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ヘビたちの先導で目を閉じたままでも順調に通路を進み、訓練所のドアが見えるところまでやって来た。
ヘビたちとの視界の共有は、目を閉じてゆっくり移動、といった条件は付くが、3匹同時の共有も可能だった。
あまり速く移動すると、3匹の視界が混ざってしまい、わけが分からなくなるが、慣れればいけそうな気がする。
……俺次第か。
「ん?」
ドアのすぐ手前まで行くと、中からドアが開けられた。
俺が近づいて来たことに中の誰かが気付いたんだろう。
訓練所にいて、こういう器用な真似ができるのは……オーギュストかな?
「セラ殿……それは新しい遊びかなにかか?」
この声はやはりオーギュストか。
ヘビたちを伸ばしたまま訓練所の中に入ると、その姿を見たであろう彼が、そう言ってきた。
「ちがっ!? ……ちが……」
違わない気がしてきたな。
今やっているのはほとんど遊びみたいなもんだし……。
「んっんん……。団長は訓練?」
目を開けると、木剣を手にした、動きやすそうな恰好のオーギュストの姿が目に入った。
ついでに訓練所内に目をやると、疲れ果てて座り込んでいる乳母の夫たちの姿もある。
離れていても肩で息をしているのがわかるし、大分絞られたんだろう。
その割には、オーギュストは全く汗をかいていない。
……力の差か。
「ああ。彼等に少しな……。私は切り上げるが、セラ嬢はどうする? 下に用事があったようだが……」
「用事が終わって、オレも帰るところだよ」
「ふむ……。リーゼル様が君に少し話があるのだが、執務室まで来てもらえるか?」
口元に手を当て少し考えたかと思うと、そう言ってきた。
リーゼルの用事か……。
これまでも何回かあったが、大体お使いだった。
とは言え、今は外は雨が降っているし、あまり外に出るのに適した気候でも無い。
何だろうか……?
「うん。りょーかい」
まぁ、行けばわかるか。
頼み事にしても変な事は言ってこないだろう。
◇
オーギュストは訓練所内に残る者達に二言三言指示を出し、そのまま一緒に執務室に向かう事になった。
……仲が悪いわけじゃ無いが、屋敷にいる時は大体リーゼルの側に控えているから、二人だけになるってのは無いんだよな。
屋敷で顔を合わせると挨拶くらいはするが、未だにプライベートな会話をした事は数える程度で、今も俺の少し前を歩いているが……無言だ。
背中とか蹴ったら怒るかな?
「どうかしたか?」
背中を見ていた事に気付いたのかな?
いい勘してやがる……。
「背中蹴ったら怒るかな? って思って」
そのまま言うのもどうかと思うが、会話のきっかけにはなるかな?
無言で歩き続けるってのもどうにもな……。
「……怒りはしないが止めてくれ」
「そりゃ残念……。ね、団長。旦那さん達の事どう思う?」
「む? 訓練所の彼等の事か?」
「そうそう。あの人達はこのまま騎士団で働くことになるんでしょう?」
「その口振りだと、アレクシオが何か言ったかな? そうだな……私は大分厳しいものがあると思う」
……アレクと一緒のこと言ってるな。
そんなにひどいのかな?
「少々厳しめの扱いだが何とかやり遂げてはいたし、根気はあるのだろう。街の警備隊だけなら充分務まるだろうが……やはり奥方の立場を考えると、それだけでは釣り合わないだろう」
街の警備隊と言っても街の中だけじゃなくて、街の周囲の見回りもする。
この街の場合は、魔物がよく姿を見せる事、その魔物が通常のより強い事が問題だ。
やっぱ彼等じゃ厳しいのかな?
「今度屋敷の警備に犬を導入するから、いっそ犬と組ませることを前提にでも……。ああ、君が本部に行っていたのはその為か? 随分珍しいことがあるものだと思っていたが……」
「そうだよ。で、サインして来たから、今日にでも持ってくるんじゃないかな?」
「そうか、それは好都合だな。その時にでも提案してみるか……」
犬とセット……。
ゼルキスの屋敷でも庭に犬を放っていたが、あんな感じになるんだろうか?
そうなると、夜こっそり出て行く時とか吠えられそうで気を使うことになりそうだな。
今のうちに俺には吠えないようにとか仕込めないかな……?
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