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「…それは何なの?」
浮かんでいた紐をとりあえず取り、眺めては見るものの何なのかわからず困惑する俺。
それを見てセリアーナ達が近づき覗き込んでくる。
「【緋蜂の針】だって。…紐だよね?」
紐だよな?
20センチくらいの長さで赤と黒のストライプ。
…ミサンガ?
「とりあえず開放するわ。貸しなさい」
そう言い手を出してくる。
そう言えば所有権は一応セリアーナにある事を思いだし、紐を渡す。
むう…聖貨10枚…。
受け取った【緋蜂の針】を触ったり引っ張ったりと、ひとしきり触った後、机の前から応接スペースのソファーに移り開放する。
横に座りそれを見ていると、【緋蜂の針】を持った手が光り始めた。
【緑の牙】はナイフに【赤の盾】はかっこよくなったし、これもきっと何かに変化するはず!
「……何?」
光が消え変化を終えた【緋蜂の針】を見るが…何だろうか…やっぱり紐?
よく見ると変化はある。
先にリングが付き、素材が金属になっている。
赤と黒の鎖を編み込んだような物だ。
「これは…腕に巻くのかしらね?」
長さを考えると少し長いが、ネックレスやチョーカーには少し短い。
やっぱ腕だろうか?
「いや、足だ」
どう使うんだろうね?とエレナも交え3人で悩んでいると、じーさんは何か確証があるのか断言した。
神に代わり罪を裁く【断罪の長靴】というメダリア神国の国宝にして、メダリア教の神器がある。
国家間の紛争や、王族貴族といった権力者の裁判に用いられることがあり、無罪の場合は何も起こらず、有罪の場合は激しい痛みに襲われ、命を落とす事もある。
各国が多額の献金をしていたり、布教を認めているのはこれの使用を避けるためでもあるらしい。
ちなみに使用法は、メダリア教の聖女が履き、踏みつける事らしい。
…何そのプレイ。
「昔1度だけだが見た事がある。ルゼルと帝国の貴族が揉めた際に使われた。一方に非があるとは言えん状況だったが、裁きを受けたのはルゼル側だった。そういった力があるのかと思っていたが、これがそうなら恐らく任意に発動できるのだろう」
なるほど、実際に見た事があるのならそうかもしれない。
「話には聞いたことがありますが、これがそうなのですか…?」
「発動時と形は違うがその赤と黒、そして緋蜂。間違いない」
エレナの疑問に答えているが、緋蜂…?
何かあるんだろうか?
「そういうことね…まあいいわ。セラ、足を出しなさい」
「ほい」
どういうことかわからないけど、よいしょと右足を持ち上げた。
セリアーナはその足を掴み自分の膝へ置き、足首に【緋蜂の針】を巻いた。
「お?」
大分余裕があったのが【影の剣】と同じように縮み、足首にピッタリ巻きついた。
「やはり足につけるものなのね。それじゃあ発動して頂戴」
「ぇぇぇ…」
簡単に言うけどそれが難しいんだ。
剣とか盾なら使い方は想像つくけど、何だよ緋蜂って。
教会で使われる【断罪の長靴】は踏みつけるのに使うんだよな…。
踏む。
ふむむ…。
女王様とお呼びっ!
なんてね…。
「うぉっ⁉」
巻きついた足首に意識を集中しつつも、アホな事考えていたらまさかのビンゴだ。
サンダルを脱ぎ裸足だったのが、右足だけ膝まである赤いロングブーツになっている。
なるほど…長靴だ。
一見虫の殻を思わせる光沢のある硬い材質に見えるが、試しにピコピコ足首を動かしてみると、普通の柔らかい革製のブーツの様に動かせた。
セリアーナの膝から足を下ろし少し歩いてみるが、ヒールも高くなく中々歩きやすい。
うん。
いいブーツじゃないか。
はて?
そういえば赤はブーツとして、残りの黒はどこ行った?
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・9枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚