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「思ったより悪く無いわね」
「……ふむ」
コートの前を留めて、部屋の端にある姿見で自分の姿を見るが……何とも言い難いね。
やはりサイズがぶかぶかだからだろうか?
背伸びして大人の服を着た子供にしか見えない。
だが、セリアーナの言うように、意外と様になっているのが不思議だ。
生地が柔らかい上に芯地とかが入っていないから、型が崩れてもそんなに違和感が出ないからかな?
コートと言うよりは、ガウンとかそんな感じがしてきたな……。
「セラ様、次はこちらを」
この一着ですっかり終わったつもりになって、姿見の前で腕を回したりクルクル回ったりと色々な姿勢でポーズを取っていたが、そう言えば箱はもう一つあった。
だが、他に何かあったっけ?
これの追加パーツとかかな?
「……なにそれ?」
もう一つの箱から取り出された物を見た、最初の感想はそれだ。
くすんだグレーで幅が30センチくらいの、帯のような物が折りたたまれているが……いや、本当に何だろう?
広げたら結構な長さになりそうだけれど……コートを着た時は着付けは1人だったが、今度は待機していた女性2人も加わり、3人で広げている。
「…………なにそれ?」
1枚の帯のようだと思ったが、広げられたそれを見て違う事がわかった。
端から40センチほどのところまでは1枚のままだが、そこから先は真ん中で切り分けられている。
「構わないから始めて頂戴」
「はい。セラ様、失礼します」
セリアーナの一声によって、残念ながら俺の疑問に答える事無く、着付けが始まった。
俺の後ろに回ると、着たままのコートの上から、切り分けられていない部分を俺の腰から背中に当てて、切り分けられた部分を肩越しに前に持ってきて、胸元で交差。
それを腰の辺りから後ろに持って行き、背中側で交差し再び前面に。
そして、今度は胸元からクルクルと巻き付けていく。
今着ているコートも軽かったが、これはもっと軽く柔らかい。
もう5‐6メートル分くらい巻いているのに、全く重さを感じない。
「これで、完了です」
「まだユルユルだけど……?」
胸元からお腹まで巻き付けられているが、どこも締めたりしておらず、ちょっとでも引っ張ればすぐに解けてしまいそうだ。
それに端がまだ1メートルくらい余っているが、これで終わりなんだろうか?
「恐れ入りますが、そのまま魔力を通して下さい」
「ぬ? ……おわっ!?」
言われた通りに魔力を通してみると、ユルユルだったこの帯だか何だかわからないものが一気に締まった。
かと言ってきついわけでも無いし、ちょうどいい塩梅だ。
これは防具でもあるけれど、魔道具でもあるわけか……。
◇
巨獣リアーナ。
後付けだが、俺達が倒したサイモドキの名称だ。
元々名前は付いていなかったが、それに足る存在という事でリアーナ領と同じ名前が付いた。
この領都や主要都市の結界に使われることになるし、箔付けだ。
それに、今代では無理でも、何代か後で何かしら都合の良い伝説が生まれるかもしれないと、ちょっとセコイ思惑もあったりする。
実際、混合種の強敵で、ジグハルトが一撃で決めたとは言え、リアーナの最大戦力で挑み、それでも所々きわどいシーンもあったし、誇張とは言えないだろう。
この防具は、その時に俺が切り落とした尻尾の皮を使っている。
出来れば鎧のようにしたかったそうだが、とにかく硬く、細かいパーツに加工する事が出来なかった。
俺に使う分を除き、尻尾の皮は領地の騎士団の装備に使われるが、当初は隊のエース格の防具にする予定だったそうだが、加工がかなわず、結局既存の鎧の裏地に張り付けるだけに終わったらしい。
そして、これまた俺の分は、リーゼルが注文を出したそうだが、鎧を着けないしで悩みに悩んだ結果、そのまま巻きつける案に行きついた。
1人での着脱が可能なように魔道具化し、後から追加で入ったオオカミの毛皮と合わせる事で、ロブを始め職人達も満足いく仕上がりになったと言っていた。
「どうだいセラ君? 気に入って貰えたかな?」
「うん……凄いねこれ」
姿見の前で、魔力を通して着脱を繰り返しながらリーゼルに答える。
振り返ると既に話が終わったようで、商業ギルドの面々たちは帰り支度を始めている。
ついつい楽しくなって、巻きつけ方のアレンジに夢中になっていた。
コートの丈の調整にも使えそうだな……!
「それは良かった。無理を言った甲斐があったよ」
そうか無理をさせたのか……。
だが、それくらいの性能があると思う。
形状記憶とでも言うんだろうか?
いやー……面白い。
これは前世の技術を超えているな!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・39枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




