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木の上10メートル程……地上から30メートル程だろうか?
それくらいの高さを、ふよふよとあまり速度を出さずに街に向かっていた。
さっさと街に帰りたい気持ちもあったが、先程まで拠点周りの地上の様子を探っていたため、街の近くの森の様子も調べて比較してみたくなったからだ。
奥から浅瀬に近づくにつれて、魔物の数は減り、それに反比例するように小動物の数は増えている。
やっぱ餌になってるのかな……。
「…………ん?」
今まで特に意識していなかった、浅瀬の魔物の食性について考えを巡らせていると、ふと肩を引かれるような気がした。
うちのヘビ君達だ。
「どした……ぬぁっ!?」
何か影がこちらに目がけて飛び込んで来た。
思わず声を上げ、急降下してそれを躱したが……今のは鳥か?
いや、俺を狙っていたし、魔物だな……。
カラスくらいの大きさだったと思うが、相当な速さだった。
あの一撃がどれくらいの威力なのかはわからないが、結構ヤバかった気がする。
拠点周りじゃ姿を見せなかったから、鳥の魔物の存在が頭から抜けていた……ナイスだヘビ達。
「はぁ……心臓が……」
動悸が……余計なことしてないで、さっさと帰るか。
◇
街に戻ると、屋敷に帰る前に騎士団本部に向かった。
騎士団本部には当たり前だが団長用の執務室があるが、1番隊と2番隊の隊長達の執務室もあったりする。
アレクは冒険者ギルドに出入りしている事も多く、あまりこちらは利用していないが、ここ最近はこちらに詰めている。
アレクだけでなく、冒険者ギルドと猟師ギルドから派遣された人員も一緒にだ。
最近、どこぞの誰かの手によって、領内の街の近くで魔王種が討伐された。
そのことは、領主により布告され、また民間人の間でも伝わっている。
幸い魔王災等の被害は出ていなかったが、領内の騎士団による巡回範囲や頻度をしばらくの間上げることになった。
それ自体は一般的な対処法だが、このリアーナ領は、とにかく広い!
街道や人里周辺は1番隊が平時も見回りをしているが、森や山間部といった場所までは手が及ばない。
そこで、本来は魔物の討伐や襲撃への対処が専門の2番隊にもお声がかかり、隊長であるアレクは、自身は出動せずに本部の執務室で指揮を執っている。
それなりに理由があった事だし、別に悪い事をしたわけでは無いのだが、騎士団の仕事を増やしてしまった事に少々責任を感じ、最近は俺も仕事を手伝っているわけだ。
「アレーク、入るよー」
そのアレクの執務室に、ノックはしたが返事を待たずに中に入ると、アレクや、各ギルドから派遣されてきた者達が紙束を片手に、地図の前に立っていた。
領都の東側7–8キロ辺りまでの地図で、先程俺が行って来た拠点周りも描かれている。
その地図に貼り付けられた紙には、必要資材や人員の手配がどうのこうのと書かれている。
……ちょうどいいタイミングだったかな?
「ノックの意味が無いな……何か異常はあったか?」
アレクはこちらを見て、少々呆れた声で報告を促してきた。
皆も話を止めて、それを待っている。
「異常は無いね。魔物とか獣もいる事はいるけれど、拠点には近づこうとはしていなかったし……、ここの川の向こう側とかは肉食の魔獣とかが餌場にしているみたいだけれど、こっち側は大丈夫そうだって」
地図を示しながら報告をすると、部屋に安堵の空気が流れた。
ここに来て、やっぱ危険だよーとなったら、一から計画を作り直さないといけないしな……。
「……他には?」
「その地図には載っていないけど、もっと東の山の方に魔王種っぽいのがいたかな? はっきりとは見えなかったし、こっちに来るかはわからないけどね……?」
「東の山か……そこから魔物が降りてきたって情報は無いな。警戒はしておくが……気にしすぎても仕方が無いな」
と、アレクが言うと、皆も「そうだな」と同意している。
調査をした連中もそうだったが、あの距離は安全圏になるようだ。
どうにも【浮き玉】での移動が当たり前の俺は、他の人と距離感がちょっとズレてしまっている気がする。
まぁ、困る様な事では無いが、一応気に留めておこう。
「オレからはそれくらいかな? 一緒に行った猟師達は、今日は向こうで過ごして明日戻って来るって。何かあったら彼等からまた報告があるかもね」
「そうか……任務ご苦労だったな。後はこちらで片づけておくから、お前は戻ってくれ」
「はいよ。お疲れー」
もうじき訪れる雨季や冬季に備えたり、やる事はまだまだ山積みだろうが、ひとまず今日の俺の仕事はお終いだ。
さっさと帰って、何かあったかい物でも飲もう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




