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「セラ、アンデッドの話が落ち着くまでダンジョンは控えなさい。お前に非が無いのはわかるけれどこんなことが何度も有っては困るわ。お前もそうでしょう?」
そりゃそうだ。
しゃーないけど大人しくしておこう。
「はーい」
「結構。それじゃあ、探索の事を聞きましょうか。あと1枚と言っていたけれど、どうなったのかしら?」
帰りに思わぬ事態に遭遇してしまったけれど、しっかりとゲットしてある。
「ふっふっふ!ちゃんと1枚手に入れたよ!」
「凄いじゃない。聖像ならここにあるし、使ってしまいなさい」
じーさんの机の後ろに俺が持っているのと同じ、小さい聖像がある。
ゼルキスの屋敷には礼拝所があったが、さすがに王都屋敷には無いようだ。
「部屋に置いてある分取ってくるね」
そう言い執務室を出て与えられている部屋に向かう。
聖貨を始め色々な物を【隠れ家】に突っ込んであるが、まだじーさんに伝えてないからこういう小芝居が必要になる。
大した手間じゃないが、隠すって事は何か考えがあるのかもしれない。
◇
「ただいまっ!」
聖貨を用意し執務室に戻ってきた。
部屋の中を見ると、壁際の棚に置いてあった聖像が机の上に移動している。
動かしたのはじーさんだろう。
来たばかりの時に【祈り】の事で少し話したが、恩恵品や加護の考察は騎士や軍人上がりのご隠居達にとっては、結構な娯楽らしく楽しみにしていたようだ。
「1月そこらで10枚か…。もしやとは思っておったが、大したものだな」
はて?
「あら?おじい様はセラに何か才能を感じていたのですか?」
セリアーナも疑問に思ったようだ。
多少砕けた会話はしたが、突っ込んだ内容では無かった。
となると、歴戦の武人に響く何か隠れた才能でも…!
「聖貨は弱者こそ得やすいという説がある」
…弱者?
「要は魔物との身体能力、魔力それらの差が大きければ大きいほど得やすいというものだ。とはいえ、それを試すのは説が正しかろうと間違っていようと碌な事にはならん。昔の事だが西でまさにお前のような子供の部隊に戦わせるという事を実行した国があってな、全滅し結果ダンジョンを崩壊させ街を潰し、挙句に混乱していたところを帝国に国ごと掻っ攫われた。それもあって、私たちの代でその話は止めてある」
「な…なるほど」
そうかー弱者かー…確かにアイテム無しならゴブリン相手でも死闘を演じる自信あるし…まあ弱いな…。
俺運が良かったなー…。
「まあこの国ではそれは起こらん。さ、早く聖貨を」
少し強引な話の切り方だと思うが、セリアーナの方を見ると彼女も頷いている。
流して先に進めって事だろう。
では、仕切りなおして聖貨を取り出し、聖像の前に立つ。
聖貨を両手に乗せ、聖像に捧げる。
体が光りドラムロールが鳴り響く。
これで6度目。
もう慣れたもので、この状況でも我ながら冷静だ。
前回のガチャの時は、遠距離攻撃を求めていた。
結果は【祈り】。
回復効果ありのパーティー全体バフスキルと考えると強力極まりないし、今回俺が何とか無事だったのもこれのおかげでもある。
魔鋼は別としても、恩恵品の【隠れ家】【浮き玉】【影の剣】どれも役に立っている。
あんまり工夫しても関係が無いのかもしれないし、今回は無心で行ってみよう。
目を閉じ浅く呼吸をする。
部屋にいる3人の視線を感じる。
うむ。
感覚が研ぎ澄まされているのが自分でもわかる。
これは…来ちゃうなっ!
無…
無……
むむむ…
ふんっ!
カっ!っと目を開きリールを止める。
眼前に何か細長い紐の様な物が浮かんでいる。
頭に浮かんだ言葉は【緋蜂の針】
…針?
……針?
なんだこれ?
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・9枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚