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「もう結構出来てきてるんだなぁー……」
領都の東に広がる一の森に向かう途中、上空から下を見ると、街壁の外にあった騎士団の訓練所のすぐ手前まで工事が進んでいる。
再開発の計画は俺も少し聞いているが、今ある街をそのまま貴族街にして、と大分大きな街を目指すらしい。
もっとも、大規模なだけにすぐに完成するようなことは無く、10年……あるいはもっとと、それくらいの長いスパンをかけて行うそうだ。
東部の要になる街だし、手は抜かないんだろう。
暑い中彼等もご苦労様だ。
心の中で彼等を労いつつ【祈り】を撒きながら、一の森に向かっていった。
◇
「よし……行こうか。ミツメ君」
一の森の浅瀬から少し中に入った辺りで、森の中に降りた。
浅瀬では見習達が引率付きで薬草採集を行っていたが、この辺はちょうど狩場としては空白地帯になっている。
人目も無く、新しく加わったミツメの戦力を確認するにはもってこいだ。
セリアーナに【妖精の瞳】で見てもらったところ、シロジタよりも能力は低かった。
前の主は、屋外での偵察や探索を専門に行っていたそうだしな。
強化という意味では、ダンジョンの方がいいんだが……それはまたの機会にして、今日はここで我慢しよう。
「……お? いたな」
しばし魔物を求めて森の中を漂っていると、棒切れや石を手にした5体のゴブリンが目に入った。
俺は3メートルくらいの高さにいるが、向こうもこちらに気付いた様で、ギャーギャーと喚いている。
通常は2-3体なので、少々数がいる上に不意打ちも封じられてしまったが……問題無い。
「よしっ、行くぞ!」
上からゆっくり近づくと、そのうちの1体が指示を出している。
個体ごとの能力差はほとんど無いが、あれが指揮官みたいだな……あれからやるか。
【緋蜂の針】【影の剣】【蛇の尾】と発動していき、傘を開く。
こちらの変化を見ても、手にした得物を投げてきたりはせずに、ギャーギャーと……。
魔境のゴブリンの中には、ちょっと工夫をしてくるのもいるが……こいつらは違うな。
「ふらっしゅ! ……ふっ!」
お決まりの開幕の一手の目潰しを放つと、すぐさま傘を閉じて、指揮官目がけて蹴りを放った。
「む? いい感触が……っ!」
目潰しの直撃を受けて、目を押さえて体をかがめている為、胴体を蹴り飛ばす事は出来ない。
その為、肩口を狙っていたのだが、首に入ったようだ。
何か太い物を折る感触が足から伝わって来た。
いつもなら【影の剣】で止めを刺すが、一手省けた。
「ほっ!」
尻尾を振り回し、そのまま離脱する。
何体か払いのけた感触があったが、果たして結果は……?
「アカメは流石だね。シロジタはもうちょいで……ミツメはあまり削れてないかな?」
俺が倒した指揮官の他に、もう1体事切れている。
アカメが攻撃した個体だ。
ゴブリン程度なら魔境とかお構いなしになってきたな……。
シロジタが攻撃した個体は、俺の尻尾を受けて起き上がる事が出来ていない。
ミツメが攻撃した個体は……それなりにダメージはあったようだが、まだまだ動けそうだ。
……これはシロジタとセットで狙わせればやれるのかな?
◇
「……うーむ」
尻尾で魔物の死体を引きずりながら、唸り声をあげる。
ゴブリンの群れを二つと、オオカミの群れを一つ倒したわけだが、狩りはそこでストップだ。
この死体の処理は、なんとも効率が悪い気がする。
そりゃ、死体を放置してアンデッドになられても困るし、必要なのはわかるが……。
近くにいる兵士達に死体を運んでもらうのに、あちらこちらに散らばったままで頼むのも申し訳ない。
出来ないならともかく、尻尾のお陰で引きずることは出来るから、放置するのは胸が痛む。
「よしっ。こんなところかな……おーい、早くおいでー」
森の開けた場所に死体を集め終えた。
いつもなら笛を吹いて、兵士を呼ぶところだが、今日は違う。
離れた場所から、見習達と、引率のおっさん共が姿を現した。
ちょっと照れくさそうな顔をしているのは、気まずさからだろうか?
「……見てるくらいなら手伝おうよ」
おかげで途中から【影の剣】を隠しながら戦う羽目になった。
まぁ、思ったより苦戦しなかった辺り、俺の戦闘技術も成長しているのかもしれないな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




