね」
「ぬぅ……。しゃーない、しばらく我慢か」
出た当初は、皆であーだこーだと言っていたが、結局わからんって事に落ち着いて、話題は、アレクの訓練スケジュールの話や子供の事に移っていった。
足に付けるものだろうし、セリアーナが使う事は無さそうだが、契約は契約だしな。
使用人の報告では、セリアーナ達も儀式はとっくに終わっているそうだが、リーゼルにとっては貴重なオフだ。
夜は子供たち共々、セリアーナはこちらに戻って来るが、それまでは家族水入らずでのんびりしてもらおう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚