377
屋敷に戻ると、少々早いが風呂に入ることにした。
今日は戦闘は行わなかったが、あの拠点も含めてずっと森にいたから、森の匂いが服や髪に移っていた。
別に嫌な臭いってわけじゃ無いんだけどね……大分髪も伸びてきたし、何か気になるんだよ。
まぁ、清潔なのは良い事だ。
しっかり風呂で温まった後は、セリアーナの部屋に向かった。
◇
「セラ、明日は屋敷にいなさい」
お茶を飲みながら、部屋でテレサにマニキュアを塗られていると、セリアーナが俺に向かいそう言って来た。
「……そりゃ別にいいけれど、なにかあんの?」
どこかにお使いを頼まれる事はあっても、屋敷にいろってのは初めてじゃないか?
何の用だろうか?
「明日、セリア様と私の子達の乳母になる女性達が来るんだよ。少し早いけれど、あまり外を移動するのに適した季節じゃないからね。使用人棟の増設が完了するまでの間は、女性は屋敷で生活するから、君も顔を見せておこうね」
最近、俺と同じくセリアと呼ぶよう言われたエレナが、何の用かを説明する。
「あ、もう誰にするか決めたんだね……」
てっきり候補を何人か選んで面接でもするのかと思っていたが、違うのか。
「ここまで呼び寄せておいて、追い返すのも悪いでしょう? 3人雇うけれどそのうち2人は知っている者達だし、後の一人も推薦人がしっかり調査しているわ。後は母乳さえ出て最低限の仕事が出来れば問題無いの」
「へー……」
なんとも極端な言い方だ。
まぁ、敵味方の判断はセリアーナが調べられるし、今彼女が言ったように母乳が出るのが一番の仕事だ。
そこがクリア出来ていれば、後はあまりこだわらなくてもいいのか……。
セリアーナが知っている人も雇うみたいだし、そこまで大袈裟な事じゃないのかもしれないな。
◇
顔合わせは特に何事もなく終わった。
本館の談話室で、リーゼルも交えて軽い挨拶をしただけだ。
彼等は今、使用人に屋敷の案内をされているが、屋敷の広さに驚いているだろう。
エレナが雇う乳母は、彼女の遠縁にあたる女性で、夫婦ともにゼルキス領出身。
セリアーナの方は、一組は夫の方がミュラー家の分家で、もう一組は夫婦どちらとも血縁関係は無いけれど、アリオスの街出身で代官からの推薦。
3組のうち2組は、幼いが上の子もいて子育ての経験もあるそうだ。
3組ともゼルキス領出身だし、セリアーナやミュラー家の事をよく知っている様だったし、問題は無いだろう。
もっとも、知っているからといって、親しいわけじゃ無いから、リーゼルとの2ショットに随分緊張しているようだったが……。
「随分緊張してたね。可哀そうに……」
顔合わせには赤ん坊も含めて子供達も同席していたのだが、子供達は親の緊張が移ったのか、随分と縮こまっていた。
まぁ、2–3歳くらいだったし、親があれだけ緊張していたら無理も無いか。
「お前のソレも理由じゃない?」
セリアーナの視線は俺の頭の上や尻を指している。
「……セリア様が出しとけって言ったんでしょ」
俺は【妖精の瞳】とヘビ達を出して、さらに【蛇の尾】を発動した状態で【浮き玉】に乗っている。
【緋蜂の針】は発動していないが、ほとんどフルセットだ。
俺だってこんなのいきなり見たらビビるわ。
「どうせそのうち目にするのだし、それなら最初から見せておいた方がいいでしょう?」
と、クックックと笑っている。
そう言えば、最近は他人と会う機会が無かったから鳴りを潜めていたが、このねーちゃん、結構イイ性格しているんだよな。
「まあ、あの子供達も最初に会った時のお前くらい太々しい態度をとれたのなら、取り立ててもよかったけれど……」
あんな幼いうちから、もうそんな事を見ているのか……。
「おや? セラ君とはそんな出会いだったのかい?」
「ええ。言う事に従ってはいたけれど、こちらを利用してやろうという考えが透けていたわね。もっとも敵対する気は無い様だったから、そのままにしていたわ」
セリアーナはリーゼルと楽しそうに笑っている。
そう言えば出会った時はそんな感じだった気がするな……。
いきなり【隠れ家】の存在に気付かれて、焦っていたし、いざとなれば逃げればいいとか考えていたんだと思う。
バレバレだったかぁー……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




