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とにもかくにも確認をするために死体に近寄るべく、高度を下げた。
背は高くないが、草に埋もれてあまりよく見えないな……。
村の方を見て人が出てきていない事を確認してから、光量を下げて代わりに持続時間を伸ばした照明魔法……本来の使い方だが、それで死体を照らし、観察することにした。
「ほっ……。これで……うへぇー……」
それなりに見慣れてはいるが、改めてまじまじと見ると結構グロイ。
サイズも含めて見た目は俺が今まで倒した事のあるオオカミとほとんど同じだ。
魔王種であることに間違いは無いだろうが……サイモドキと違って普通の魔王だな。
一応死因は俺の一撃が頸椎を断ったことだろう。
ただ、傷口を見たところ、骨までは綺麗に斬られているが、斬りつけた反対側の傷は千切られたようにぐちゃぐちゃになっている。
恐らく、崩れ落ちて地面を滑っていた時に、千切れてしまったんだろう。
しかし……上手く斬る事は出来たと思ったが、骨まで断っていたとは思わなかった。
サイモドキは骨で止まっていたからな……手応えで言えば魔人とどっこいどっこいだ。
魔境の、それも混合種って事を考えるとアレはやっぱり強かったんだろう。
「みっけ」
オオカミが滑った事で出来た跡を辿って行くと、そのすぐ側に転がっている頭部を発見した。
今までも外の魔物を倒してきたが、俺の倒し方は基本的に一撃必殺で、損傷させることは無い。
ダンジョンの魔物だと、オーガを始め数発叩き込む事もあるが、アレは死体が消えるからな……。
こういう姿になっているのを見ると、少々申し訳なく思う。
南無南無と手を合わせてから、拾い上げて胴体が転がっている場所に戻った。
◇
「さて……どうしようか……」
地面に横たわるオオカミの死体を見て、思わず声が出る。
体高は1メートルちょっとで、体長は2メートルそこら。
尻尾を入れたらもっとあるが、精々前世でもいたデカい犬程度の大きさだ。
とはいえ、俺よりデカい!
拾って来た頭部と違って、持ち運ぶような事は出来ない。
魔王種の遺骸だ。
捨てていくにはもったいなさ過ぎる。
かと言って、持ち運べる分だけ切り取って、残りは捨てていくってのも、アンデッドにでもなってしまったら大変だしな……。
それなら、朝を待って村に人手を求めるかっていうと、それはそれで面倒そうだし出来れば最後の手段にしたい。
「…………よっと。お……やれるか?」
尻尾を巻きつけて動かしてみると、持ち上げる事は出来ないが、何とか引きずる事は可能なようだ。
首を刎ねただけで、心臓に傷は入っていないし、その為か血も大分抜けている。
血も素材になる事を思えばもったいない気もするが、その分軽くなるかな?
「ふぬ……」
頭の中の案を整理した後、空を見上げると、まだまだお月さまは高い位置。
今から作業をしても、まだまだ余裕はあるし、ちょいと試してみるかな。
◇
「ほっ」
【隠れ家】を発動し、中へ入ると、強化で増えた物置代わりの部屋に向かった。
この部屋には、使いはしなかったが、以前の魔王種討伐の際に用意していた装備品や物資がそのまま置かれている。
決して横領ではなく、いざという時の隠し武器庫としてだ。
さて、その部屋の中をゴソゴソ漁っていると、お目当ての物を発見出来た。
屋外で陣地を張る時に使う分厚いシートで、四隅にロープを通す穴が開いている。
ビニールシートとまではいかないが、テントくらいの撥水性は持っているし、何より頑丈だ。
そして、それを結ぶための、これまた頑丈なロープ。
さらに丁度良いサイズの板。
「ふっふっふ……。後はこれを……」
その穴にロープを通して、玄関まで持って行き、【隠れ家】の中に入る時に出現する場所に敷いた。
お次は外に出て、魔王種の遺骸に手を触れる。
「よっと」
再び【隠れ家】を発動した。
そして、狙い通り遺骸は事前に敷いていたシートの上へ。
試したのは初めてだが、上手くいって良かった。
サイズもばっちりで、四隅のロープを引くと袋の様になり、遺骸を包んでいる。
そのロープを尻尾で巻き取り……。
「せーのっ!」
【浮き玉】で移動しながら引くと、ズルズルとあまり速くは無いが引きずる事が出来た。
引いた後を見るが、床に汚れは付いていない。
「よしよし……。これなら上手くいくな」
ロープから尻尾をいったん外し、リビングのラグや家具を移動の邪魔にならない位置まで動かした。
浴室のドアを開き、各段差に板を置いて坂を作って、準備は完了だ!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚