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夏場着ている甚平を除くと、俺の服はどれもオーダーメイドだ。
まぁ……その割には俺の趣味は考慮されておらず、ほとんどの服は、セリアーナの趣味と茶目っ気でデザインされている。
だからこそ、仕立て代はセリアーナのお財布から出ているのだが……この屋敷で何気に一番服に金がかかっているのは俺かもしれない。
どれも採寸をしっかりしている為、俺の体にぴったりで、成長期のこの身では精々ワンシーズンくらいしか着れないだろう。
モード服みたいな物だな。
それはさておき……、今袖を通したこのコート。
肩幅は10センチ以上大きいし、袖も指を伸ばしても爪の先すら覗かない。
これを作った職人が俺の寸法を知らなかったのかもしれないし、ピッタリに……といかなくても無理は無いが、俺用に作っているんだし、何となくでも情報は聞いているはずだ。
それなのにこれは……ちょっと大きすぎる。
縫製はしっかりしているから、手抜きってわけじゃ無いんだろうけれど……。
「いっ……いえ! 決してそんな訳ではありません」
俺の言葉に、後ろに立つ女性は焦ったような口調で答えた。
商業ギルドの面々も慌てている。
そんなことは無いと言いたげな顔で、リーゼル達の方を見ていた。
一方、セリアーナとリーゼルは笑い声をあげている。
随分とご機嫌のようだが……。
「セラ君、それは僕が注文を出したんだよ」
「ぬ?」
笑いが収まったのか、リーゼルが口を開いた。
そりゃ、制作の注文はリーゼルが出したんだろうけれど、サイズも含めたデザインも彼の意向が反映されているのかな?
「魔王種の素材は貴重だからね。まだまだ背が伸びるだろうし、今の君の身体に合わせてしまうと、すぐに使えなくなってしまうだろう? バランスは考えてもらったが、あの素材から作れる一番大きいサイズにしてもらったんだ」
「なるほどー……」
倒すのこそ、そんなに苦労はしなかったが、遭遇自体はとてもレアだ。
確かに、この素材をワンシーズンの使い捨てにするのはもったいなさ過ぎる。
リーゼルはちゃんとそこを考慮してくれたらしい。
「大きくなるのかしらね?」
説明を聞いて頷く俺を茶化すように、セリアーナが不吉な事を口にする。
「なるよっ!」
何てこと言うんだ、このねーちゃんは……。
ゆっくりだけれど、それでも一応育っているんだぞ?
4年で10センチちょっとくらいだけれど……。
「まぁ……でも、大きめな理由はわかったよ。手抜きじゃなかったんだね」
ごめんねと付け加えると、それを聞いた商業ギルドの面々はホッとした顔をしている。
素材が素材だし、これじゃない、気に入らない、とか言われても作り直す事も出来ないし、一応俺は領主夫人のお気に入りで、結構な我儘を言える立場と思われている。
今日も領主がいるこの場で熟睡していたしな……。
ロブは例外として、直接職人や商人と俺がメインで接することは無いから、警戒させてしまったか。
手抜きでは無いと誤解が解けたのに、後ろに立つおばさんは変わらず緊張した様子を隠せないでいる。
今もコートの説明をしているが、声が硬いままだ。
セリアーナの相手をする時の方がリラックスしているくらいじゃないか?
緊張している彼女の事は置いておくとして、このコートだ。
軽くて柔軟で頑丈。
それはあくまで服としての評価であって、それでは、防具としてはどうか?
物理防御という点では、そこそこ程度で、魔境のオオカミの魔物より少し硬い程度らしい。
十分頑丈だが、強度だけで言うなら金属の方が上だ。
だが、魔力に対しての親和性が高く、身に着けた際に魔力を通す事で強度も上がり、また魔法に対しての抵抗力も上がるんだとか。
【影の剣】ですっぱりと簡単に切り裂けたのは、その性質のせいかもしれない。
【影の剣】は強度とかお構いなしに、魔力さえ通っていたら、その魔力に潜り込んで斬る武器だからな。
より強い魔力で押し返されると無理だが、オオカミはそこまでじゃ無かった。
まぁ、その魔力との親和性という気を付ける点はあるが、それでも防具としては一級品と言えるだろう。
所詮は俺だし直撃を耐える事は無理かもしれないが、それでも掠る程度なら防げるかもしれない。
俺の防御の柔らかさを補えそうだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・39枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚