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上からこっそり戦闘の様子を覗き見していたが、どこの兵かはわからないが、人間側が優勢に戦いを進めていた。
位置的にユークトかソルバレンか……、どちらも騎士団は持っていないから、家の私兵か冒険者かな?
戦闘開始当初は各組がバラけていたが、戦いながら徐々に集まっていき、今では円陣を形成している。
魔物の数が多いし、一ヵ所に集まる事で包囲されてしまっているが、これなら背中から襲われることは無い。
しっかり迎撃できている。
ここが魔王種の縄張りなら、あの魔物達も強化されているんだろうが、見事なもんだ。
そんな風に文字通り上から目線で偉そうなことを考えていると、その見事な陣形が突如乱れた。
同時に「出たぞ!」「抜けさせるな!」だの、指示の声が微かに耳に届く。
「現れた……か?」
ヘビ達や【妖精の瞳】で魔力は察知できるが、地形は見る事が出来ない。
そして、ダンジョンは壁を透かして姿を察知する事が出来るが、外では木や岩は可能なのに、地面は透かす事が出来ないのが不思議だ。
俺が今浮いている場所からじゃ魔王種らしき姿は見えないが、現場の様子を見るにあちらでは姿が見えているんだろう。
斜面か、洞窟にでもいたのかもしれないな。
「んー……ん。おっ?」
見える位置を探して上空をうろうろしていると、一際強く禍々しい雰囲気の魔物が姿を見せた。
強さは以前戦ったクマくらいだろうか?
オオカミらしき姿だが、サイズはむしろ小型で一見強そうには見えない。
ただ、この雰囲気は……三匹目が加わった成果なんだろうか?
強さはサイモドキの方がはるかに上なのに、【妖精の瞳】での見え方も赤と緑に黒が混ざってと、あの時とは違って見える。
さて、その魔王種の出現で、下の状況は一変した。
やはり洞窟があったようで、兵達はそこの入り口を塞ぐように布陣していたみたいだが、魔王種はそれをお構いなしに突破し、陣形を崩してしまった。
一当てで、何人もが蹴散らされている。
そして、夜である事や足場の悪さも相まって、立て直しに手間取っている様子だ。
兵達は互いに声をかけながら再度陣形を組もうとしているが、魔物もその隙を逃さず襲い掛かってくる。
死者こそ出ていないようだが、ちょっとヤバいか……?
俺も参加した方がいいだろうかと迷っていると、さらに戦況に変化が起きた。
「あら?」
優位に立ったことで、これから大暴れかするのかと思った魔王種だが、一目散に離脱していった。
サイモドキと違って肉食だろうに、逃げるのか……この状況でも勝てないと判断したのかもしれないが、何とも見事な逃げっぷり。
集まっていた魔物は、ボスが離脱した事で軽い混乱が起きている様だ。
ただでさえ、連携を取るようなことは無く、ただ集まって襲っていただけだったのが、その集めているボスがいなくなってしまったんだ。
無理もない。
そして、その隙を逃さず、兵士達はしっかり立て直している。
まだまだ魔物は多くいるが、これなら切り抜けられるだろう。
「さて……どうすっかな」
下の戦闘の続きも気になるが、逃げて行った魔王種も気になる。
向かった方角は東側で、今いる山を下りればしばらく平地が続き、さらにすぐ側には村があったはずだ。
昼間ならともかく、深夜では対処が遅れてしまうだろう。
この山は領地の境にあって、今下で戦っている彼等も追う事は出来なくなるかもしれない。
というよりも、聞こえてくる声から考えると、追いかける様子は無い。
魔王種っていう明確な脅威への対処だし、問題無さそうな気もするが、自分達の領地から追い出す事には成功しているし、一先ずは目の前の魔物の対処に専念するようだ。
領地の端っこだし、そこら辺の判断を下せる者がいないのかもしれないな。
なるほど……魔王災ってこんな感じでも起こるのか。
「む?あっちが気になるかい?」
どうしたもんかと思案していると、ヘビ君達は三匹揃って魔王種が離脱していった方角を向いている。
「ふむ……とりあえず追うだけやってみてもいいかもしれんね」
追跡して、そのまま隠れる様なら報告したらいいし、人里を襲ったりする様なら、まぁ、その時考えよう。
「よし……行くか!」
ここに留まって、見失うのも不味い。
とりあえず追うだけ追ってみよう!
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セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
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