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「ふむ……」
【隠れ家】のリビングに設置している、高さ2メートル幅1メートル程の棚を眺めているが、やはり何かが物足りない気がする。
この棚は元々設置されていたものでは無くて、最近新しく購入したものだ。
今のところ俺の部屋は、この屋敷に用意されていないから、少々買い方に工夫がいる。
支払いはセリアーナが行い、騎士団の備品と一緒に纏めて地下の倉庫に運び込ませた。
横領ではない。
……俺なんもしてねぇな。
ともあれ、その棚には俺が倒した魔物や、アレクやジグハルトから貰った魔物の素材が、トロフィー代わりに飾られている。
魔物の牙や爪、尾羽等、中々バリエーション豊かだと思う。
最近その棚に新しく加わった、一番下の段に置かれた魔王種の素材(瓶詰)。
カラフルな羽は一番上で、地味な瓶は下の段に置くのがバランス的には良い気がするが、希少性という意味ではむしろ目玉になる。
果たしてどう置くのが一番見栄えが良くなるのか……いっそ羽を下に置くか?
「ふっ……ぐっ……ぬぅ」
『姫、奥様がお戻りになりましたよ』
背伸びをして、一番上の段に手を伸ばしていると、外からテレサの呼びかける声がした。
「……また今度にするか」
そう頷き、ペッタラペッタラと、玄関に向かって歩き始めた。
結局、手にしてまた戻して……と、そんな事を繰り返してばかりで、特に置き換えたりはしていない。
まぁ、誰に見せるってわけでも無いし、またの機会にしよう。
◇
今日、セリアーナはリーゼルと屋内だが、散歩に出かけた。
ここ最近のセリアーナは、人や物にあたったりとかはしないが全体的に集中力に欠けたりと、自身も自覚しているようだったが、少し彼女らしく無い言動が増えていた。
思うに妊娠によるストレスだ。
お腹が目立つようになってきて以来、基本的に自室で過ごしている。
この部屋は何でも揃っているし、生活する分なら問題は無い。
今までも、セリアーナは狙われている自覚があったから、屋敷から出る事はほとんど無かったが、それはあくまで自重しているからであって、別に出ようと思えば出ても問題は無かった。
外出しないという点では一緒だが、出来るけれどあえてしないのと、やっては駄目、と行動を制限されるのでは違うんだろう。
が、それはもう過去の事。
妊娠の事を知る者を極力減らしたかったからという事もあり、屋敷内の行動を制限していたが、今はもう公表している。
流石に屋外は止めた方がいいが、屋敷内は問題無いだろう。
そんな訳で、セリアーナの気分転換も兼ねて屋敷内の散歩でもしてみたらどうかと、今朝がた提案した……リーゼルに。
アンタがエスコートして来いと。
リーゼルはそれを聞き入れ、昼食後にセリアーナを誘いに来た。
そして、この屋敷は広いし階段もあるから、【浮き玉】を貸して送り出した。
ただ、【浮き玉】が無いと俺の機動力が死ぬ。
王宮等で多少慣れてきたとはいえ、あれが無いとどうにも落ち着かず、最初はベッドで布団をかぶっていたが、結局【隠れ家】に潜り込んだ。
まぁ、それでも貸した甲斐はあったようで、セリアーナは随分すっきりした表情になっている。
男性用の北館は流石に行かなかったようだが、屋敷の地上部分だけでなくて、地下施設とそこから通路で繋がっている箇所に顔を出してきたそうだ。
騎士団本部に、冒険者ギルドの地下部分までと、随分移動して来たらしい。
今はいつものポジションで、【ミラの祝福】を受けているが、これは多分眠っている。
「エレナは大丈夫なん?【浮き玉】使うなら貸そうか?」
見た感じエレナの方は特にストレスを溜めこんではいないようだが、彼女もセリアーナに付き合って、ほとんどこの部屋にいる。
「ありがとう。でも大丈夫だよ。私は家に戻ってアレクと話をしたり、奥様ほどこの部屋に詰めっぱなしという訳じゃないからね」
と、いつもと変わらぬ様子で言った。
「ふぬ……」
敷地内にあるとはいえ、外を歩いたり、アレクと二人で話したりと気分転換は出来ているのかもしれない。
あんま聞きすぎるのも良くないかな?
テレサの方に視線を送ると、小さく頷いている。
何かあれば彼女がフォローしてくれるだろう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚